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08/31/2004

Grokster

井上雅夫さんがグロークスター事件の第9サーキット判決の日本語をアップしてくれています。

http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/cr_040819Grokster.html

Posted by 小倉秀夫 at 09:00 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

08/24/2004

NTTコムと匿名

NTTコムのフリーダイヤルを使って営業している金融機関(利息は10日で25%)に受任通知を送るべく、NTTコムにフリーダイヤルの設置場所を尋ねたのですが、頑として教えないのですね。
匿名性の保障は違法行為の幇助に繋がるという見解の主張者は、フリーダイヤルを違法な営業に利用した場合には被害者に対し設置場所を開示することができるという条項を利用約款に入れようとしないNTTコムをも、出資法違反行為の幇助又は主体であると非難しても良さそうなものですが、東大の助手に過ぎなかった金子さんは批判できても、NTTコムのような大企業は批判できない人が多いのでしょうね。
NTTコムの人たちだって、スポーツ新聞を読んだり、電信柱の張り紙を見たりすれば、フリーダイヤルが違法な行為にも用いられていることくらいは知り得たでしょうに。
(あるいは、著作権侵害だけは、プライバシーに勝るということなのでしょうか?)

Posted by 小倉秀夫 at 05:35 PM dans D'autre problème de droite | | Commentaires (5) | TrackBack (2)

08/23/2004

潮時

みなさん、そろそろHakkaAmeP氏の正体探しはやめにしませんか?

ある時点でのハッカ飴氏がかりに大橋検事だったとしても、その後のHakkaAmeP氏が大橋検事である保障はないわけですし(HNで表わされるネット上の人格って、簡単に憑依することが可能ですから。)。

実際のところ、私にせよ、大橋検事にせよ、基本的な情報は公開されているから、憑依しやすいことは間違いないですし、他方、公開されていない情報に関する部分については間違いが多すぎますし。

(例えば、私は、情報ネットワーク法学会の第1回シンポの時に大橋検事にお会いしてお話をしていますし、白髪の高裁判事云々の話は全く身に覚えがありませんし(退廷命令が出る程白熱した議論を裁判官とやり合うのは弁護士にとってはある種誇らしいことですので、身に覚えがあれば敢えて否定する理由もないのですが。)、私は修習生時代ぎりぎりまで任官も意識していたので大人しくしていましたし。)。

それに、近時「HakkaAmeP」のHNでコメントを付けていた人物と、別の固定ハンドル名でコメントを付けていた人物とは同一人物ではないかという気がするのですよ。HakkaAmeP氏のBLOG及びその人物のBLOG及びかれらのHNで各種のBLOGに書き込まれたコメントの内容及び時間を見ていると。

で、間違った情報が流布することにより大橋検事が退官を余儀なくされたりしたら気の毒ではないですか。

Posted by 小倉秀夫 at 10:13 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (1)

08/21/2004

Grokster Wins,and Will Winny Win?

Grokster事件の控訴審判決を読み終えました。それほど英語が得意ではない私でも普通に読める程度の平易な文章で書かれており、その点にまず感心します。それでいて、日本の判決文とは異なり、何故その結論に至ったのか、きちんとわかるように書いてあります。

判例法の国である米国では、ナップスター事件で悪しき判例が形成されてしまっているため、ハイブリッド型のP2Pファイル共有サービスには厳しいですが、その分、ソニーベータマックス事件最高裁判決があるおかげで、ピュア型には比較的優しいですね(実質的な非侵害的用途の「可能性」があればいいわけですから、Winnyだってここは満たしますしね。)。

最も、そのおかげで、権利者側がまともに協力する気があれば権利侵害情報の流通をある程度減少させる可能性(注1)があるハイブリッド型P2Pファイル共有サービスが撤退し、権利侵害情報の流通には全く手が付けられないピュア型が生き残るというのは、何とも皮肉なものですね。

(注1)
 要は、検索用サーバの管理者との間で、送受信を阻止すべき電子ファイルの特定方法を協議し、コンピュータが容易に識別できる一定の方法で特定された電子ファイルだけでも送受信がブロックされるようなシステムを、一定の猶予期間内に開発するように求めればよいだけなんですけどね。そして、それは、プロバイダ責任制限法3条1項の趣旨にも合致するのですけどね。

Posted by 小倉秀夫 at 08:11 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

卑怯者になる自由

一匹狼tedie氏によれば、「HakkaAmeP氏の知人が誹謗中傷の被害者である場合ですね。電子掲示板に、HakkaAmeP氏の知人を実名で誹謗中傷する発言が書き込まれ、それを苦にしてHakkaAmeP氏の知人が自殺してしまったという場合」であっても、「弔いといっても、その意味はいろいろあるのであり、実名を曝されないことを堅持しようという態度によってもなりたちうる。」とのことなのですが、本当にそうでしょうか?

電子掲示板で、匿名の発言者により実名で誹謗中傷されている例というのは結構たくさんあるわけですが、この場合、「ネット上で匿名で発言している人に対してはその実名はもちろん、その所属等を追及したり、明らかにしてはいけない」というルールを広めても、「匿名の発言者により実名で誹謗中傷されている人」は一切救われないし、むしろ、より安心して誹謗中傷できるということで、誹謗中傷が激化し、「匿名の発言者により実名で誹謗中傷されている人」がより追いつめられ、更なる犠牲者が発生してしまうかもしれないわけです。

したがって、「匿名の発言者により実名で誹謗中傷されている人」が自殺に追い込まれてしまうという自体の再発を防ぐためには、むしろ、「他人を誹謗中傷する匿名の発言者についてはその実名が暴かれる」システムこそが必要であるということができます。そして、「他人を誹謗中傷する匿名の発言者についてはその実名が暴かれる」システムを作るために、誰がどこまでの情報をどの程度の期間保有し、それをどういう手続きで誰に開示するのかということを様々な方面から一般市民による情報発信を支えている関係当事者が集まって話し合い、一定の結論が出てきたら、これを受けて議会がこれを明文化することは十分行われるべきです。

Winny事件の問題点のひとつは、匿名性に関するルールが(プロバイダ責任制限法4条の「あるものを開示すればよい」というもの以外には)定まっていないのに、匿名性を保障したことが悪いことであるかのように言われているところです。FileRogue事件に至っては、利用者に戸籍上の氏名及び住民票上の住所を登録させなかったことが責められています。

事前に、議会が制定した法律によって、「不特定人に情報発信することを可能とするサービスを提供する事業者は、ユーザーのIPアドレスを開示するだけでは足りず、各事業者ごとに、各ユーザーの戸籍上の氏名及び住民票上の住所を確認すべき」というルールが制定されたのであれば、施行期間までに、このルールを遵守するシステムが構築可能かを検討した上で、新たなシステムのもとサービスを継続するか、新たなルールは遵守できそうもないのでサービスの継続を諦めるかを検討しようがあります(その場合、全国各地に代理店等をおいて、免許証の提示を受け、戸籍上の氏名及び住民票上の住所を確認できたもののみを入会させるシステムを構築できる大企業しか、その種のサービスは営めなくなるとは思いますが。)。しかし、裁判所が裁判のたびごとにアドホックに新たなルールを作り出され、そのたびごとにイノベーターが刑罰を科されたり高い賠償義務を負わされたりという不利益を課せられるのではたまったものではないということが問題なのです。

