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05/27/2004

誰もが洋楽CDを買いに渡米できるわけではない

河野太郎衆議院議員が余りにいい加減なことを言い続けるので、以下のようなメールを送りました。

庶民の生活水準を知らないおぼっちゃまには困ったものです。


河野太郎先生へ

 特定の業界団体が待ち望む特定の法案を可決成立させるために、国民に嘘を付く政治家に存在意義はあるのでしょうか。

>Q:改正115条5項では、輸入時及び頒布目的での所持中に、当
>該音楽CDが専ら日本国外で頒布する目的のものであるという事情
>を知っていれば足ります。そのような事情を知るに至った過程を一
>切問いません。したがって、「日本国内頒布禁止」等の表示がなく
>とも、それ以外の方法で当該音楽CDが専ら日本国外で頒布する目
>的のものであるという事情を知ってしまえば、この要件を満たすこ
>とになりませんか。
>A:今、手に取っているCDそのものがこの法の適用を受けるかど
>うか判断できるということが「情を知って」ということですので、
>日本販売禁止という表示が必要です。テレビコマーシャルでこのC
>Dは日本の販売禁止だと流したり、内容証明郵便で業者に通知した
>だけでは、要件を満たしません。

とのことですが、例えば「米国国内向けに出荷されたEMI傘下レーベルの音楽CDは全て、専ら日本国外で頒布されることを目的とするものであるから、日本国内での販売目的で輸入・所持することは禁止されている」との事情を内容証明郵便による通知書その他で知らされていた場合には、手に取った音楽CDが「米国国内向けに出荷されたEMI傘下レーベルの音楽CD」であることを知れば、すなわち、当該音楽CDそのものがこの法の適用を受ける「国外頒布目的商業用レコード」に該当することがわかるわけです。「日本販売禁止」なんて表示は必要ありません(法律の読み方を知らない素人はごまかせても、玄人はごまかせません。)。

しかも、政府はご丁寧に、情を知って輸入する行為だけでなく、情を知って販売目的で所持する行為をも著作権等侵害行為とみなすように法案を作成しています。「所持」というのは継続的行為ですから、「米国国内向けに出荷されたEMI傘下レーベルの音楽CD」を大量に入荷した後に、「米国国内向けに出荷されたEMI傘下レーベルの音楽CDは全て、専ら日本国外で頒布されることを目的とするものであるから、日本国内での販売目的で輸入・所持することは禁止されている」との通知を受ければ、それ以後の所持は、情を知って販売目的で国外頒布目的商業用レコードを所持する行為、すなわち、著作権等侵害行為とみなされる行為となってしまいます。

「日本国内頒布禁止」との表示がなされている音楽CDに限って適用されることを明文化することを自民党が拒絶するのは、「日本国内頒布禁止」との表示がなされていない音楽CDを輸入または販売目的で所持している場合であっても、著作権等侵害とみなされるのだと示すことによって、より広範囲に音楽CDの並行輸入を阻止することにあるからでしょう。本気で「『日本国内頒布禁止』との表示がなされている音楽CDに限って適用される」こととするつもりならば、その旨を条文上に明記することは、立法技術的に容易なのですから(法律の読み方を知らない素人はごまかせても、玄人はごまかせません。)。

そして、

>Q:輸入業者が国内盤の出ていないCDを輸入↓
>しばらくたってから国内盤のリリースが決定↓
>以降は「国内盤リリース」の「情を知っている」ことになるから
>、在庫も販売も禁止??
>A:輸入する時にこの法が適用されていないCDに関しては、そ
>の後の在庫も販売も自由です。

