著作権法改正パブコメ2004_05
(106)(107)について
著作物は、創作活動へのインセンティブを失わせない程度の期間著作者に排他的な権利を与えたら、その後はパブリック・ドメインとして、後発の創作者のための創作の「糧」になることが望ましいものであります。では、「創作活動へのインセンティブを失わせない程度の期間」とはどの程度かという問題ですが、著作権と利益状態が比較的近い商品形態模倣商品規制(不正競争防止法第2条第1項第3号)の規制期間が「商品が最初に販売された日から3年間」であることからするならば、公表後3年間でもよいといえます。また、特許権の保護期間が特許申請の日から20年間であることを考えれば、長くとも創作の日から20年間保護されれば創作活動へのインセンティブを失わせることはないといえます(一般に、著作物を創作するより、特許発明を行う方がコスト等もかかります。)。
とはいえ、ベルヌ条約第7条に配慮する必要もありますので、著作権の保護期間については現状を維持すべきであると考えます。
なお、著作権の保護期間が著作者の死後70年に延長された場合、既存の著作物を利用して新たな創作活動を行ったり、絶版になった書籍を復刊させようとしたりする場合、当該著作者の曾孫たちを探し出して、それらすべてから利用許諾を受けなければならないということになりますが、そのためのリーガルコストは非常に高く付きます。また、著作者の死後70年ということは、公表後100年以上が経過している場合が十分あり得るわけですが、既存の著作物の著作権が法人に帰属していた場合、その100年の間に当該法人が倒産し、権利の帰属がわからなくなっている危険も増大します。すると、既存の著作物を利用して新たな創作活動を行ったり、絶版になった書籍を復刊したりという、我が国の文化の発展にとって有益な行為が、著作権法によって阻まれる結果となってしまいます。
他方、著作権の保護期間を延長することによって利益を受けるのは、主に、他人の創作活動の成果から収入を得て生活をしている人々です。彼らの利益をいくら手厚く保護してみても、新たな創作活動の奨励にはつながりません。また、著作者の曾孫の保護をいくら手厚くしても、新たな創作活動の奨励にはつながりません(孫の世代までしか著作権が保護されないならば一生懸命創作活動を行う気になれないが曾孫の世代まで保護されるのならば一生懸命頑張ろう等というクリエイターが実際に存在するということは、考えがたいといえます。)。
このように著作権の保護期間を延長することは、多くのデメリットを生じさせる可能性が高いのに対し、「新たな創作活動へのインセンティブの維持」というプラスの効果を生むものではないという意味で、まさに「百害あって一利なし」ということが可能です。
Posted by 小倉秀夫 at 05:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
L'utilisation des commentaires est désactivée pour cette note.
Commentaires