« 河野議員へ | Accueil | 衆議院議員はみな、今、試されている。 »

05/22/2004

J'en suis resté baba

 河野太郎衆議院議員のメルマガが更新されたようです。
 「大臣答弁」云々の部分を除けば、文化庁の見解を繰り返しているだけのようです。ということは、河野議員は、今回の著作権法改正問題について、文化庁の役人に尋ねるだけで、他の情報源を持っていないのではないかとの推測も成り立ちます。
 そうだとすれば、著作権法改正問題を離れても由々しき問題です。中央官庁の役人が国会議員にわざと間違った説明をして回れば、国会でのコンセンサスが得られないような内容の法律改正も簡単に行えることになるからです。「役人の説明」に対するチェック機能を持たないのでは、国会議員の方々が主観的にどう思おうとも、「役人天国」を脱却することはできないからです。こういう議員たちは、幾ら抽象論で立派なことを言っていても何の役にも立たないことでしょう。
 
 とはいえ、そのようなことを嘆いていても仕方がないので、河野議員に次のようなメールを出しておきました。
 
前略 河野先生のウェブサイトで「ごまめの歯ぎしり メールマガジン版」が更新されているのを拝見いたしました。河野先生が我々市民の疑問の声を文化庁の官僚にぶつけ、さらにその結果を市民に報告されていることには頭が下がる思いです。さらに官僚から得た回答をチェックするブレーンをお持ちになると、先生が政治家としてより飛躍することに繋がるのではないかと思料いたします。

さて、河野先生がメルマガでお書きになったことのうち、明らかな誤りについて幾つか指摘をさせて頂きます。

「改正115条5項に「『情を知って』当該国外頒布目的で商業目的用レコードを国内において頒布する目的を持って輸入する行為..」という部分がありますが、その『情を知って』というところを客観的に判断するために、当該レコードに表示がしてあることという要件が必要になります。」

との点ですが、これは明らかに誤りです。

改正115条5項では、輸入時及び頒布目的での所持中に、当該音楽CDが専ら日本国外で頒布する目的のものであるという事情を知っていれば足ります。そのような事情を知るに至った過程を一切問いません。したがって、「日本国内頒布禁止」等の表示がなくとも、それ以外の方法で当該音楽CDが専ら日本国外で頒布する目的のものであるという事情を知ってしまえば、この要件を満たすことになります。しかも、当該音楽CDを仕入れた後頒布目的で所持している最中に知らされた場合、知らされた以降なおも頒布目的で所持し続ければ、改正115条5項が適用されることになります。

また、

「表示ということをストレートに法案に書くと、表示が剥がれた時はとか、権利を持っていない者が表示をした時はなどについて法案のなかで手当をしなければならなくなり、法案が非常に複雑になってしまうのを避けたためです。」

との点ですが、これも明確に誤りです。

 まず、そもそも「専ら国外で頒布することを目的」としていない音楽CDについては、権利を持っていない者が表示をしたとしても、法的には、その音楽CDを輸入し、販売目的で所持することは、改正115条5項には抵触しませんし、表示ということをストレートに法案に書いた場合についても同様です。ただ、事実上、著作隣接権者等の真意を知らない輸入業者・販売店としては萎縮的に対処しなければならなくなるということです。
 「専ら国外で頒布することを目的」としている音楽CDについて権利を持っていない者が表示をした場合、法的には、その音楽CDを輸入し、販売目的で所持することは、改正115条5項に抵触することになります。表示ということをストレートに法案に書いた場合についても同様です(尤も、解釈の余地はあります。)。唯一の例外は、表示を付する者を権利者に限定するように法案に書き込んだ場合だけです。
 
 「専ら国外で頒布することを目的」としている音楽CDについて表示が剥がれた場合、それでもその他の資料等から国外頒布目的音楽CDであることがわかる場合には、改正115条5項が適用されることになります。これに対し、行為時に表示が付されていることを要件とした場合には、その他の資料等により国外頒布目的音楽CDであることがわかる場合であっても、改正115条5項は適用されないことになります。しかし、権利者が表示を付したこと(及び行為者がその事情を知っていること)を要件とした場合、積極的に表示を剥がしたり、大量に入荷した音楽CDの一部について輸入の際に表示が剥がれてしまったときなどについては改正115条5項が適用されることになります。
 
