« 「郵政解散」かもしれないけど、私にとっては「iPod選挙」 | Accueil | Attention!! »

08/14/2005

文教委員会所属の議員さんへの質問

衆議院文部科学委員会所属の議員さんたちの4分の1くらいに次のようなメールを送信しました。


衆議院議員         先生


 私は、今回の総選挙においては、著作権法の2007年改正問題についての態度を重視している者のひとりであります。つきましては、衆議院の文部科学委員会に所属されている各党の議員の方々に、下記の質問をさせていただいております。突然の解散総選挙でご多忙のこととは存じますが、ご回答いただければ幸いです(先生のご回答は、私のウェブサイト上で公開させていただくことを予定しております。)。

【ご質問】
1. 著作権の保護期間延長に反対かどうか

2. 私的録音録画補償金制度を廃止するとともに、正規商品の代替品を市場に供給しない複製を私的使用目的の複製として保護し続けるかどうか

3. コンテンツのストリーミング型配信について、少なくとも一定の禁止期間経過後は、コンテンツホルダーの権利を許諾権から二次使用料請求権へとシフトさせるかどうか

4. 原盤権者に対して、楽曲のオンライン配信について日本国内又は他のG8参加国内にある事業者の一つにライセンスを付与した場合、他の事業者に対しても、少なくともそれと同程度の条件でライセンスを付与することを義務づけるかどうか


【ご質問の趣旨】
1 IT技術の発展により私たちは消費生活における新たなる利便性を様々に獲得できるようになったはずでした。しかし、既存の著作物についてのコンテンツホルダー(著作権者、著作隣接権者等)といった既得権者が手厚く保護されすぎているため、私たちはこのIT技術の発展による恩恵を十分に受けることができません。それどころか、先端的なIT技術を中核とするベンチャー企業等が消費者に様々な利便性をもたらす新たな商品やサービスを開発し提供しようとするにあたって、専らこの商品やサービスを妨害するために、既得権者が著作権等を行使するという現象が頻発しており、私たちは、欧米諸国の市民と同レベルの消費生活を満喫することができないでいるのが実情です。
 そこで、既得権者と新しい起業家、そして私たち消費者の利益バランスをどうお取りになるのかの試金石という意味でも、著作権法改正問題についてのスタンスというのは重要だと考えております。


2 著作権の保護期間の延長を認める正当性というのは、「創作へのインセンティブを確保する」ことの1点しかありません。すると、今後創作される著作物についてはともかく、既に創作されてしまっている著作物についてまで著作権の保護期間延長の効果を及ぼすことには何ら正当性はありません。既存の著作物について著作権の保護期間を延長するというのは、既存の著作物について著作権を有しているというだけで不労所得を得、または、当該作品の利活用を阻害している人・企業の既得権を拡大するという意味しか持ちません。
 したがって、私は、今後著作権の保護期間が立法によって延長されるにせよ、その延長の効果が既存の著作物に付いてまで及ぶこととすることには反対いたしております。

3 iPod等のハードディスク型音楽再生機器を私的録音録画補償金の適用対象とするように音楽関係団体が各所に働きかけを行っていると聞き及んでいます。しかし、これらの機器への私的使用目的の複製は、CDという「通勤通学の途中で再生するのに不便なメディア」からiPod等の「通勤通学の途中で再生するのに不便なメディア」へとデータを移す「メディアシフト」のために行われているのが通常です。このような「メディアシフト」のための複製については、「それさえなければ正規商品が余分に売れていたであろう」とは一般的に言えないので、コンテンツホルダーに何ら経済的な損失を与えておりません。したがって、iPod等が私的録音録画補償金の対象となるとすれば、それは、経済的損失の裏付けがない補償金制度を創設するということになるのであって、コンテンツホルダーが国民に対して一種の間接税を徴収することを認めるということになります。
 私は、このような形で、国が既得権の不当な拡大に手を貸すことに反対しております。

4 日本は世界に先駆けて送信可能化権を、歌詞・メロディ等の著作権者及びレコード会社等の隣接権者による許諾権として法定してしまいました。そのため、同じ先進国であるアメリカやイギリス、フランス、ドイツなどで普及しているサービスを、日本の消費者が享受できないという事態が現実に発生しています。
 例えば、インターネットを介して音声等をストリーミング配信するインターネットラジオは、日本は特に立ち遅れた状態にあります。といいますのも、無線または有線によるコンテンツ配信のうちコンテンツを公衆に向けて同時に配信するもののみを放送・有線放送としてあとで二次使用料を支払えばレコード会社などの許諾を得なくともコンテンツを送信できるとしているのに対し、コンテンツが公衆に向けて同時に送信されないものについては、レコード会社等から事前に逐一許諾を得なければその配信は許されないものとされているからです。
 しかも、日本のレコード会社等は、音楽配信のためのライセンス交渉の窓口を用意しておらず、インターネットラジオ事業に参入しようとした業者が「お金なら支払うからCDに収録された楽曲をインターネットラジオで送信させてくれ」と申し込もうにも、その窓口すらない状態です。
 許諾権を適切に行使できず、文化遺産の公正な利用を阻害してしまっている権利者からは、許諾権を取り上げて、二次使用料請求権を代わりに与えるにとどめるのが、文化保護法である著作権法の努めだと私は思います。