ところで、匿名で他人を誹謗中傷する発言を行っていたところ実名を晒されてしまい、その結果追いつめられて自殺してしまった知人を弔うために、ネット上で匿名で発言をしている発言者について「実名を曝されないことを堅持しよう」としている人がいたとした場合に、一匹狼tedie氏はそれに賛意を示すのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 01:39 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/20/2004

弔い

HakkaAmeP氏のBLOGでの以下の発言は重要なので、少しコメントしてみましょう。

私はパソ通時代から,この手の問題に慣れていますが,実名掲載の誹謗中傷を掲示板に晒されて結婚式10日前に自殺した知人の弔いでやってます。その意に反する実名掲載は,場合によっては人の命すら奪う危険があるということです。m(_ _)m 合掌 

パソコン通信での掲示板にせよインターネット上での電子掲示板にせよ、「実名掲載の誹謗中傷を掲示板に晒されて結婚式10日前に自殺した」という事件があれば、当時、ネット上ではもちろん、紙媒体でも、当時かなりの報道があったと思うのですが、私は気が付きませんでした。まだ情報収集能力が不足しているようです。

それはともかくとして、この記述は曖昧なので大きく分けて2通りに読めます。

一つは、HakkaAmeP氏の知人が誹謗中傷の被害者である場合ですね。電子掲示板に、HakkaAmeP氏の知人を実名で誹謗中傷する発言が書き込まれ、それを苦にしてHakkaAmeP氏の知人が自殺してしまったという場合です。

この場合、その知人を弔うのであれば、むしろ「他人を批判(誹謗中傷)する際に自らは匿名を維持できるシステムないし文化」をこそ変えていく方向に行くべきでしょう。弔い合戦の相手は、むしろ、ハンドル名を使って自分は安全地帯に身を置いたまま他人を攻撃している人たちであるべきですね。ただこの場合、「(1) 自然かつ合理的な理由無くして実名表記を求めたり,(2) 2chで個人活動の実名を晒したり,(3) 公私混同されてオマエは当然だとするカキコをしたり」ということを「理不尽」とするHakkaAmeP氏の主張とは繋がりません。

もう一つは、HakkaAmeP氏の知人がどこかで他人を誹謗中傷していたところ、それがHakkaAmeP氏の知人の実名入りでどこかの掲示板に転載されてしまったという場合です。これを弔う意味であれば、「(1) 自然かつ合理的な理由無くして実名表記を求めたり,(2) 2chで個人活動の実名を晒したり,(3) 公私混同されてオマエは当然だとするカキコをしたり」ということを「理不尽」とするのは合理的といえます。

ただ、それは一方で「他人を誹謗中傷する個人の匿名性を保障せよ」という主張とも聞こえるので、正直それはどうかなあと思うのです。私は、他人の権利侵害にも利用することができるインフラを守れとは言っていますが、そういうインフラを使って他人の権利侵害を行うやつを守れとは全然思わないですし。

Posted by 小倉秀夫 at 09:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (2)

08/19/2004

ちょいと修正

 以前私が提案した著作権法改正案のうち、112条2項について、落合弁護士から「ただ、「特定の」、「ことさら」というところに、どうしても評価の要素が入りますから、拡大解釈による処罰強化の恐れは払拭できないような気がします。」とのご指摘を受けました。裁判所は、プロバイダ責任制限法3条の免責規定すら一種の詭弁で突破してしまうくらいですから、この程度の「縛り」では簡単に突破される危険があるとは確かに言えるわけで、もう少し条項案を精査する必要を感じました。
 ただ、落合案ですと、刑事責任しか免責できないわけですが、「コンテンツホルダーの利益を過剰に保護するためにイノベーションを阻害しない」というレッシグ教授のような問題意識で考えると、民事責任も免責してあげないといけないので、そういうことを考えて次のような修正案を作ってみました。
(文言は、著作権法のみなし侵害の規定及びプロバイダ責任制限法3条から拝借してみました。) 



(中立的行為の保護)

第百十二条 著作権、著作者人格権又は著作隣接権(以下この条において「著作権等」という。)を侵害する行為以外の行為に用いられ又は用いられる可能性がある物(プログラムを含む。)又は役務を開発し、生産し、譲渡し、貸与し、又は提供する行為は、当該物又は役務が著作権等を侵害する行為に用いられ又は用いられる可能性があることを知りたる場合と雖も、著作権等を侵害し若しくは著作権等の侵害を教唆又は幇助しないものとみなす。

2 前項の規定は、当該物又は役務を用いて著作権等の侵害を行う意図を有する者に対し、情を知つて、当該物又は役務を譲渡し、貸与し、又は提供した場合であつて、著作権等を侵害する行為への利用のみを防止する措置を講ずることが技術的に可能なときには適用しない。

Posted by 小倉秀夫 at 11:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

核心の議論

それにしても、Winnyの話題となると、一気にアクセス数が上がりますね。昨日だけでも、通常の3倍のアクセスがありました。レコード輸入権問題の最盛期よりアクセス数が多いというのはいやはやなんともといった感じです。

アクセス数は多いのですが、結局のところ、私に対する個人攻撃は多いのだけれども、核心の部分については納得のいく反論がいまだなされないのが現状です。

すなわち、一般市民が検閲されることなく不特定人に対し情報を発信できるシステムの提供者は、そのシステムに

どのような特性を付与することにより幇助犯となるのか

ということや、一般市民が検閲されることなく不特定人に他人の権利を侵害する情報を発信することができるシステムの提供者は、そのシステムに

どのような特性を付与することにより幇助犯としての責任を免れるのか

ということについて、特にWinnyの開発者は有罪であるとする論者からは、説得力のある見解が出てきません。

いわゆるベータマックス訴訟米国連邦最高裁判決は、──直接的には複製機器の販売に関する判例ですが──寄与損害を構成しないとするためには、

Indeed, it need merely be capable of substantial noninfringing uses.

