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08/16/2004

キャッシュと暗号と幇助

昨日の私のこのblogでの発言に、高木浩光氏が反応をしてくれました。

詳細はリンク先の議論を読んで頂くとして、要点は、
「キャッシュファイルを暗号化して、ファイル名もハッシュ値にしているため、違法ファイルを自分がキャッシュしていないか確認しようにも、(ダブル)『クリックしても開きませんでしたので、普通の状態では見ることも動かすもできない』ということになる」という性質
をWinny等の特殊性を示す技術要素の最有力候補として考えてみてはどうかということです。

同一ネットワーク内にある他のコンピュータに接続された記憶装置内に、送信要求のあった電子ファイルを蔵置させてしまうというシステム自体は、「負荷を分散する」というP2Pの目的に沿うものと言えるでしょうし、その際、当該中継コンピュータに接続された記憶装置内に既に蔵置されている他の電子ファイルとのファイル名の競合を避けるためにファイル名をハッシュ値にするという仕様も理解可能です(キャッシュファイルのハッシュ値を「ファイル名+ハッシュ値」としたって構わないわけですが、こういう仕様にするのは、むしろ積極的にキャッシュファイルの内容を中継コンピュータの使用者に知らせることとしようという意図が開発者にある場合でしょうね。そういう意図を積極的にもたないのであれば、キャッシュファイルのファイル名を「ファイル名+ハッシュ値」とするより単に「ハッシュ値」とする方が自然に思いつくのではないかという気がします。いずれにせよ、「削除を呼びかける」のなら、削除を求める電子ファイルをファイル名で特定するより、ハッシュ値で特定した方が、間違いも少ないのではないかとも思います。

すると、問題は、キャッシュファイルを暗号化して、中継コンピュータの使用者がキャッシュファイルの内容を確認できない仕様になっているということが、Winnyの開発者をして、(他の情報通信システムの開発・提供者とは異なり)その開発したシステムを使用してなされる違法行為の幇助者として刑事責任を負わされてしかるべきとする理由となるのかということになります。

その理由としては、中継コンピュータの使用者は、キャッシュファイルが暗号化されていてその内容を確認できないが故に、安心して自己の使用するコンピュータの記憶装置内にキャッシュファイルを作ることを許可できるということはあるのではないかと思うのです。知らないうちにキャッシュファイルとして生成されるファイルの内容をいちいち確認して、それが何らかの法に反するものかどうかを判断して、法に反するものだと判断した場合には削除するという作業を要求されてまで、中継コンピュータとして使用されたくはないというのは、自然な考えです。「違法な電子ファイしか送信されない」とまでは思わなくとも、「違法な電子ファイルの送信にも利用されうる」程度の認識は利用者側にも普通あるわけですから。)わけで、キャッシュファイルを暗号化する仕様になっていないと、危なくて、「負荷の分散」という公共的な目的のためであるとはいえ、自己のコンピュータを中継コンピュータとして使用させることはできないということになります。すると、違法な電子ファイル(及び、違法とまでは言えないが、道徳的に見て好ましくはない電子ファイル)の送信を補助する気がない善良なユーザー程、Winnyのもとでネットワークを形成することを回避するようになることが予想されるわけで、それは新時代の情報送信システムとして(違法な電子ファイルに限らず)汎用的な電子ファイルの送信に用いられるべきシステムとしてWinnyを位置付けていたとすれば、作者としては面白くはない事態でしょうね。

逆に、Winnyを違法ファイルを「放流」するためのシステムとして位置付けたときは、却って、キャッシュファイルを暗号化しないような仕様にするのではないかという気がします。このような仕様であれば、アップロード用のフォルダに暗号化されていない違法ファイルが蔵置されていた場合に、そのコンピュータの使用者が積極的にその電子ファイルを送信するためにアップロード用のフォルダに蔵置したのか、キャッシュファイルとして知らない間に自動的に生成されてしまったものか区別が付かない方が都合がよいからです。

そう考えると、「キャッシュファイルを暗号化して中継コンピュータの使用者には内容がわからないようにする」というWinnyの仕様は、違法ファイルの送信に利用することに特に向けられたものであるとまでは言えないのではないかいうこともできそうです。むしろ、同一ネットワークに接続している他のコンピュータに「キャッシュファイル」を作ることで負荷を分散するというシステムを、真っ当な内容の電子ファイルの送受信にしか興味がない人々にも使用してもらおうと考えたら、「キャッシュファイルの内容には一切関知できない」しようにするということは、まず最初に考えることなのではないかと思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:20 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Voici les sites qui parlent de: キャッシュと暗号と幇助:

» キャッシュと暗号と幇助 (benli 様) de 更紗姫10歳のイチゴ畑日記!(熱い議論週間)
高木先生に反応されてますね。 じっくり吟味しましょう。。。 Lire la suite

Notifié: 16 août 2004 à 03:49:54

» Winny の「特徴」再整理議論 de philosophical
私自身が整理しようというのではなく、そういった議論の紹介です。感想は垂れ流していますが_o_。はてなダイアリー - 高木浩光@茨城県つくば市 の日記チェインメー... Lire la suite

Notifié: 16 août 2004 à 15:32:23

» 高木氏が答えていない点。 de NetWind
小倉弁護士のこのエントリと高木浩光氏のこのエントリにの間で議論が交わされるているようだ。小倉弁護士は高木氏のコメントこのエントリで答えている。興味深い議論になり... Lire la suite

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一昨日の日記「キャッシュと嘘とファイル放流」に対して、トラックバック付きでコメント頂いた点について、まずは簡単なことだけ指摘を。 「BENLI」の「キャッシ... Lire la suite

Notifié: 17 août 2004 à 11:32:00

Commentaires

PCが押収された場合に、当局によってキャッシュ
とアップロードの区別がつけられるように、
その区別をわかりやすくするためにアップロードファイル
の方は暗号化しておくということですか。
そんな深遠かつ警察官のためになる意図で
作者はキャッシュを暗号化する仕様にしたと。

もっと技術的にマトモで容易な区別の方法が
いくらでもあることを踏まえ、
そんなの後付の強引なへ理屈としか思えませんねえ。

Rédigé par: ruriha | 21 août 2004 à 23:35:00

キャッシュって、グロ画像やウイルスのような直接保存されると微妙なモノに対しては、暗号化されてフィルターしてあった方が、ハッシュ値を知る事で中身見ることなく消せるというメリットがあるかも…

Rédigé par: KAT | 17 août 2004 à 19:46:59

性善説と性悪説の話してるんですか?これは。

匿名性が保持されてないと、社会問題の告発は
難しいですよ。

また匿名性があると裏で何でもしちゃう人も出ます。

それと小倉弁護士にどうしても言いたいことが。
小倉弁護士の方が正しいことが多いと見ています、しかし、

「裁判ではぜひ勝ってください」
「でも、ネットの議論では勝たずに味方を増やすことを考えてください」

伏してお願いいたします。

Rédigé par: 無線☆ちゃん | 16 août 2004 à 18:25:21

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