「著作権は何を守るのか」 on be
平成17年7月16日朝日新聞朝刊に添付されていた「be on Saturday」のb3に、朝日新聞社の、というかASAHIパソコンの丹治吉順氏が「著作権は何を守るのか」という題で著作権の保護期間の延長問題について論じた文章が掲載されています。著作権の保護期間が延長された場合の負の影響につき、巨大メディアがしっかりと解説を加えたという点は評価に値するでしょう。
もちろん、新聞の特集記事ですから、「反対側の意見」もそれなりに掲載しています。ここでは、日本文芸家協会知的所有権委員長の三田誠広氏の意見が紹介されています。
1つは、「例えばサンテグジュペリ(1944年)は欧米では権利が続いているが、日本では勝手に翻訳が出せる。野蛮な国と見られているであろう」というものです。
しかし、ほとんどの国や社会において著作権の保護期間を有限とする旨の規定を置いているということは、どのような作品についても、いつかは「勝手に翻訳が出せる」状態に至ることを当然に容認しているわけです。日本では著作者の死後50年が経過すると「勝手に翻訳が出せる」し、ヨーロッパの多くの国では著作者の死後70年が経過すると「勝手に翻訳が出せる」し、アメリカでは著作者の死後95年が経過すると「勝手に翻訳が出せる」という程度の問題があるにすぎません。そして、私は幸か不幸か、「勝手に翻訳が出せる」ようになるまでに著作者の死後何年の月日が経過することを要するかということによって文明化の度合いを測る人々を見たことがありません。正直言って、著作者の死後50年と1日が経過したにすぎない著作物の翻訳が勝手に出せるということをもって日本を野蛮国と罵るフランス人に会ったことはないですし、著作者の死後70年と1日が経過したにすぎない著作物の翻訳が勝手に出せるということをもってフランスを野蛮国と罵る米国人に会ったことはない、著作者の死後75年と1日が経過したにすぎない著作物の翻訳が勝手に出せたあのころの米国は野蛮国であったと過去を反省している米国人をも見たことがありません。私と三田誠広氏とでは交際範囲が違うだけかも知れませんが、私でしたら、仮にそのようなことで日本を野蛮国と見る人々が外国にいたとしたら、その批判をあっさり受け入れて自虐的になるのではなく、そのようなことをもって日本を野蛮な国と見ることが間違っているということを堂々と申し述べることを選択したいと思っています。
もう1つは、「権利が切れると誤植の多い安易なものが公開される心配がある。私生活を暴露した作品で遺族が迷惑する例もあり、その防止のためにも作者の孫の生存期間程度は権利を継続すべきです」というものです。
しかし、三田誠広氏のこの心配は杞憂です。著作権の保護期間を経過した作品は著作物でなくなるわけではないからです。
著作権法は、第60条において、
著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
と規定し、また、第116条において
1 著作者の死後においては、その遺族(死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者について第六十条の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第百十二条の請求を、故意又は過失により著作者人格権を侵害する行為又は第六十条の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる。
2 前項の請求をすることができる遺族の順位は、同項に規定する順序とする。ただし、著作者が遺言によりその順位を別に定めた場合は、その順序とする。
と規定していますので、著作権の保護期間が経過したことを良いことに、私信を暴露して作家の名誉を傷つける行為に対してはその遺族がその差し止めを請求したりすることができるので、そのような心配はご無用なのです。
Posted by 小倉秀夫 at 02:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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» 最近のブックマークから/連休のおかげで、まだガス代が払えん。困ったぞぉ。 de 極私的脳戸/日々の与太
2005.07.16. とげぬき地蔵
最近のブックマークから。
「著作権は何を守るのか」 on be(benli)be report元記事。また三田誠広がいい加減なことを云っている。このへん、弁護士氏の語るところが正しい。ちょ...... Lire la suite
Notifié: 17 juil. 2005, 16:44:31
» 著作権は野蛮を守るのか de 鎌津間ブログ
The Casuarina Tree
さんやBENLI
さんでもbe on Saturday
を取り上げておりましたが、やはり日本文芸家協会知的所有権委員長の作家・三田誠広さんのこの発言は突飛だ。
例えばサンテグジュペリ(1944年没)は欧米では権利が続いているが、日本では勝手に翻訳が出せ... Lire la suite
Notifié: 17 juil. 2005, 23:21:13
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