と判示しているわけで、Winnyだって、そのような可能性は持っているのではないかと思うのですけどね。匿名性を維持したまま不特定人に情報を発信したいという要請は、──とても上品とは言えないが違法とまでは言えない単なる人格攻撃のレベルですら──実際あるわけじゃないですか。

私は、一般市民が不特定人に対し情報発信を行う際に一定のトレーサビリティを確保することは、権力機構によりこそこそと、あるいは恣意的にトレースがなされないことが制度的に保障されるのであれば、必ずしも反対しませんが、でもそれは、立法過程を通じて国民的合意を形成した上での話です。プロバイダ責任制限法が制定されるときに、特定電気通信役務提供者にトレーサビリティを確保する技術的手段を講ずる義務を課さなかった以上、トレーサビリティを放棄した通信システムを構築したが故に厳しい責任を負わされるというのは、おかしいわけです。


Posted by 小倉秀夫 at 01:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

08/18/2004

本当に検事さんかなあ

http://d.hatena.ne.jp/sarasa/20040814のコメント欄でのHakkaAmeP氏のコメントを見る限り、「 警察や検察の裁量次第で、普通に社会生活を営んでいる人々、普通に経済活動を行っている企業の責任者が逮捕され、起訴される社会というのは、警察や検察関係者以外には、住みやすい社会ではないですね(そういう社会では、企業は、警察OBを総務部長などとして高給で迎え入れたり、検察OBを高い顧問料を支払って顧問弁護士として迎え入れたりすることが、リスク回避のための合理的な行動としてとられやすくなりますから、警察や検察関係者にとっては住みやすい社会ということになるかもしれません。)。」という私の発言を、彼は、「警察検察を皮肉る嫌味」と受け取ったのかもしれないですね。

私は、HakkaAmeP氏が本当に検察官なのかどうかも知りませんので(ネット上では、いろいろな意味で「なりすまし」が多いですから、現実社会での人格との同一性が、既に現実社会での人格との同一性が確認されている者により確認されていない以上、あまり確かな話にはなりえませんし。)、あの場所で「警察検察を皮肉る嫌み」を述べる必要は私にはなく、もちろんそのようなつもりはなかったのですが。

そういうことではなくて、ある行為を処罰するために処罰範囲が広範囲となり普通の社会生活上の活動や普通の経済活動までが当罰性を帯びてしまうような法解釈には問題があるという実質的な理由を述べただけなのですけどね。実際、権力機構にとっては、法の適用範囲が曖昧であれば曖昧である程、裁量の範囲が大きければ大きい程都合がいいわけですし、民間部門にとっては、法の適用範囲が曖昧であれば曖昧である程、権力機構の裁量の範囲が大きければ大きい程、予測可能性を欠き、処罰されることを事前に回避するためのコストが増大してしまうわけですから。

さらにいうならば、法解釈によって具体的に設定される「基準」を、当事者の属性等によってころころ変えるのは望ましくないことは普通にわかることだと思いますし、そうだとすればAという事案に関してαという法律を解釈してaという基準を打ち立てることの是非が問題となるときに、Aという事案にaという基準を当てはめて導き出した結論の妥当性の度合いと、Bという事案にaという基準を当てはめて導き出した結論の妥当性の度合いとを比較考量するというのは当然のことであって、このようなことは法律の解釈に関する論争では昔から行われてきたことです。

更に付け加えるとすれば、HakkaAmeP氏の私に対する批判の方が、抽象的でわかりにくいと思うんですけどね(議論の内容を具体的に批判しているというより、人格攻撃に近いし。)。

Posted by 小倉秀夫 at 04:56 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (1)

08/17/2004

プライバシー情報放流装置

 実は、「プライバシー情報の放流」という点に関していえば、そもそも発信者のIPアドレスを隠す必然性は余りありません。プライバシー権侵害は刑罰の対象ではないので、それだけだと警察が介入できないからです。したがって、IPアドレスと送信日時がわかっても、発信者を知るためには、プロバイダ責任制限法4条に基づく発信者情報開示請求を行わなければいけません。しかも、プロバイダの中には、そのようなプライバシー情報の発信者を庇い立てして、「開示して欲しければ裁判を起こせ」「和解になど応ずる気はない」などと被害者側の要求を可能な限り突っぱねるところも少なからずあります。ですから、被害者の側がお金を用意して弁護士に依頼する覚悟を決めない限り、発信者は匿名のままでいられます。

 匿名性こそが問題だという論者は、Winnyが云々以前に、ISPの態度の方を問題としないといけないのではないかと思うのです。
 現状では、ISPにアクセスログの保管義務がないので、アクセスログを保管していないISPからアクセスした場合には、発信者のIPアドレスがわかっても、発信者が誰かをトレースすることは確実にはできません(この点については、警察が介入できる著作権侵害や名誉毀損の場合でも一緒です。)。そうだとすると、そもそもアクセスログの保管義務をISPに負わせるところから始めないと、Winnyのような技術を禁圧してみたところで、「匿名の発信者による権利侵害情報の放流」を防止することなどできやしないということが言えます。
 さらに、民事訴訟を提起するのに必要な資料が調った場合には、わざわざ発信者情報開示請求訴訟など起こさなくとも、ISPから発信者情報の開示を受けられる法制度づくりも必要です。

Posted by 小倉秀夫 at 09:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (9) | TrackBack (4)

放流者の猿知恵

高木氏からコメントを頂きましたので、取り急ぎそのことに触れることとします。

内部から見た場合についてまで言及されているのか、わからないが、一応検討してみると、内部から見た場合を心配するというのは、捜査員にパソコンを押収されたときのことであろう。Upフォルダにファイルが入っているなら、それは暗号化の有無に関係なく、そこにファイルが入っているのはあきらかである。 それを防ぐためにUpフォルダを廃止するという設計もあり得る。この場合、直接キャッシュに原本ファイルを投げ込むことになる*2が、このとき、キャッシュファイルを暗号化しておくなら、暗号化して投入することになるし、暗号化しないでおくなら、そのまま投入することになるだけであり、暗号化の有無が設計に影響を及ぼさない。

よって、暗号化の有無は「区別が付かない方が都合がよい」ということに関係しない。

悪意の放流者がまず考えるのは、捜査員にパソコンを押収されたときのことでしょう。現在のWinnyの仕様だと、放流者のパソコンにはUpフォルダに暗号化されていないファイルが蔵置されているのに対し、単に自己のパソコンをキャッシュとして使用することを許可していたに過ぎない者のパソコンには暗号化されたファイルが蔵置されるに過ぎないわけですから、誰が放流者かはっきりわかってしまうわけで、悪意の放流者には都合が悪いシステムです。これに対し、Upフォルダにキャッシュも生成されるようにし、かつ、キャッシュとして生成されるファイルには一切の暗号化をしないこととすれば、捜査員にパソコンを押収されたときに、「それは、私が積極的にUpフォルダに蔵置したものではありません。おそらくキャッシュとして生成されたものだと思います。こまめにキャッシュの内容を確認しておかなかったことは申し訳ございません」という申し開きは一応できそうです(まあ、実際には、捜査機関側に不利な嘘を貫き通すのは並大抵のことではなく、逆に捜査機関側に有利な嘘は撤回が効かなかったりするわけですが。)。厳密にいえば、その線で貫き通したとしても送信可能化権侵害の未必の故意があるとされる可能性はありますが、概括的かつ未必の故意でも著作権侵害罪で起訴されるとなると、電子掲示板やコメント欄付のblogすら開設できなくなるので、痛し痒しです。それに、概括的未必の故意でもよいとなると、キャッシュファイルが暗号化されていて中身が見えなくとも、中継コンピュータの使用者が著作権侵害罪を侵したことになる可能性だって十分あるわけで、この種の分散型システム自体使用できる人を大いに限定しなければならなくなりそうです。

