建築業界が文化庁にロビー活動を行うと
(以下はフィクションです。)
構造不況に悩む建設業界は、「知財立国」の名の下に我が世の春を謳歌するコンテンツ業界を見て、ある日ふと不況脱出策を思いついた。
「俺たちが建てた家に、俺たちに一銭も支払うことなく使用している連中が山程いるぜ」
「そうだそうだ。俺たちが苦労して立てた住宅が中古で売買されても、俺たちに一銭も入ってこないだなんて、世の中間違っている。」
「世の中から中古住宅なんてなくなってしまえば、親元から独立したり転勤するなりして新たに住居を構える人は皆、我々に住宅を新築してくれと頼まざるを得なくなるんだ。そうなれば、我々建設業界は、構造不況脱出間違いないね」
「でも、そうしたら、皆賃貸で我慢してしまうのではないか」
「それなら、賃貸も禁止してしまおう。」
「そうだな。俺たちが建てた家を俺たちに無断で貸して儲けているやつがいるだなんて許せないよ。そのおかげで、新築住宅が売れなくなってしまっているんだ」
「そうだそうだ。住宅の賃貸が禁止されれば、今までは住宅を借りて済ませていた人も、新築住宅を購入せざるを得なくなるはずだ」
「これで、我々はさらに儲かりますね」
「でも、中古禁止、賃貸禁止なんてどうやったら実現できるのですか」
「なんでも、『建築の著作物』という概念があって、建築物についても『著作権』の保護を受けられるらしいぞ」
「それなら、文化庁にロビー活動をすれば、著作権保護のために、中古販売の禁止や営利目的の貸与などを禁止する法律を作ってくれそうですね。」
はたして、文化庁は、著作権法46条2号と3号の間に新設3号として「三 建築の著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する行為」という条項を挿入するとともに、著作権法26条の2第2項の規定を削除する法改正を実現した。
この結果、親族・友人間以外の住宅等の譲渡や貸与は、当該住宅が「建築の著作物」にあたるときは下手をすると懲役刑まで科される犯罪行為となってしまうため、不動産業者は、新築専門の所以外は廃業を余儀なくされることとなった。その結果、転居するたびごとに新築住宅を購入することができる一部の富裕層以外は、何が何でも転居しなくとも済むように画策するか、それが果たせないときはホームレスとして生きていくよりなくなることになった。
「知財立国」というマジックワードでロビー活動を行うとどんな規制でもたちどころに創設できてしまう社会にしてしまうと、活力ある社会が実現するという思考実験でした。
Posted by 小倉秀夫 at 01:13 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Notifié: 20 juin 2004, 23:13:03
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Commentaires
笑いましたが、音楽では既にそうなってしまった世界に自分がいるんだと思うと、ずいぶんと悲しくなりました。
Rédigé par: cab | 11 juin 2004, 00:06:37
実は、エイプリルフールに似たような話を
書いていたのですが……。
http://blog.melma.com/00089025/20040401000014">http://blog.melma.com/00089025/20040401000014
Rédigé par: 謎工 | 10 juin 2004, 07:27:22
かな~り、うけました。
夜中に1人で笑ってしまって、ちょっと不気味でしたが。
Rédigé par: netwind | 10 juin 2004, 02:34:26