5 現在の日本法の下では、どこの音楽配信サービス事業者に楽曲の音楽配信を行わせ、どこの事業者に行わせないかを決定する権限をレコード会社等の原盤権者が有していますが、この権限は、レコード会社等がその子会社、関連会社である音楽配信サービス事業者を、他の音楽配信サービス事業者より競争上有利におくために、子会社・関連会社たる事業者に音楽配信を認めた楽曲について、その競争相手である事業者には音楽配信を認めない等の差別的取扱のために利用されたり、アメリカ等の市民向けの音楽配信サービスでの音楽配信を認めた楽曲について日本の市民向けの音楽配信サービスでの音楽配信サービスを認めない等の民族的差別のために利用されたりしています(例えば、Sony Musicが権利を持っているPuffyの「アジアの純真」という楽曲は、アメリカのiTunes Music Storeではダウンロード販売されていますが、日本のiTunes Music Storeではダウンロード販売されていません。)。
 このように、日本国民は、消費生活のレベルにおいて明らかに差別を受けているのが実情であり、その差別を後押ししているのが、既得権者保護の色彩が強すぎる現行著作権法の諸規定です。

 私は、日本の消費者が欧米の消費者と比べて露骨に差別されている状態を黙って放置していられる政治家を──その方が他の話題でどんなに勇ましいことをいっていたとしても──「愛国者」だとは金輪際思わないものであります。 

Posted by 小倉秀夫 at 04:25 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

TrackBack

URL TrackBack de cette note:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13499/5464132

Voici les sites qui parlent de 文教委員会所属の議員さんへの質問:

» 「benli」小倉氏が質問状 de d.e.plus
小倉弁護士が、衆院文部科学委員会所属議員各位に質問状メールを送られたそうです。 benli: 文教委員会所属の議員さんへの質問 質問内容は 1. 著作権の保護期間延長に反対かどうか 2. 私的録音録画補償金制度を廃止するとともに、正規商品の代替品を市場に供給しない複製を私的使用目的の複製として保護し続けるかどうか 3. コンテンツのストリーミング型配信について、少なくとも一定の禁止期間経過後は、コンテンツホルダーの権利を許諾権から二次使用料請求権へとシフトさせるかどうか 4.... [Lire la suite]

Notifié le 14 août 05 17:42:40

» 衆議院文部科学委員会の議員逹に小倉弁護士が質問メール de Where is a limit?
 benli経由文教委員会所属の議員さんへの質問と言う、エントリーがアップされています。衆議院文部科学委員会所属の議員さんたちの4分の1くらいに次のようなメールを送信しました。 との事で大変お疲れ様です。引用は敢えてしません。全文読んで欲しいと思います。  関..... [Lire la suite]

Notifié le 14 août 05 21:54:55

Commentaires

民主党のマニフェスト第1項が公表されました。
http://www.dpj.or.jp/seisaku/sogo/image/BOX_SG0062_kakuron.pdf

以下抜粋

(14ページ)
> (5)文化・芸術における知的財産政策をすすめます。
> 公正使用(フェア・ユース)規定を創設し、創作者(アーティスト・クリエイター)と、
> 将来の創作者を含む著作物利用者(消費者、エンドユーザー)のための
> 知的財産政策を実施します。国会図書館などによるデジタル・
> アーカイブ事業を本格化します。

 他党(自民党・公明党・共産党・社民党・宗男新党)のマニフェストはまだ公表されていません。
 そう言えば、昨年の著作権法審議で気を吐いておられた横光克彦氏は社民党を離党して民主党から出馬するそうです。

Rédigé par: 謎工 | le 08/16/2005 à 17:27

いつもながら精緻な論考には感服しきりです。ところで、

---------

iPod等の「通勤通学の途中で再生するのに不便な→→→便利な

---------

ではないでしょうか?

間違った解釈ならごめんなさいですが。

Rédigé par: ほげ | le 08/14/2005 à 22:34

自分の「質問」に対して「ご」という接頭語を付けるのは
日本語としておかしいのではないでしょうか。
些末なことではありますが気になりましたので
あえて苦言を申し上げさせていただきました。

Rédigé par: 読者 | le 08/14/2005 à 17:51

Poster un commentaire