いずれにせよ、自分の関心がない電子ファイルが第三者の著作権を侵害するものか否かなどということは、そのファイルの中身を見ることができる状態にあったとしてもわざわざ調べようとなんて気になれない代物だったりするわけで(たまたま自分が知っている作品の複製物なら中身を見れば(聴けば)わかりますが、自分が知っている作品の複製物ではないとなった場合には、それが誰の何という作品であって云々と言うことを調べるのは結構な手間がかかります。)、そうなったら普通の人はいちいちチェックなどせずに放置するか、自分のところにきたキャッシュファイルは中身を見ずに即刻キャッシュ用のフォルダからは削除するのではないかと推測します。)。そういう意味では、キャッシュファイルが暗号化されるというWinnyの仕様は、開発者の刑事責任を重たくする方向には「本来」働かないのではないかというふうに思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:49 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/16/2004

キャッシュと暗号と幇助

昨日の私のこのblogでの発言に、高木浩光氏が反応をしてくれました。

詳細はリンク先の議論を読んで頂くとして、要点は、
「キャッシュファイルを暗号化して、ファイル名もハッシュ値にしているため、違法ファイルを自分がキャッシュしていないか確認しようにも、(ダブル)『クリックしても開きませんでしたので、普通の状態では見ることも動かすもできない』ということになる」という性質
をWinny等の特殊性を示す技術要素の最有力候補として考えてみてはどうかということです。

同一ネットワーク内にある他のコンピュータに接続された記憶装置内に、送信要求のあった電子ファイルを蔵置させてしまうというシステム自体は、「負荷を分散する」というP2Pの目的に沿うものと言えるでしょうし、その際、当該中継コンピュータに接続された記憶装置内に既に蔵置されている他の電子ファイルとのファイル名の競合を避けるためにファイル名をハッシュ値にするという仕様も理解可能です(キャッシュファイルのハッシュ値を「ファイル名+ハッシュ値」としたって構わないわけですが、こういう仕様にするのは、むしろ積極的にキャッシュファイルの内容を中継コンピュータの使用者に知らせることとしようという意図が開発者にある場合でしょうね。そういう意図を積極的にもたないのであれば、キャッシュファイルのファイル名を「ファイル名+ハッシュ値」とするより単に「ハッシュ値」とする方が自然に思いつくのではないかという気がします。いずれにせよ、「削除を呼びかける」のなら、削除を求める電子ファイルをファイル名で特定するより、ハッシュ値で特定した方が、間違いも少ないのではないかとも思います。

すると、問題は、キャッシュファイルを暗号化して、中継コンピュータの使用者がキャッシュファイルの内容を確認できない仕様になっているということが、Winnyの開発者をして、(他の情報通信システムの開発・提供者とは異なり)その開発したシステムを使用してなされる違法行為の幇助者として刑事責任を負わされてしかるべきとする理由となるのかということになります。

その理由としては、中継コンピュータの使用者は、キャッシュファイルが暗号化されていてその内容を確認できないが故に、安心して自己の使用するコンピュータの記憶装置内にキャッシュファイルを作ることを許可できるということはあるのではないかと思うのです。知らないうちにキャッシュファイルとして生成されるファイルの内容をいちいち確認して、それが何らかの法に反するものかどうかを判断して、法に反するものだと判断した場合には削除するという作業を要求されてまで、中継コンピュータとして使用されたくはないというのは、自然な考えです。「違法な電子ファイしか送信されない」とまでは思わなくとも、「違法な電子ファイルの送信にも利用されうる」程度の認識は利用者側にも普通あるわけですから。)わけで、キャッシュファイルを暗号化する仕様になっていないと、危なくて、「負荷の分散」という公共的な目的のためであるとはいえ、自己のコンピュータを中継コンピュータとして使用させることはできないということになります。すると、違法な電子ファイル(及び、違法とまでは言えないが、道徳的に見て好ましくはない電子ファイル)の送信を補助する気がない善良なユーザー程、Winnyのもとでネットワークを形成することを回避するようになることが予想されるわけで、それは新時代の情報送信システムとして(違法な電子ファイルに限らず)汎用的な電子ファイルの送信に用いられるべきシステムとしてWinnyを位置付けていたとすれば、作者としては面白くはない事態でしょうね。

逆に、Winnyを違法ファイルを「放流」するためのシステムとして位置付けたときは、却って、キャッシュファイルを暗号化しないような仕様にするのではないかという気がします。このような仕様であれば、アップロード用のフォルダに暗号化されていない違法ファイルが蔵置されていた場合に、そのコンピュータの使用者が積極的にその電子ファイルを送信するためにアップロード用のフォルダに蔵置したのか、キャッシュファイルとして知らない間に自動的に生成されてしまったものか区別が付かない方が都合がよいからです。

そう考えると、「キャッシュファイルを暗号化して中継コンピュータの使用者には内容がわからないようにする」というWinnyの仕様は、違法ファイルの送信に利用することに特に向けられたものであるとまでは言えないのではないかいうこともできそうです。むしろ、同一ネットワークに接続している他のコンピュータに「キャッシュファイル」を作ることで負荷を分散するというシステムを、真っ当な内容の電子ファイルの送受信にしか興味がない人々にも使用してもらおうと考えたら、「キャッシュファイルの内容には一切関知できない」しようにするということは、まず最初に考えることなのではないかと思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:20 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (4)

08/14/2004

議論の仕方

 警察や検察の裁量次第で、普通に社会生活を営んでいる人々、普通に経済活動を行っている企業の責任者が逮捕され、起訴される社会というのは、警察や検察関係者以外には、住みやすい社会ではないですね(そういう社会では、企業は、警察OBを総務部長などとして高給で迎え入れたり、検察OBを高い顧問料を支払って顧問弁護士として迎え入れたりすることが、リスク回避のための合理的な行動としてとられやすくなりますから、警察や検察関係者にとっては住みやすい社会ということになるかもしれません。)。
 
 したがって、普通に行われる社会活動ないし経済活動が可罰性を帯びるような法解釈は基本的に間違っているし、そのような解釈しか取り得ないのだとしたら、その法律は改廃されるべきです(そのように解釈され得るというだけでも十分改廃に値します。)。
 
 ですから、「Aという行為は、aという要素がある故に、可罰性がある」という見解(甲)に対し、「同じくaという要素を有しているBという行為は、罰せられるべきでない。従って、見解(甲)は間違っている」という批判(乙)は正しい批判です。
 