とのことですが、法案では、「輸入する時にこの法が適用されていないCDに関しては、その後の在庫も販売も自由です」とのんきなことを言える文言になっていません。「輸入」行為とは別に、「頒布目的の所持」が独自に著作権等侵害行為とみなされる行為になっています。すなわち、「輸入」行為については改正113条5項の要件を満たさず税関をパスしたとしても、頒布目的で所持している過程で改正113条5項の要件を全て満たすに至れば、「頒布目的の所持」を継続することは、著作権等侵害行為とみなされることになるのです。法律の読み方を知らない素人はごまかせても、玄人はごまかせません。

また、河野先生は、個人が輸入するCDについてはこの法は適用されないということを盛んに強調されますが、個人がCDを輸入することに関し業者が関与した場合にこの法律が適用されかねない十分な危険があることを、国民に対して黙っておられるのはフェアではありません。

ご存じのとおり、我が国では、
1 自己の管理の下に、ユーザーに、著作権等の利用行為を行わせ、
2 かつ、そのことによって利益を図る意思がある場合には、
著作権法の規律の観点から当該業者を著作権等の利用主体とみなす、利用主体拡張法理が判例法理として定着しています(例えば、個人が1人で練習のためにJASRACの管理楽曲を歌唱すること自体は著作権(演奏権)の侵害とはされていませんが、カラオケボックスに1人で入って個室でJASRAC管理楽曲を歌唱した場合、著作権法の規律の観点から、カラオケボックスの経営者が歌唱(演奏)の主体とみなされ、当該カラオケボックス経営者と特段の人的な繋がりのない当該顧客すなわち公衆に直接聞かせる目的でJASRAC管理楽曲を歌唱したとして、著作権(演奏権)侵害と認定された裁判例(ビッグエコー事件地裁判決)は実在します。)。

このような判例法理を有する我が国においては、例えば、米国で流通している洋楽CDを、日本国内に在住する洋楽ファンの注文に応じて当該ファンの下に発送するサービスというのは、自己の管理の下にユーザーに米国盤洋楽CDの輸入行為を行わせ、これによって対価を得ているとして、著作権の規律の観点から、当該サービスの経営者こそが輸入行為の主体であるとみなされる可能性が大きいです。この場合、当該経営者と個々の顧客との間には特段の人的繋がりがないのが通常ですから、公衆に頒布する目的で輸入行為を行ったとして、輸入権侵害とされる可能性が大きいです。すなわち、Amazon.comのようなサービスは、日本向けに米国盤CDを出荷するサービスを停止しなければならなくなる可能性が大きいと言えます。

すると、個人として輸入する行為は大丈夫だといっても、再生非保証ディスク(CCCD)ではない洋楽CDを購入するためには、その都度米国に渡航して、現地のCDショップ等で音楽CDを購入しなければならないということになります。我々洋楽ファンは、「個人がアメリカに行って再生非保証ディスク(CCCD)ではない洋楽CDを購入する行為までは処罰しないから、安心しなさい」といわれて、素直に安堵できると本気で思っているのですか。

Posted by 小倉秀夫 at 02:52 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Voici les sites qui parlent de: 誰もが洋楽CDを買いに渡米できるわけではない:

» 5月27日のレコード輸入規制問題 de OTO-NETA
洋盤CDが消える?著作権法改正案に批判続々(東京新聞)←2ch 昨日の社説に続き、本日も東京新聞がこの問題を取り上げています。 RIAJが、「レコードの還流防... Lire la suite

Notifié: 27 mai 2004, 15:47:03

» 著作権法の一部を改正する法律案 de miamoto.net
この法律では、巷でよく言われる「アジアからの還流CD」がどうのということは明記されていないので、基本的には邦盤の存在する外盤はすべて輸入禁止となる可能性がある。... Lire la suite

Notifié: 4 juin 2004, 01:38:32

Commentaires

> 「『日本国内頒布禁止』との表示がなされている音楽CDに限って適用される」

これを明記してほしかった・・・。
この様子だと、ホントに広範囲な輸入規制がかかりそうな感じがします。

極悪。 >RIAJ

Rédigé par: tomo | 4 juin 2004, 01:43:08

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