放流者の猿知恵
高木氏からコメントを頂きましたので、取り急ぎそのことに触れることとします。
内部から見た場合についてまで言及されているのか、わからないが、一応検討してみると、内部から見た場合を心配するというのは、捜査員にパソコンを押収されたときのことであろう。Upフォルダにファイルが入っているなら、それは暗号化の有無に関係なく、そこにファイルが入っているのはあきらかである。 それを防ぐためにUpフォルダを廃止するという設計もあり得る。この場合、直接キャッシュに原本ファイルを投げ込むことになる*2が、このとき、キャッシュファイルを暗号化しておくなら、暗号化して投入することになるし、暗号化しないでおくなら、そのまま投入することになるだけであり、暗号化の有無が設計に影響を及ぼさない。よって、暗号化の有無は「区別が付かない方が都合がよい」ということに関係しない。
悪意の放流者がまず考えるのは、捜査員にパソコンを押収されたときのことでしょう。現在のWinnyの仕様だと、放流者のパソコンにはUpフォルダに暗号化されていないファイルが蔵置されているのに対し、単に自己のパソコンをキャッシュとして使用することを許可していたに過ぎない者のパソコンには暗号化されたファイルが蔵置されるに過ぎないわけですから、誰が放流者かはっきりわかってしまうわけで、悪意の放流者には都合が悪いシステムです。これに対し、Upフォルダにキャッシュも生成されるようにし、かつ、キャッシュとして生成されるファイルには一切の暗号化をしないこととすれば、捜査員にパソコンを押収されたときに、「それは、私が積極的にUpフォルダに蔵置したものではありません。おそらくキャッシュとして生成されたものだと思います。こまめにキャッシュの内容を確認しておかなかったことは申し訳ございません」という申し開きは一応できそうです(まあ、実際には、捜査機関側に不利な嘘を貫き通すのは並大抵のことではなく、逆に捜査機関側に有利な嘘は撤回が効かなかったりするわけですが。)。厳密にいえば、その線で貫き通したとしても送信可能化権侵害の未必の故意があるとされる可能性はありますが、概括的かつ未必の故意でも著作権侵害罪で起訴されるとなると、電子掲示板やコメント欄付のblogすら開設できなくなるので、痛し痒しです。それに、概括的未必の故意でもよいとなると、キャッシュファイルが暗号化されていて中身が見えなくとも、中継コンピュータの使用者が著作権侵害罪を侵したことになる可能性だって十分あるわけで、この種の分散型システム自体使用できる人を大いに限定しなければならなくなりそうです。
いずれにせよ、自分の関心がない電子ファイルが第三者の著作権を侵害するものか否かなどということは、そのファイルの中身を見ることができる状態にあったとしてもわざわざ調べようとなんて気になれない代物だったりするわけで(たまたま自分が知っている作品の複製物なら中身を見れば(聴けば)わかりますが、自分が知っている作品の複製物ではないとなった場合には、それが誰の何という作品であって云々と言うことを調べるのは結構な手間がかかります。)、そうなったら普通の人はいちいちチェックなどせずに放置するか、自分のところにきたキャッシュファイルは中身を見ずに即刻キャッシュ用のフォルダからは削除するのではないかと推測します。)。そういう意味では、キャッシュファイルが暗号化されるというWinnyの仕様は、開発者の刑事責任を重たくする方向には「本来」働かないのではないかというふうに思うのです。
Posted by 小倉秀夫 at 08:49 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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