 これに対しては、「Bという行為も罰せられるべきである」という再反論(丙)や「Bという行為は、aという要素と同時にbという要素もあるから、罰せられるべきではないのだ」という再反論(丁)、「Aという行為は、aという要素の他に、a’という要素があるから罰せられるべきであるが、Bという行為にはaという要素はあるものの、a’という要素はないから罰せられるべきではない」という再反論(戊)は正しい再反論です。
 
 しかし、「見解(甲)ではBという行為の可罰性は論点としていないのに、反論のためにBという行為の可罰性を持ち出すのは論点ずらしである」という再反論は正しくない再反論です。
 
 この程度の話は、法学部で普通に法学教育を受けていれば普通に身に付くはずのものですが、ネット上では、法学部出身者以外の方も法律論議を行うようになりましたから、そのような方が上記のような道理を身につけていないということはある種やむを得ないことです。ただ、匿名の鎧を身にまとってはいるものの法学教育を相当受けてきたことが見え隠れする人々が、上記のような正しくない再反論を行うのはいかがなものかという気はします。
 
 例えば、普通の市民が検閲されることなく情報を送信することを可能とするサービスの特徴としては、例外はありますが、
 
(1) 当該サービスが違法な情報の送信に利用されることがある程度のこと知りつつもそれを未然に防ぐための措置を講じていないし、違法利用を完全に防止することが技術的に可能となるまでサービスの提供を一旦中止しようなどという意思は全くない。
(2) そもそもサービスの提供者は、当該サービスがどのような内容の情報の送信に利用されているか把握していない。
(3) 当該サービスを利用した情報の送信の何パーセントを違法な情報の送信とするかをコントロールする能力は当該サービスの提供者にはなく、従って当該サービスを利用した情報送信の何パーセントが違法な情報の送信であったとしても、それは、当該サービス提供者の意図した結果ではない。
(4) サービス提供者は、送信者の戸籍上の氏名と住民票上の住所を確認することなく特定の情報の送信を媒介するなどのサービスを提供している。
(5) サービスの提供者は、特定の情報の送信者について把握している情報ですら、法令による根拠なしには、当該送信者の意に反して受信者や被害者を含む第三者にこれを教えたりしない。

などがあります。また、情報には、

(6)一旦公表してしまうと、公表者すらその流れを阻止することはできない

という特徴があります。

 「Winny」の開発者が著作権法違反の幇助の容疑で起訴されている件で、「Winny」の開発者は処罰されるべきとする論者が、処罰されるべきとする根拠に上記特徴の一つをあげた場合、同じ特徴を有する他の情報サービスをも処罰することの当否が議論の対象となることは当然です。でも、そういうことには耐えられない論者も少なからずおられるようですね。

Posted by 小倉秀夫 at 03:13 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (4)

08/12/2004

改正案の趣旨

では、昨日blogに掲載した著作権法改正案の趣旨を簡単に説明しましょう。

 「中立的行為の保護」の部分は、米国のベータマックス事件最高裁判決の趣旨を日本法にも取り込もうというものです。これにより、著作権法が、新たな技術革新の芽を摘んでしまうことを防ぐことができます。日本がIT立国、知財立国であるためには不可欠な規定です(家庭用ビデオ録画機などあのとき全面的に禁止されていた方がよかったなんて今時言う人はいないですよね。)。
 「グローバルスタンダード」という点からは当然のことなのですが、日本の裁判所は、間接侵害や寄与侵害等に関する規定が日本法にはないのに、それよりも広範囲に著作権侵害を認めてしまっています。そのため、新しい情報通信技術を開発し公衆に提供するIT企業としては、そのことによって莫大な損害賠償を課せられたり、刑事罰に処せられたりする危険性を払拭できない状態に現在あります。このようなことを続けていくと、日本だけIT革命の波から取り残されてしまうおそれがあります。したがって、このような規定をあえておく必要があるということになります。

 同一性保持権の部分については、従前から違法か否かが争いとなっていた「閉鎖領域内での改変」を適法とすることを明文で明らかにしようというものです。
 既存の作品に自分の感性にあった改変を加えたりしてみる行為は、それ自体その行為者を幸福にする行為ですし、それは、クリエーターとしての才能を開花させるために非常に有益な行為でもあります。そして、改変された作品が不特定多数人の目の届かぬ所にとどまっている限り、元の作品の著作者に何の実質的な損害をも与えません。そのような行為を法的に規制するのは、表現の自由ないし幸福追求権を侵害するものであるとともに、未来のクリエーターの才能を開花させることを障碍するという意味で知財立国の国是にも反します。
 なお、ベルヌ条約では、「自己の名誉又は声望を害するおそれのあるもの」だけが同一性保持権侵害の対象となりますので、改変された著作物が閉鎖領域内にとどまる場合は同一性保持権を侵害しないものとすることが許されています。
 
 貸与権については、書籍又は雑誌に関する部分以外は、グローバルスタンダードにあわせようというものです。すなわち、WIPO著作権条約で貸与権を付与することが義務づけられている範囲内で貸与権を認めれば良いではないかということです。
 貸しレコード店対策として貸与権が創設されたとき、規制の対象は、「借りて、ダビングして、返す」という利用方法でした。これは、ユーザーの手許に新しいコピーが作成されてしまうという点で、通常の物の貸与とは異なるといえ、そこに、複製権を有することによる利益を実質的に侵害するという要素を見出したわけです。コンピュータソフトやビデオテープなどについても同じような「借りて、ダビングして、返す」という利用方法は十分に考えられました。
 しかし、それ以外の場合は「借りて、ダビングして、返す」という利用方法は通常とられていないので、通常の物の貸与と異なる点を見出すことができず、通常の物の開発者等よりも著作権者を優遇しなければいけない理由というのは見出しにくいです。
 特に、「映画の著作物」の複製物として市場に流通しているゲームカートリッジやDVDソフト等についていえば、「借りて、ダビングして、返す」という利用方法を防ぐための様々な措置が講じられているわけですから、これらを貸し借りすること自体を禁止する権利を著作権者に付与する必要はないということになります。「借りて、ダビングして、返す」という利用方法が通常とられていないDVDのレンタルについて、「借りて、ダビングして、返す」という利用方法がとられることを前提に支払われてきたライセンス料の支払いを継続させるのは、著作権者に過剰な利得を与えるものとすらいえます。そこで、WIPO著作権条約7条2項2号にあわせて、「商業的貸与が当該著作物に関する排他的複製権を著しく侵害するような広範な複製をもたらさない場合」には貸与権侵害にあたらないとすべきだと考えた次第です。
 また、プログラムの著作物については、今日多くの工業製品に組み込まれているわけですが、だからといって、ある工業製品に組み込まれているプログラムの著作権者が、当該工業製品の貸与を禁止できるというのは如何にも不都合です。プログラムの著作物を組み込んでしまえば、ごく短期間しか使用しない製品についても、レンタルを禁止することができ、これを必要とする消費者に対して、ごく短期間で使い捨てすることを余儀なくさせることができるということでは、環境立国の名が廃ります。WIPO著作権条約だって、 コンピュータ・プログラムについては、当該コンピュータ・プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合は貸与禁止権は及ぼさなくともよいとしています。そこで、そのような場合を貸与権の対象から明確に除外しようと考えた次第です。
 書籍・雑誌については、権利者の大半をまとめる管理団体がない状態で、貸与禁止権が著作権者に付与されてしまっているという最悪の状態にあります。書籍・雑誌に掲載されている著作物というのは、漫画と推理小説だけではないので、漫画家と推理小説作家の大半をまとめきったとしても、そのようなものはさしたる意味はありません。
 したがって、書籍・雑誌に掲載された著作物の著作権者については、貸与禁止権を付与されるに値する実態がないわけですから、貸与禁止権を剥奪するとともに、書籍・雑誌に掲載された著作物の著作権者でも、利用者に大きな迷惑をかけることなく運用可能な、「報酬請求権制度」に切り替えるように提案するものです。
 
