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05/26/2004

衆議院議員はみな、今、試されている。

既に参議院で全会一致で可決されている著作権法改正案に関し衆議院で提出されていた質問趣意書への回答が公表されました。

このような回答書で「これで洋楽の並行輸入は大丈夫」だなんていって著作権法改正案に賛成する衆議院議員については、官僚の誤魔化しを見抜く能力がないか、官僚と一緒になって国民を騙そうとしているかどちらかであるから、いずれにせよ、国会議員たるべき資質を有しないと評価可能です。そういう議員の選挙区にいる人は、その議員を落選させるべく次の選挙で投票行動を起こしましょう。そういう議員(候補)しかいない選挙区にいる人は、棄権するのではなく、積極的に白票を投じましょう。

さて、具体的に見ていきましょう。

今回の回答書を貫く思想は、「法律の解釈については、適当なことを言って誤魔化します。しかし、輸入業者も販売店も、回答書で示された解釈を金科玉条として洋楽CDの並行輸入を強行した場合には、検察は「適切に」対処するし、経営者の逮捕、起訴、刑事罰、在庫品の廃棄、国内盤との差額の賠償等により生じた損害は自己責任で負担してもらうから、わかっているだろうな。」というものですね。

まず、

「US Only」との文言は、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではなく、その文言の印刷があることをもって、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され

との点ですが、「US Only」とあれば、専ら米国国内において頒布することを目的としているということを意味しているわけですから、常識的に考えて、「専ら(日本)国外において頒布することを目的」としていることは明らかです。文部科学省では、米国国内であって、かつ、日本国外ではない地域というのが存在するということなのでしょうか。私は、「米国国内」というのは「日本国外」の部分集合だと思っているのですが。

また、

当該内容証明郵便(「当社が並行輸入を禁止している音楽CD一覧」が記載されており、その中に当該作品を含んでいるもの)では、並行輸入を禁止する理由が明らかではなく、当社が並行輸入を禁止している音楽CD一覧」に記載されている音楽CD(以下「一覧CD」という。)が専ら国外において頒布することを目的とするものであることを明確にする記載があり、当該音楽CDが当該一覧CDに含まれていることを識別することが可能な表示が当該音楽CDに記載されていない限り、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され

との点ですが、今回の著作権法改正案では、いつから、「並行輸入を禁止する理由が明らか」とすることが必要になったのでしょうか。著作隣接権者である欧米のレコード会社から日本国内への並行輸入を禁止する意思を明確に表示されている音楽CDであって、かつ、専ら国外において頒布することを目的とするものではない場合としてはどのようなケースを想定しているのでしょうか。少なくとも米国盤を著作隣接権者である欧米のレコード会社自体が発行しているものに関していえば、そういうケースは想定しがたいわけですが。


また、特定の「事情」が特定の複製物に記載されていない限り、当該事情を知っていたことにはならないという解釈はどこから出てきたのでしょうか。「情を知って」との文言は、著作権法113条1項2号や同条2項等で用いられているわけですが、いずれも、「著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物」であるとの事情や、「プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物」であるとの事情は当該複製物には記載されていないのが通常ですが、そのような場合にも適用されると一般に解されています。また、113条2項は敢えて「これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り」との限定を付していますが、それはこれらの複製物を使用している途中で情を知るに至る場合が想定されていることが前提となっています(当該複製物に「これはプログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物です」との表示がなければ「情を知って」いたことにはならないとするならば、当該複製物を使用している途中で「情を知」るに至る即ち当該複製物に「これはプログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物です」との表示がなされることというのは通常想定しがたいですね。)。


また、

当該新聞記事を輸入業者が必ずしも知り得るとは限らないので、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され

との点ですが、すると、当該新聞記事を輸入業者が知っていたと言うことを別途立証してしまえば良いということですね。企業体としての知・不知が問題となるのであれば、そのハードルは低いですね。


また、

米国盤と価格の全く異なる日本盤が税関に提出されたとしても、価格が全く異なることが、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではなく、米国盤と価格の全く異なる日本盤が税関に提出されたことをもって、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され

との点ですが、同一の内容のアルバムについて、欧米のレコード会社からライセンスを受けた日本のレコード会社から日本盤が発行され、かつ、上記レコード会社経由で米国盤が直輸入されているときに、なお、米国国内で市場で流通している音楽CDは日本国内で頒布されることをも目的としているものであると考えることには無理がありますね。価格に大きな差異があるのであればなおさらです。


