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06/13/2005

フィッシングと著作権

 今日の朝日新聞の夕刊の1面トップに、フィッシングを行っていた会社員が著作権法違反の容疑で逮捕されたというニュースが掲載されていました。

 もとより、フィッシングという行為が許されるべきでない行為であり、従ってそのような行為を行った者に刑事罰が下されるようになることに私自身反対するものではありません。

 ただ、フィッシングを著作権法で規制しようという点には大いに疑問を抱かざるを得ません。

 だって、フィッシングは、著名企業のロゴの創作性のあるデザインを複製ないし翻案して公衆に提示することが問題の本質ではないはずですから。そして、問題の本質をはずしたところで行為者を逮捕・起訴してしまうと、量刑の判断などに悪影響を及ぼします(例えば、著作権法違反被告事件であれば、「フィッシングによって集めた情報を何に活用する計画であったのか」ということは本来量刑の判断要素に含まれないはずです。)。また、悪質なフィッシング犯を処罰するために、本来ならば「著作物性」が認められないはずのロゴデザイン等に裁判所が無理矢理「著作物性」を認めてしまう危険だってあります。その結果、著作物性に関する裁判例が、著作物性の範囲を、本来あるべき姿以上に拡張してしまう虞だってあるのです。

 フィッシングにより入手したID、Password等を利用して不正アクセスを行ったかどうかを確認する前に、フィッシング行為を見つけた時点で、強制捜査を行い、被害を未然に防ぐ必要性を全く否定するものではありません。また、人を欺罔させてID、Password等を入力させる行為が(2項)詐欺罪等で処罰可能化というと、確かに危うい点もあるでしょう。

 そうであるならば、フィッシングを行った者を処罰する立法を行うのが筋というものです。方法としては、


  1. ID,Password等の、財産的利益の得喪に密接に関連する情報を詐欺罪等の保護法益に加える

  2. 不正アクセス防止法において、不正アクセス行為の予備的行為としてフィッシング行為を規定して処罰規定を設ける

  3. 不正競争防止法の中に、フィッシング用の模倣サイトの開設行為を不正競争行為とする規定を設ける


等があり得るように思います。そして、フィッシング行為を刑罰をもって規制するということ自体は与野党間に異論が有るとも思えませんから、条項案が固まればさっと可決することが可能でしょうし、元々推奨されるような行為ではなかったので、施行までさほど間をおく必要もないといえるかと思います。すなわち、フィッシングが日本でも問題とされるようになってから今回の逮捕に至るまでの間に、これを処罰する旨の法改正を行う時間的余裕は十分あったはずです。

Posted by 小倉秀夫 at 10:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Notifié: 15 juin 2005 à 00:10:28

Commentaires

どうもです。お久しぶりです。
フィッシングって、アメリカで流行りだしたのって確か、2年か3年ぐらい前だったと思うんですよ。フィッシングが日本で大きく取り上げるようになったのは、ここ1年くらいでしょうか?

先生の仰るように、いまだ対策が出来ていないのは、ちょっと、おかしいですね。ちなみに、アメリカで流行った時には、わんさか、メールがきましたけど(笑)

Rédigé par: こう | 5 juil. 2005 à 00:40:43

また著作権を拡張するための理由に使われる悪寒が

Rédigé par: なななし | 15 juin 2005 à 14:38:48

今回の逮捕容疑の中に、
「不正アクセス禁止法」
も入ってましたけどね。

フィッシングはよくないってのは分かりますが、フィッシングと単なるパクリサイトとを法文上どう見分けるのか、そんなに簡単じゃないから、そんなにさらさらとは法文を起案できないのではないかと思っています。

ちなみに、正式名称は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」。
「不正アクセス禁止法」という略称が一般的だと思われます。
以後お見知りおきを。

まぁ、匿名論争でお忙しい先生にはどうでもいいお話でしょうが。

Rédigé par: そうかなぁ。 | 15 juin 2005 à 10:42:58

この事件を見て、あれ?っと思ったのは、罪状が「詐欺罪」とかではなく「著作権違反」であった点でした。
現状でフィッシングに関して、明確な罪状等が無い事には驚きました。
このままだと、企業などからの訴えが無い限り、捜査も始まらない可能性が高く、非常に心配です。

Rédigé par: CGF | 14 juin 2005 à 20:42:55

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