 最後に、「映画の著作物」の頒布権についてですが、中古ゲームソフト事件最高裁判決が示したとおりの、後段頒布についてのみ消尽しない頒布権が認められるということを明文化したものです。前段頒布については、他の著作物類型と同様に、公衆への譲渡に関しては譲渡権、公衆への貸与については貸与権として構成するように提案するものです。
 
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 02:15 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

08/11/2004

著作権法改正2005

仄聞するところによると、文化庁から各種関係団体に著作権法改正要望について照会が来ているそうなので、緊急に改正する必要があるものについて、とりあえず改正案を作成してみました。
文化庁から照会を受けている団体の皆様、自由にお使い下さい。


(同一性保持権)

第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。

一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの

二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変

三 特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変

四 改変された著作物を公衆に提示又は提供しない改変(原作品の改変を除く。)

 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変

(頒布権)

第二十六条 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。

2 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。

3 前二項の規定は、当該複製物により当該著作物が公に上映されることを目的とせずになされる頒布には適用しない。

(譲渡権)

第二十六条の二 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りではない。

2 前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。

一 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物

二 第六十七条第一項若しくは第六十九条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律(昭和三十一年法律第八十六号)第五条第一項
の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物

三 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物

四 この法律の施行地外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物

(貸与権)

第二十六条の三 著作者は、その著作物(次の各号のいずれかに該当するものに限る。映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。ただし、第二十六条の規定の適用がある場合は、この限りではない。

一 プログラムの著作物(ただし、当該プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合を除く。)

二 映画の著作物

三 レコードに固定された著作物

2 前項第二号の規定は、複製行為を防止または抑止する手段が講じられる等当該複製物の貸与が当該著作物について複製権を著しく侵害するような広範な複製をもたらさない場合には適用しない。

3 書籍又は雑誌の公衆への貸与を営業として行う者(以下「貸本業者」という。)は、書籍又は雑誌の貸与により著作物(ただし、本条第一項の規定の適用がある場合を除く。)を公衆に提供した場合には、当該著作物(著作権の存続期間内のものに限る。)の著作者に相当な額の報酬を支払わなければならない。

4 第三項の報酬を受ける権利は、国内において書籍又は雑誌へその著作物を複製することを許諾することにより反復して対価を得ている者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)でその同意を得て文化庁長官が指定するものがあるときは、当該団体によつてのみ行使することができる。

5 文化庁長官は、次に掲げる要件を備える団体でなければ、前項の指定をしてはならない。

一 営利を目的としないこと。

二 その構成員が任意に加入し、又は脱退することができること。

三 その構成員の議決権及び選挙権が平等であること。

四 第三項の報酬を受ける権利を有する者(以下この条において「権利者」という。)のためにその権利を行使する業務をみずから的確に遂行するに足りる能力を有すること。

6 第四項の団体は、権利者から申込みがあつたときは、その者のためにその権利を行使することを拒んではならない。

7 第四項の団体は、前項の申込みがあつたときは、権利者のために自己の名をもつてその権利に関する裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有する。

8 文化庁長官は、第四項の団体に対し、政令で定めるところにより、第三項の報酬に係る業務に関して報告をさせ、若しくは帳簿、書類その他の資料の提出を求め、又はその業務の執行方法の改善のため必要な勧告をすることができる。

9 第四項の団体が同項の規定により権利者のために請求することができる報酬の額は、毎年、当該団体と貸本業者又はその団体との間において協議して定めるものとする。

10 前項の協議が成立しないときは、その当事者は、政令で定めるところにより、同項の報酬の額について文化庁長官の裁定を求めることができる。

11 第七十条第三項、第六項及び第七項並びに第七十一条から第七十四条までの規定は、前項の裁定及び報酬について準用する。

12 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、第十項の協議による定め及びこれに基づいてする行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合及び関連事業者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

13 第四項から前項までに定めるもののほか、第一項の報酬の支払及び第五項の団体に関し必要な事項は、政令で定める。


(中立的行為の保護)

第百十二条 著作権、著作者人格権又は著作隣接権(以下この条において「著作権等」という。)を侵害する行為以外の行為に用いられ又は用いられる可能性がある物(プログラムを含む。)又は役務を開発し、生産し、譲渡し、貸与し、又は提供する行為は、当該物又は役務が著作権等を侵害する行為に用いられ又は用いられる可能性があることを知りたる場合と雖も、著作権等を侵害し若しくは著作権等の侵害を教唆又は幇助しないものとみなす。

2 前項の規定は、特定の著作権等侵害行為をことさらに教唆又は幇助する場合には適用しない。


(差止請求権)

第百十二条の二 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

2 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。


Posted by 小倉秀夫 at 04:59 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (6)

Inducing Innovation Act

Induce Act 法案に対抗して、こういう法案を提示してくるあたりは、アメリカ社会にはまだまともな勢力が生き残っている証拠といえるのでしょうか?

http://www.lessig.org/blog/archives/Innovation%20Act.PDF

このInducing Innovation Act の日本版を作ってみるのも面白いかもしれません。

Posted by 小倉秀夫 at 08:41 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/10/2004

WinnyとInduce Act

壇先生のblogでは、Winnyの位置づけについての議論が行われているようです。

さて、著作権侵害にも用いられ得る機器やソフトウェアを提供することを法的に禁止することの是非については、アメリカでは、「Induce Act」法案への賛否という形で議論が行われています。ここで行われている議論というのは、Winny等のP2Pソフトの存在を許すべきか否かという「価値判断」に関する議論を行う上で大いに参考になることでしょう。

