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12/19/2004

コンテンツ・ビジネスの未来のために

 畠山けんじ「踊るコンテンツ・ビジネスの未来」(小学館・平17)を読みました。
 資料的な価値としては悪くないので、コンテンツ・ビジネスに興味がある方々は読んでおいて損はないと思いました。
 
 私は、実は「コンテンツ・ビジネス」という言い方はそれほど好きではありません。機器・インフラ等を開発・提供する側からすると、そのような機器・インフラを利用してエンドユーザーに届けられる音楽・映像等はまさに「コンテンツ」(=包含物)ということになるのでしょうが、音楽・映像等を開発・提供する側がそれを「コンテンツ」と表現することには大層な違和感があります。音楽・映像等を開発・提供する側からみた場合、音楽と映画とアニメとゲームは一括りにできない、それぞれ全く別個の分野だし、同じ音楽でも、クラッシックと歌謡曲とポップスとでは全く別個の分野だとしかいえないのではないかという気がします。
 
 それはともかく、「知財立国」の一環として「コンテンツ・ビジネス振興」というものを捉えた場合、到達すべき目標は、「日本国内で創作された『コンテンツ』を利用してより多くの外貨を稼ぎ出す」ということになります。
 そのためには、大きく分けて、


  1.  日本国内で創作される「コンテンツ」に、品質面かつ/または価格面で比較優位性を持たせる

  2.  日本国内で創作された「コンテンツ」が国外で利用されたときに、その利益を現実に国内に還流させるシステムを構築する


という施策が必要となります。

 しかし、政府の「コンテンツ振興策」って、1.については、内高外低の内外価格差に法的強制力を与えたり、諸外国ではほとんど認められていないような権利を創設したりして、国内消費者からよりたくさんのお金を巻き上げて、それを原資ににて、国外での市場価格を引き下げられるようにすることくらいしかしていないですね。2.については、ほとんど何もしていないようなものです。日本国内での著作権者の権利をいくら強化したって、2.の役には立ちませんから。
 
 現在日本が品質面の比較優位性をもっている漫画・アニメ・ゲーム・ポップミュージック等は、もともと「学校でお勉強する」ようなものではないですから、品質面での比較優位性を維持・拡大するために政府ができる役割というのは実はあまり大きくないですね。基本的には、学ぶ機会および発表する機会の提供、ならびに、創作者の保護ということになるのでしょう。
 
 「創作者の保護」といった場合に、文化庁や戦略本部はすぐに「消費者からの保護」にばかり気をとられるのですが、実際には、「エンターテインメント産業からの保護」の方が重要です。米国ですと、クリエイターたちが強力な組合を作ってエンターテインメント産業に対して強固に権利主張したりするわけですが、日本のクリエイターたちにそのような行動を期待しても仕方ないですから、エンターテインメント産業とクリエイターとの間の契約について、労働基準法等類似の規制法規を制定する必要だってあるかもしれません。
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 12:49 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Commentaires

 クリエイターの保護について。
 アニメ、ゲーム、マンガと言われますが、底辺がいちばん広くて、日本の著作物の競争力を支えているのはマンガです。他の国でも優れたマンガはありますが、日本ほど作家の底辺が広くありません。マンガで育った作家がアニメを作り、ゲームを作るんです。
 ところが、日本政府は、マンガを保護するどころか、主に性表現において、マンガに規制を加えようとしてきました。90年代からその傾向はあったものの、現在も青少年健全育成条令で流通規制が行われています。
 部外者は「表現そのものは規制されない、流通が規制されるぐらいはいいではないか」と思うのでしょうが、マンガは数百円の低価格商品であり、全国の本屋、コンビニにあまねくばらまかれて、数万部を売って、ようやくペイします。
 流通にちょっと規制が加わっただけで、限界収益率が赤字になってしまって、雑誌は廃刊、単行本は絶版になります。成人向けの本屋だけでペイするような本を作ろうとすれば、定価は数千円で、かつ、一部のマニアしか読まないものになります。
 日本のマンガの多様性は、流通と作家と読者の非常に微妙なバランスの上に成り立っていて、規制当局がちょっといじるだけで、多様性が破壊されてしまうということを気づいて欲しいと思います。

Rédigé par: 井上 | 19 déc. 2004, 18:52:24

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