既得権益・業界エゴ
法科大学院問題に関するコメントに関して、町村先生が批判されているようです。
しかし、新司法試験の合格率に関して言えば、文部科学省がほとんどの法科大学院の設立申請に対し認可を行った時点で「7~8割の合格率」はあり得ないと言うことは誰でもわかったことですし、そのことの当否はいろいろなところで論じられていたわけですから、それにもかかわらず法科大学院入試の段階で「7~8割の合格率」を信じて疑わなかった学生には問題があるし、法曹としての適性があるかすら疑わしいといえるでしょう。
まあ、彼らに同情すべき点があるとすれば、法科大学院問題に限らず、昨今の「司法改革」に関しては、ごく一握りの「推進派」に都合の悪い意見は、十分に採り上げられないか、または既得権益擁護に凝り固まった守旧派の戯れ言として問答無用に切り捨てられる傾向があり、「懐疑派」の問題提起は国民一般に伝わりにくかったという点でしょう。
実際には「推進派」=善、「懐疑派」=悪という単純な構造ではないことはいうまでもありません。むしろ、推進派の方々は、それぞれ出身母体のエゴを「司法改革」のなかに必死に盛り込もうとするので、司法改革は、その究極の目的を離れて、どんどんと歪んだものとなっていったというのが実態です。法科大学院制度というのは、その一つの表れにすぎません。
思えば、「司法改革」において、最初のころは、「法律事務所の広告解禁」が話題となっていました。国民の司法へのアクセスをスムーズにするという観点からは、広告を解禁するより(まあ、解禁したってかまいませんが)、業として弁護士を斡旋することを一定の条件の下で解禁する方がよほど役に立つ(広告なんてあくまで自己申告情報しか掲載されません。)わけですが、広告を解禁することがとにかくよいことであるかのように喧伝されていました。それは、よくよく考えてみれば、広告代理店と新聞社の利益になることなのですね。そこからたどっていくと、「司法改革国民会議」の代表に電通の顧問が座り、国民会議の運営委員や常勤監査役にマスコミのお偉いさんがずらりとそろっていることは、まあうなずけます。法曹養成システムについても、新校舎の建設により土建業者が利益を得たとともに、法科大学院が各種マスメディアに広告を出したことにより広告代理店とマスメディアは大きな利益を得ました。で、広告を見てやってくる依頼者がいるかというと、普通のところはそういうことはないわけで、結局、広告を活用しているのは、非弁提携しているところを含めて、個人破産を大量に処理する事務所にほぼ限られてしまっているというのが実情ですね(広告代理店は広告主がどのような活動を実際に行っているのかをチェックしませんから、非弁提携事務所かまともな事務所かなんて広告を見たってわからないですね。)
Posted by 小倉秀夫 at 09:04 AM dans D'autre problème de droite | Permalink
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Voici les sites qui parlent de: 既得権益・業界エゴ:
» opinion新旧司法試験合格者数に関する声明 de Matimulog
またまた、ある方面からは百叩きに遭いそうな話だが、宮澤先生が中心になって新司法試 Lire la suite
Notifié: 29 oct. 2004, 00:45:03
» opinion新司法試験合格者定員問題アピール de Matimulog
またしても、宮澤先生がメーリングリストに転載していたものの孫(無断)転載である。 Lire la suite
Notifié: 29 oct. 2004, 01:51:03
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