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10/29/2004

資格試験としての司法試験に要求されるレベル

10月27日のエントリーに対して、ふたたび「ぐっちっち」氏からコメントをいただきました。

なぜ、資格試験に合格したとたんに、すぐに、既存の実務家と同様のレベルの職務執行能力まで達しなければならないのでしょうか?大体他の資格では、資格をとってそれから実務を覚えていくものです。いくら、司法修習を廃止したからといって、そこまでの能力を新人に問うのはどうでしょうか?

 現在の司法研修所で行われている2回試験に合格するレベルというのは、「既存の実務家と同様のレベルの職務執行能力」まで達しているかどうかを図るものというよりも、実務家として出発点に立てるだけの職務執行能力に達しているかどうかを図るものです。そして、そこからさらに実務経験を得ていくことによって、さらなる実務能力を磨いていきます。すなわち、2回試験に合格するレベルというのは、まさに、これまで新人にこそ問われてきた能力なのです。
 「ぐっちっち」氏が想定されている「資格試験としての司法試験に要求されるべきレベル」というのがどういうものなのかわからないのですが、
 
 1 現在の裁判実務で行われている事実認定手法に沿った事実認定を行う能力があること
 2 実体法及び手続法についての、基本的な法令や判例等の知識を有しており、標準的な実務運用を行う能力があること
 3 社会に存在する様々な紛争を法的に構成する能力があること
 4 短時間に、一定の書式に則った、そしてそれなりに読みやすく論理的な文章を作成する能力があること
 
くらいしか2回試験では問うていませんし、そういう能力が大きく欠けている人に法曹資格を与えてしまうのは正直どうかと思うのです。「ぐっちっち」氏はそういう能力を未だ身につけない状態でもかまわないから自分に法曹資格を付与せよと言いたいということなのでしょうか。

 司法研修所では、上記2及び3を一から養成するほどの時間的な余裕はないし、まして4のうち短時間に読みやすく論理的な文章を作成する能力というのは一朝一夕に身に付くものではないので、司法試験を通じて、上記2ないし4について一定の水準にある者を選抜した上で、その者に対してのみ上記1ないし4の能力を付与すべく教育を施しているにすぎません。
 
 司法修習制度を前提とした法科大学院は、司法試験合格者数を大幅に増やしたとしても、新司法試験合格者の底辺層において従前の司法試験合格者と同レベルまたはそれ以上の能力を有するという状態を確保することを目標にしていればよいのですが、司法修習制度を前提としない場合は、新司法試験合格者の底辺層において従前の司法修習修了者と同レベルまたはそれ以上の能力を有するという状態を確保することを目標にしなければなりません。法科大学院での教育の結果、従前の司法修習修了者と同レベルまたはそれ以上の能力を有する者が多数養成されないのだとしたら、法科大学院は司法修習制度を前提としたものに留まるをえず、従って新司法試験合格者の数は司法修習システムの収容能力を上限とせざるを得ないことは明らかです。
 
 法科大学院制度が、制度維持のために法曹の質の低下を甘受するように求めるようになったら、まさに本末転倒と言うより他にありません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:51 AM dans D'autre problème de droite |

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