質問して欲しいこと(追加)
先日の参議院での質疑を見て、質問して欲しいことが増えました。
文化庁の素川氏に聞いてもらいたいこと
小林紀子参議院議員の質問に対し、「表示ということを法律上の規定に要件として書くということについては、その表示、具体的にはシールとか印刷でございますけれども、それは、権利者以外の者が途中で張ったり若しくは張ったものがどこかの段階で誰かに消されてしまったりということになった場合に、そこの還流防止措置の法的安定性というものについて問題が生ずるというふうな結論をしたわけでございます」と答弁しているが、
「表示ということを法律上の規定に要件として書く」か否かで次の場合に具体的にどのような差異が生ずるのか。
1) 権利者以外の者が途中で「日本国内頒布禁止」のシールを貼った場合
2) 権利者が貼った「日本国内頒布禁止」のシールを権利者以外の者が途中で剥がした場合
経済産業大臣に聞いてもらいたいこと
邦楽CDのアジアにおけるライセンス生産品の並行輸入品の流通量は2002年度で邦楽CD全体の0.3%、2007年度の予測についても1%前後であるが、今後他の業界から、「アジアから安い商品が既に0.3%も入ってきているし、3年後には輸入量が全体の1%にもなってしまう。このままでは我々の経済的利益に大きな損害が生じてしまうから何とかして欲しい」と泣きつかれたら、同じように法改正を行って並行輸入を禁止する予定なのか。
そのような予定がないとした場合、音楽CDについてのみ特別扱いする理由は何か。
なお、
1)については、「表示ということを法律上の規定に要件として書く」か否かにかかわらず、税関はとりあえず当該音楽CDを国内頒布目的商業用レコードとして取り扱う(但し、実際に水際で差止められるのは、権利者から、その利益を不当に害することを疎明する資料とともに輸入差止めの申立てがなされていた場合に限定される。)ことになる。
2)についていえば、
自らシールを剥がした者が行った輸入・所持については
表示を法律上の要件とした場合・・・両説あり得る
表示を法律上の要件としない場合・・輸入・所持は違法
シールが剥がれた音楽CDを輸入・所持した者については
表示を法律上の要件とした場合・・・輸入・所持は適法
表示を法律上の要件としない場合・・シールが剥がされたものであるとの警告を受けた後に輸入・所持を継続すれば違法
という差異が生じうるとは思います。
で、どちらが法的安定性という意味で問題があるかというと、「表示ということを法律上の規定に要件として書」かない場合ですね。「表示ということを法律上の規定に要件として書」いておけば輸入業者も販売店も、仕入れ先と契約する段階で表示の有無を確認すれば、後になって、「御社が××から仕入れた音楽CDには日本国内頒布禁止のシールが貼ってあったのに××がこれを剥がしていたものである。したがって、在庫品を直ちに廃棄されたい」なんて警告状が来ても、廃棄しないで済むわけですから。文化庁案ですと、シールが貼っていないことを確認して仕入れを行っても、「シールが剥がされていた」ことを後に知らされると、それ以降頒布目的でその音楽CDを所持していること自体が犯罪とされてしまいますから、輸入業者も販売店も何を信頼して仕入れを行えばよいのか訳がわからなくなりますね。
それに、途中で剥がされるのが嫌なのであれば、剥がされないようにプラスチックケースに「日本国内頒布禁止」のマークをプレスしてしまえばよいわけですし、表示を消去することを違法とする条文を創設することだって簡単ですからね。
まあ、文化庁の著作権課の方々は、そういうふうに輸入業者や販売店が、萎縮して自主的に洋楽CDの米国からの並行輸入品を取り扱わないようになっていくことを期待しているのでしょうけどね。
Posted by 小倉秀夫 at 12:30 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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