英語が苦手ではない方々は、夏休みを利用して、是非ともぐぐって見て下さい。

PS
私の環境だと、壇先生のblogに、Netscape以外のブラウザでアクセスしようとするとアクセス制限に引っかかってしまうのですが、これは私の環境が特殊だからなのでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 06:38 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (1)

08/07/2004

住基ネットカードを差し込まないと投函できない郵便ポスト

FileRogueにせよWinnyにせよ、違法情報を排除しないという点と発信者の匿名性を保障しているという点が問題とされます。

ただ、これって、P2Pファイル共有サービスの特徴ではないですよね。

日本郵政公社は、ポストに投函された郵便物を、差出人欄の記載がなくても届けてくれますし、著作権等を侵害する内容が含まれているか否かを問いません。

東西NTTは、公衆電話を設置して、利用者の住所氏名を確認することなく、また、著作権等を侵害する内容が含まれているか否かを問わず、大衆による情報通信をサポートします。

では、日本郵政公社や東西NTTは、著作権等の侵害する行為を助長する目的で、利用者の匿名性を保障しつつ、違法コンテンツを排除しない通信サービスを提供しているのでしょうか。

通信事業者が、発信者の個人識別情報をどの程度収集・保管し、どのような場合に誰にこれを開示すべきかというのは、国民のコンセンサスを得た上で、立法で解決すべき問題です。そして、立法により個人識別情報の収集・保管義務が定められていない事業者が、発信者の個人識別情報を収集・保管してないということは当然なのですから、そのことをもって事業者の「邪悪な意思」を推認するのは邪推としか言えないと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 12:29 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

08/06/2004

P2Pファイル共有の効用

FilerogueでもWinMXでもWinnyでもKaZaAでもGnutellaでもよいのですが、

「著作権法秩序と対立しない」用法として、皆様はどのような利用方法を想定されているのでしょうか。

私は単純に、旅行先においてデジタルカメラで撮った画像をウェブサイトで公開するように、旅行
先においてデジタルビデオで撮った動画を公開するのに使えればいいのになあとか思うくらいなの
ですが。

(ウェブの方でファイル名やらハッシュ値やらを公開しておいて「見てね」といえばいいだけの話だし。)。

Posted by 小倉秀夫 at 06:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (4)

08/05/2004

社団法人日本映像ソフト協会への回答

前回のblog記事に対し、社団法人日本映像ソフト協会の管理部管理課課長 酒井信義氏から質問状が電子メールで寄せられましたので、下記のとおり回答いたしました。


社団法人日本映像ソフト協会
管理部管理課課長 酒井信義様

 私のblogを御覧いただきありがとうございます。電子メールで幾つかご指摘、ご質問をいただきましたので、簡単にではありますが、下記のとおりご回答いたします。

 CSSはコピーコントロールと見るべきではないかとの点ですが、現行法を前提とする限り、意味がない議論です。
 現行著作権法は、保護の対象である「技術的保護手段」(俗に言う「コピーコントロール」)を、「『電磁的方法』により、『著作権等』を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。)をする手段であつて、『著作物等』の利用に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるもの」と定義しています(2条1項20号)。他方、現行不正競争防止法は、保護の対象である「技術的制限手段」(俗に言う「アクセスコントロール」)を、「『電磁的方法』により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、『視聴等機器』が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるもの」と定義しています(2条5項)。すなわち、「視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式」は、不正競争防止法上の保護の対象である「技術的制限手段」となることはあっても、著作権法上の保護の対象である「技術的保護手段」となることはあり得ません。
 ご存じのとおり、CSS(Content Scrambling System)は、視聴等に用いられる機器が特定の反応をする信号を影像等とともに記録媒体に記録または送信するものではなく、視聴等に用いられる機器が特定の変換を必要とするよう影像等を変換して記録媒体に記録するものです。したがって、CSSは、技術的制限手段となることはあっても、技術的保護手段となることはありません。
 したがって、現行法の解釈としては、CSSを回避して行う私的複製について、著作権法30条1項2号を適用してこれを違法とする見解は明らかに誤っているといえます。
 
 リッピングソフト等の問題についていえば、それが技術的保護手段(繰り返しますが、CSSは含みません。)の回避(技術的保護手段に用いられている信号を除去又は改変することをいいます。)を行うことを専らその機能とするものであるならば、これを収録した雑誌等を販売することは刑事罰の対象となります。また、営業上用いられている技術的制限手段により制限されている影像の視聴を、当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有するものであるならば、プログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体を譲渡することは刑事罰の対象となります。どちらも「専ら」要件がついているので、当該ソフトの機能を見ないと何ともいえないということになります(ただし、DVDソフトの製造者は、ユーザーによるDVDソフトの視聴を制限するためにCSSを用いているわけではないのではないかとも思うのですが。)。
 
 最後に、私的録画制度の制度設計についての私の意見をお聞きになりたいとのことですので、簡単に述べます。
 
 近時、ユーザーによる利用を法的にまたは技術的に制約したいという要求がコンテンツホルダーの間に熱病のように広がっています。しかし、ユーザーによる利用を制約すること自体はコンテンツホルダーに必ずしも経済的利益をもたらすものではありません。このことは、CCCDを強引に導入したり、欧米と同条件での音楽配信サービスを排除したが一向に音楽CDの売上げ増大を実現できていない音楽産業の体たらくを見れば明らかです。ユーザーは、自由な利用を妨害されたときに、不自由な利用に甘んずるという選択肢の他に、利用しないという選択が可能である以上、ユーザーの許容範囲を超えた制約をコンテンツホルダーがユーザーに課した場合、ユーザーは、利用しないという選択を往々にしてとるからです。
 
 現在のところ、商用コンテンツの私的録画の大部分は、「テレビで放映された作品を、家庭用ビデオデッキで録画する」という態様で行われています。そして、これについては、私的録音録が補償金制度による補償の対象となっています。他方、「レンタルショップで借り受けたビデオカセットまたはDVDを私的使用目的でダビングする」という態様はあまり多くありません(だから、そもそも補償金をうける基礎を欠きます。)。「有体物としてのDVDが摩耗するまで当該コンテンツを繰り返し視聴したい」ユーザーは商用DVDソフトを購入し、1回または少数回視聴すれば足りるユーザーは、レンタルしたDVDを視聴してすぐに返却したり、米国で既に行われているように、数日程度コンテンツが閲覧できなくなるDVDを低価格で購入して視聴すれば足ります。だから、技術的保護手段の有無以前に、DVDソフトをダビングするメリットがあまりないので、ダビングをしないのです。そして、ユーザーのニーズに合わせた複数の商品体系が用意されていれば、ユーザーの財布の紐は緩みます。実際、商用DVDソフトの売上げは近時年々伸びています。
 
 商用DVDについていえば、現在は、ユーザー側の利益とコンテンツホルダーの利益とが比較的バランスがとれています。いま、このバランスを崩すことを提唱するメリットは、貴協会傘下のコンテンツホルダーにはないのではないかと思います。ユーザーの犯罪者視してユーザーの怒りを買い結果的にユーザーから見捨てられ売上げを減少させる愚は犯さないことが肝要だと思っております。
 