また、

一般論として申し上げれば、個別の事案について著作権法違反による告訴がなされた場合、検察当局において、適切に対処するものと考える

との点ですが、結局、検察としては、欧米からの洋楽CDの並行輸入には適用しないとの大臣答弁がなされたところで、欧米のレコード会社等から告訴等がなされれば、法律の規定通りに、「適切に対処する」すなわちアジア諸国からの邦楽CDの並行輸入を行ったものと同様の扱いをするということですね。


また、

一般論として申し上げれば、例えば、平成十六年四月二十日の参議院文教科学委員会において文化庁は、欧米の主要なレコード会社五社が、欧米諸国において発行した商業用レコードについて、法案第百十三条五項の規定に基づいて我が国への輸入を差し止める考えがない旨を述べているが、このように国会に提出している法律案について、当該法律案の所管省庁が了知している事実を説明する行為が、直ちに国家賠償法上の責任を負うべき行為と判断されることはないものと考える

とのことですが、「欧米の主要なレコード会社五社が、欧米諸国において発行した商業用レコードについて、法案第百十三条五項の規定に基づいて我が国への輸入を差し止める考えがない旨を述べている」から今回の著作権法改正法案が可決施行されたとしても洋楽CDの並行輸入が止まることはない云々という発言に関しては、文化庁は一切の責任を持たないということですね。法案さえ通ってしまえば、国会等で言ったことなど、後は野となれ山となれ、リスクを背負いたくなかったら、洋楽CDの並行輸入もやめてしまえという文化庁の役人たちの強固な意思の表れですね。


最後に、

法案第百十三条五項は、お尋ねのように特定の類型に属する者が権利行使を控えることを前提に起草したものではない

とのことですが、これは、文化庁が、5メジャーが権利行使することをも想定した上で、改正著作権法113条5項を起草したということを明らかに表明した発言として、注目すべきでしょうね。河村文科大臣も河野太郎議員も、付帯決議でお茶を濁した参議院議員の皆様も、はしごを外されてしまいましたね。衆議院では「5メジャーは権利行使しないといっているから大丈夫だ」なんて話は、もうこれでできなくなったはずです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:27 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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【アンケート実施中】文化庁がパブリックコメントを実施した場合、どうしますか? http://kyoto.cool.ne.jp/tssaiban/warehous... Lire la suite

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Commentaires

小倉様

いつもいろいろな情報をありがとうございます。
さて、今回の答弁書をどう理解するか、ということなのですが、小倉さんのコメントを読んでもよく理解できない部分があります。よろしければ、もう少し説明していただけないでしょうか。

1.「US Only」の文言について
 私の理解では、「US Only」という表記がレコードに有った場合、「アメリカでだけ販売可能」とも読めますが、「アメリカ盤だけこの仕様」とも読みたくなります。例えばジャケット、収録曲等が他国盤と違う場合です。ですから、答弁書の中の「当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではなく」という部分は、「他のことを意味する場合もある」と理解するなら正しいのかな、と思っていたのですが、どうなのでしょうか。

2.US盤の対象市場
「同一の内容のアルバムについて、欧米のレコード会社からライセンスを受けた日本のレコード会社から日本盤が発行され、かつ、上記レコード会社経由で米国盤が直輸入されているときに、なお、米国国内で市場で流通している音楽CDは日本国内で頒布されることをも目的としているものであると考えることには無理がありますね」との部分なのですが、ここが今ひとつすんなり納得出来ません。USでプレスする際の枚数は、輸出分を考慮して決められているのではないか、と思ったのです。もしそうなら、製造者は輸出分を含めて生産していることになり、アメリカ以外(日本でもどこでも輸出可能な外国)で頒布されることを目的としている、と考えたくなるのです。これは間違いでしょうか?

3.これからの衆議院討議について
「衆議院では「5メジャーは権利行使しないといっているから大丈夫だ」なんて話は、もうこれでできなくなったはずです」との結論部なのですが、今ひとつ理解し切れません。
例えば、私が推進側議員だとします。法案は5大メジャーが権利行使することを可能としている状況であることが答弁から分かりました。その上で、「法案では可能な道を残しているのは確かだが、権利者から行使を行うつもりがない旨を数回に渡って確認しているのは事実である」と言いつのることは可能に思えるのです。

もちろん、なんと言おうと口約束であり、法的拘束力がないことは確かですから役には立たないのですが、答弁書によって推進派議員の方たちが「はしごを外された」とまでは言えないような気がするのです。いかがでしょうか?

残り日数も少ないので、もしもお時間があるようでしたら、コメントいただければ幸いです。

Rédigé par: MAL | 26 mai 2004, 17:54:47

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