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10/23/2004

どの段階で、どのような基準で引導を渡すのがもっとも人道的なのか

 新司法試験の合格者数を巡る問題は、未だ混迷を極めています。
 おそらく、文部科学省及び法科大学院の教員たちは、新司法試験の合格率が著しく低下すると自分たちの責任問題になりかねないので、新司法試験の合格者数を大幅に増員せよと要求してくることが予想されます。おそらく、馬鹿の一つ覚えで「もっと増員せよ」としかいえない財界人とその腰巾着的な知識人やマスコミ人がこれに同調すると予想します。
 しかし、おそらく、司法修習生が2000から2500人を超えると、司法研修所での修習は、関西圏に司法研修所分室を作ることにより何とか対応できるにせよ、実務修習がパンクします。「増員せよ」と口先で叫ぶだけなら馬鹿でもできますが、急激すぎる変化を押しつけられると、それに対応しなければならない現場がついて行かれなくなることは、何処にでも見られる光景です。
 そこで、司法研修所廃止論が台頭してくることが予想されます。
 その場合、弁護士会は、弁護士補制度を採用し、弁護士のもとで一定期間実務経験を経た者しか弁護士登録させないこととすることが予想されます。とはいえ、現状では、2000人も弁護士補を受け入れる能力は弁護士業界にはありませんから、新司法試験合格者の多くは弁護士補となって弁護士のもとで実務経験を積むことができず、ついに弁護士になることができずに終わることが予想されます。

 従前は、一定の法律知識と、短時間に問題を把握し文章化する能力が乏しい人が、司法試験不合格を何回か繰り返すことによって、自分に適性のないことを悟り去っていきました。まあ多くは、大学在学中(せいぜい1〜2留中)にそのことに気が付いて方向転換していきました。そして、4年次までに方向転換した人は勿論、在6くらいまでに方向転換できれば、公務員になることもできるし、それなりの民間企業に就職することもできました(司法試験受験生はある程度ブランド力の高い大学出身者が多いですので。)
 もちろん、ねばり強い人や見極めの悪い人は何処にでもいるわけですが、しかし、長期間にわたり就職もせずに勉強だけして司法試験に落ち続ける方々というのは、司法試験受験者数からするとほんの一部なのではないかと思います。

 法科大学院制度においては、既習コースを選択した場合でも、学部を卒業してから2年間は法科大学院に通わなければならず、2年後に法科大学院を卒業した後に、新司法試験を受験することになります(その日程はいまだ発表されていません。)。法科大学院制度のもとでは、卒業までの段階でかなり金銭的、時間的に浪費してしまっていますから、1回落ちたからといって方向転換するのは難しいでしょう。新司法試験ではどのような出題がなされるのかはわかりませんが、新司法試験で要求される才能・資質に欠ける人は、「5年以内に3回」という受験回数の枠を上限まで使い切ってから、方向転換を図ることでしょう。しかし、何処に方向転換することができるのか、法科大学院制度推進論者の根拠なく勇ましい発言は聞こえるものの、全く予断を許さない事態です。
 法科大学院制度において、司法研修所を廃止して弁護士補制度を採用した場合、法科大学院卒業時に弁護士補に採用されなければ、実際には法曹資格を得られないことになります。すると、法科大学院制度+司法修習制度よりは、引導を渡される年齢は低くなります。ただし、引導を渡される基準は公正なものでなくなる可能性は高くなるといえます。おそらく、出身法科大学院のブランド力とコネの強弱が大きな要素となることでしょう。
 もちろん、法科大学院制度において司法研修所を廃止し、かつ弁護士補制度を採用しないということもあり得なくはないでしょう。その場合は、法科大学院卒業後に法律事務所に就職できるかどうかが重要であり、法律事務所への就職に失敗した人(日本の弁護士業界全体で新規に勤務弁護士を2000人も雇う力はないのではないかと思います。2000人といえば、弁護士15人で1人の新規勤務弁護士を雇う計算になりますから。)、論理的にはいきなり開業して潜在的な需要を開拓する可能性はあるわけですが、実際にはそのほとんどが方向転換を迫られることでしょう。この場合も、出身法科大学院のブランド力とコネの強弱が大きな要素となることが予想されます。

 こうやって考えてみると、25歳を過ぎてもサラリーマン経験のない若者の受け皿が乏しい我が国では、新司法試験の合格者数をどんなに増員させようとも、法科大学院制度を続ける限り、旧司法試験制度よりも非人道的になることは避けられないのではないかと思います。

PS
 法科大学院の「ブランド力」ですが、これは新司法試験への合格率ではなく、卒業生の1年目の収入の平均額の多寡でランク付けがなされていくのだろうなと予想します。新司法試験に合格できても、まともな就職口が見つからないような法科大学院には、優秀な学生は集まらなくなっていくと思いますから。

Posted by 小倉秀夫 at 01:56 AM dans D'autre problème de droite |

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Voici les sites qui parlent de どの段階で、どのような基準で引導を渡すのがもっとも人道的なのか:

» 「どの段階で、どのような基準で引導を渡すのがもっとも人道的なのか」に関連して de 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」
小倉弁護士のブログ http://benli.cocolog-nifty.com/benli/ で、10月23日に、上記のようなテーマで論じられており、興味深く読みました。 ロースクール卒業生の ... [Lire la suite]

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Commentaires

高等教育が肥大化することの問題点は、
1.政府補助金の無駄
2.個人の教育費と時間の無駄
3.少子高齢化社会で労働力を遊休化してしまう無駄
の三つがあろうかと思われます。
 また、学校教育自体に有効性がないと思われる事例も少なくありません。哲学や数学や物理学のような形而上学的な学問ならいざ知らず、仕事に直結する職業教育をしようというのに、一度も社会で働いたこともない学生が、強力なモチベーションを持って勉強するでしょうか?
 解決策は実務経験者のリカレント枠の強制確保しかないと思います。現実を知った上でロースクールを受験するならいいことです。

 薬剤師需要の3倍以上の定員で、実務実習の内容も決めず、実習および指導者の確保もメドが立たない薬学部6年制は、10年後に惨憺たる結果をもたらすでありましょう。トラックバックをたどって読んでください。

Rédigé par: 井上 晃宏 | le 11/06/2004 à 18:43

25才でロースクールを出て弁護士資格を得ても、法曹界に入る必要などないのでは?企業によっては、社外の高い弁護事務所より、安く法務を担当できる人間を採用したがるはず。もちろん日常的な法務に関しての仕事ですね。
他にも国家公務員になったり、地方公務員になったり、コンサルタントになったり、自衛隊に入ったり、自営業をしたり、ホストになったり、いくらでもなれるもんがあるんで。だいたい昔のジジイたちのキャリアを踏襲して22ぐらいで実社会に出るなんて、これだけ複雑化した社会で、法学部ももう少し学問を深く勉強したほうがいいんじゃないのって感じですが。理系だと院行くの当たり前になってますしねえ。
それと出身ロースクールで待遇の差異が出て何が悪いのかさっぱりわかりません。

Rédigé par: superpatriot | le 11/01/2004 à 06:45

人の文章を罵倒するのであれば、論拠等を明確に示す。これが常識というものでは?あなたの文章こそ「悪文」の最たるものですよ。見識が疑われます。>@様へ

Rédigé par: @loan | le 10/26/2004 à 07:09

思いこみで綴られた悪文で、もう無茶苦茶ですね。

Rédigé par: @ | le 10/24/2004 à 20:06

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