 もちろん、パソコンのHDDの記憶容量の増大に伴って、複数のDVDソフトをHDDにリッピングして視聴するという利用は今後も増えていくことでしょう(iTunes,iPodの隆盛を見れば明らかですが、メディアをいちいち入れ替えるという作業をユーザーは嫌っているのです。)。ビジネス系DVDソフトでは既にそのような利用は一般的であり、コンテンツホルダーも明示的にまたは黙示的に認めています。禁止したって、DVDソフトの売上げが増大するわけではありませんから。エンターテイメント系DVDソフトのコンテンツホルダーとしては、ユーザーの利便性を犠牲にしなければならない程、このような利用を容認することによってDVDソフトの売上げが落ちるのか(そのような利用を禁止するとDVDソフトの売上げが増大するのか)を冷静に分析した上で、ロビー活動を行うかを決めるのが肝要だと思います。
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 08:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

08/02/2004

コンピュータによる私的複製

「社団法人日本映像ソフト協会」なる公益法人の「著作権部会幹事会」なるところが、「DVDコピーソフトに関する法律的検討について」なる意見書を平成16年7月28日付で公表したようです。この「著作権部会幹事会」なるものに弁護士を初めとする法律専門家がいるかどうかは分からないのですが、いたとしたら非常に恥ずかしいものといわざるを得ないでしょう。

例えば、

著作権法30 条は、ベルヌ条約9条2項、TRIPS 協定13 条及びWIPO 著作権条約10 条2項に適合的に解釈されるべきところ、ビデオソフトを著作権者の意思に反してコピーするツールを提供することは、著作権者の利益を不当に害する結果を引き起こすから、複製権の侵害であると解すべきである。

等という記載があります。しかし、この「合条約的限定解釈」論は、スターデジオ事件地裁判決(東京地判平成12年5月16日判タ1057号221頁)ではっきりと否定されているわけです。具体的には、

 まず、ベルヌ条約九条(2)の規定と著作権法三〇条一項との関係をみると、同法三〇条一項は、同条約九条(2)本文が特別の場合に著作者等の複製権を制限することを同盟国の立法に留保していることを受け、右複製権の制限が認められる一態様を規定したものということができるから、同条約九条(2)との関係においては、同法三〇条一項が同条約九条(2)ただし書の条件を満たすものであることが必要である。しかしながら、具体的にどのような態様が右条件を満たすものといえるかについては、同条約がこれを明示するものではないから、結局のところ、各同盟国の立法に委ねられた問題であるといわざるを得ない。そして、右のような同条約九条(2)を具体化するものとして規定されている同法三〇条一項は、それが同条約九条(2)ただし書の条件に沿うものであるとの前提の下で、前記(一)のような要件の下における複製を複製権に対する制限として認めることを規定しているというべきである。したがって、著作権法によって認められる私的使用のための複製であるか否かを論じるに当たっては、同法三〇条一項の規定に当たるか否かを問題とすれば足りるものであって、同条項の背景となるベルヌ条約の規定を持ち出して、その規定に当たるか否かを直接問題とするまでもないというべきである。したがって、原告らの前記主張は、その立論の前提において誤りがあるといわざるを得ない

と判示されているのです。それなのに、スターデジオ事件地裁判決に触れてすらいない。はっきり言って無茶苦茶です。そもそもベルヌ条約もWIPO著作権条約も自動執行条約ではないわけですし、コンテンツホルダーの利益を擁護するためであれば罪刑法定主義や(準)物権法定主義などの近代市民法原理の中核的概念をないがしろにしても構わないということは常識的には考えられないわけです。

また、この意見書には、

私的複製が無制限に認められるかは、著作権審議会第10 小委員会においてすでに決着済みの問題である。すなわち、何らの代償措置のない私的複製はベルヌ条約9条2項但書に反するが、制度の円滑な導入のためにデジタル複製についてのみ代償措置を設けるということである。そして、著作権法施行令1条2項は「主として録画の用に供するもの」を代償措置の対象機器とし、コンピュータを対象から除外している。  したがって、コンピュータによるデジタル方式の私的複製は適法とはいえない。

なる記載があります。しかし、著作権審議会第10小委員会には、そのような問題を決着させる権限はそもそもありません。更にいうならば、平成3年12月付けで公表された「著作権審議会第10小委員会(私的録音・録画関係)報告書」をどう読んだら、「何らの代償措置のない私的複製はベルヌ条約9条2項但書に反するが、制度の円滑な導入のためにデジタル複製についてのみ代償措置を設けるということである」ということが著作権審議会第10 小委員会においてすでに決着済みとなったと結論付けられるのか不思議でなりません。同報告書は、



その後の実態の推移によって、現在では、私的録音・録画は著作物等の有力な利用形態として、広範に、かつ、大量に行われており、さらに、今後のデジタル技術の発達普及によって質的にも市販のCDやビデオと同等の高品質の複製物が作成されうる状況となりつつある。これらの実態を踏まえれば、私的録音・録画は、総体として、その量的な側面からも、質的な側面からも、立法当時予定していたような実態を超えて著作者等の利益を害している状態に至っているということができ、さらに今後のデジタル化の進展によっては、著作物等の「通常の利用」にも影響を与えうるような状況も予想されうるところである

としているのであって、少なくとも平成3年の時点では未だ「著作物等の『通常の利用』にも影響を与えうるような状況」に至っているとは考えられていません。その上で、同報告書は、


私的録音・録画は、従来どおり権利者の許諾を得ることなく、自由(すなわち現行第30条の規定は維持)としつつも、私的録音・録画を自由とする代償、つまり一種の補償措置として報酬請求権制度を導入する

と結論付けています。そして、

私的録音・録画行為は、権利制限の範囲から除外し、複製権、すなわち、許諾権が及びうる状態に戻すこととし(すなわち現行第30条の規定の適用範囲から私的録音・録画を除外)、個別の権利処理が必要な状態とするものの、従来どおり私的録音・録画は自由であるという状態を確保するため、一種の法定許諾制度(権利者の個別の許諾を得なくとも、法律上著作物等の利用ができることとし、一定の対価の支払を義務付ける制度)として報酬請求権制度を位置付けるという考え方

は大勢を占めるに至らなかったとはっきり報告されています。すなわち、代償措置の伴わない私的複製を─それがデジタル技術を用いたものであろうとなかろうと───適法な複製としないという結論を第10小委員会は下していないということがいえます。したがって、コンピュータによるデジタル方式の複製は著作権法30条1項により正当化されることはないという見解は明らかに間違っているといえます。

公益社団法人がこういう間違った見解をさも自明の理のように述べるというのはいかがなものなのでしょうか。


Posted by 小倉秀夫 at 01:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (3)