 いずれにせよ、法文は、それほど複雑にはなりません。
 
 表示ということをストレートに法案に書くことを文化庁が拒む理由は別のところにあると推察されます。
 
 「日本国内頒布禁止」という表示がなくとも後に知らされればそれ以降は頒布目的で所持することが違法となる(通知を受け取ったら直ちに当該CDを店頭から撤去してこれを廃棄しなければならない)ということにしておけば、輸入業者・販売業者の方で、米国盤CDの輸入・仕入れ等を広範に自粛することになるだろうということを狙ってのことでしょう。これなら、日本国民が、再生保証CDを入手する機会を失うこととなっても、「輸入・販売業者が勝手に自粛しているだけであって、欧米のレコード会社は全然悪くない」と欧米のレコード会社を擁護することができます。
 
 また、
 「改正案が取り上げているのは、小売価格の問題ではありません。著作権者、著作隣接権者のライセンス料の問題です。ですから、小売価格がいくらだったかということは問題ではありません。」
とのことですが、1枚12ドル程度の小売価格が設定されている米国国内盤の生産・販売によって著作権者、著作隣接権者の得られるライセンス料はいずれも、1枚2500円程度の定価が設定されている日本盤の生産・販売によって著作権者・著作隣接権者が得られるライセンス料と同等かそれ以上であるとのデータはあるのでしょうか。
 また、並行輸入を禁止できれば並行輸入品との競争のために邦楽CDよりは引き下げられている洋楽日本盤の価格が邦楽CDと同水準(1枚3000円程度)まで引き上げられる可能性が十分にあります。その場合になお、米国国内盤の生産・販売によって著作権者、著作隣接権者の得られるライセンス料はいずれも日本盤の生産・販売によって著作権者・著作隣接権者が得られるライセンス料と同等かそれ以上である状態を維持できるのでしょうか。
 
 また、「国会での大臣の答弁というのは非常に重いものです」、「実際に輸入が規制されるためには、輸入を規制している法律の要件に該当するかどうかが問題になります。その実務について大臣が国会で明確にすれば、法の運用はそれに従います」とのことですが、これも全くの誤りです。
 
 私はまさに法の運用に携わることを生業としているものですが、大臣答弁と全く異なる運用がなされている法律など枚挙にいとまがありません。例えば、プロバイダ責任制限法上の「特定電気通信」については大臣答弁である「1対1通信」説は、多くの裁判例において採用されていません。具体的な条文の文言解釈として無理があるからです。
 
 そもそも、法文上で特定の国を除外することが問題とされる場合に、運用面で特定の国を除外することが問題とならないというのは、不思議な発想です。法律の文言にかかわらず、大臣が答弁を行えば、恣意的に運用することが許されるのだという発想を政権政党である自由民主党の国会議員が公言しているということ自体、日本は法治国家ではない、近代国家ではないとして、日本の国際的評価を貶めることに繋がります。
 
 自由民主党にとって、音楽業界というのは、我が国の評価を貶めてまで守らなければならない存在なのでしょうか。
                                     草々

Posted by 小倉秀夫 at 12:17 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

TrackBack


Voici les sites qui parlent de: J'en suis resté baba:

» 河野太郎氏3回目 de OTO-NETA
河野太郎氏3回目「また著作権法改正」←(MEMORY LAB:column) なんつか、さいごの質問のようなものが送られてるっつうのが、日本の立法にたずさわって... Lire la suite

Notifié: 23 mai 2004 à 07:32:25

» 年金制度で明らかになったこと de gomashio.jp -- ごましお.jp ごまと塩を混ぜたようなとりとめのないblog
それは、誰が未納とか未加入とかそんなことではなく、自分達で作った法律を理解してる国会議員がいかに少ないかということ。当然、年金問題だけじゃ無く他の事についてもそ... Lire la suite

Notifié: 23 mai 2004 à 20:07:10

» 河野議員の「著作権法改正」の掲載内容に対する誤りの指摘 de facethemusic
昨日自分のブログでも取り上げた(内容はコチラ)、河野太郎議員の「著作権法改正」についての一連の書き込み内容に際し、著作権法改正に反対する小倉弁護士が、自身のブ... Lire la suite

Notifié: 23 mai 2004 à 22:58:41

Commentaires

民主党の鈴木康友議員が「火消し」に
走っていると言う情報があります。

〒100-8981 衆議院第一議員会館325号室
 衆議院議員 鈴木康友先生

http://www.yasutomo-net.com/

Rédigé par: 謎工 | 22 mai 2004 à 18:54:24

Poster un commentaire