« オンラインストレージサーバと公衆用自動複製機器 | Accueil | はてなブックマーク »

09/03/2005

Imagine there's no country.

 SMEの井出靖さんは、

 音楽配信は確かに脚光を浴びていますが、“配信ならでは”という、CDを上回る楽しさやメリットがはっきりしたときこそが、本当のブレイクタイミングだと考えています。
述べたのだそうです。

 「CDを上回る楽しさやメリット」ですが、一つは簡単です。物理的な制約があるCDと異なり、いろいろな国のいろいろな人のいろいろな楽曲をENJOYすることができる。これだけでも十分CDを上回る楽しさやメリットがあります。アメリカやイギリスやフランスやドイツやスイスなど様々な国の人々から喝采を浴びた音楽を私たち日本人も楽しみ、また私たちが「これは素晴らしい」と思った楽曲をそれらの国々の人々に聴いてもらう。それができるだけでもCD時代よりも遥かに進歩しています。

 ところが、それをさせないのがSMEをはじめとするレコード会社の方々です。欧米のiTMSのダウンロードランキングで上位に入っている楽曲の大部分が日本のiTMSではダウンロードできません。日本のユーザーは、日本だけ特別に高いお金を支払わされるのはとりあえず諦めて受け入れているわけですが、金額以前に、それらの楽曲をダウンロードすること事態許されていないわけです。

 BBS並行輸入事件高裁判決の判例評釈で論文デビューした私にとって国際的市場分割というのは昔から追いかけているテーマの一つであって、そこでは企業が利潤を極大化するために日本在住者に対してのみ特別に高い価格を押しつけるという企業の政策が法的保護に値するのかということが中心テーマになっていたわけですが、音楽配信で見せつけられた現実はそれを上回っています。いわば国際的情報分割といいますか、日本在住者がある種の情報を適法に入手する手段を排除し、日本にいてはその情報にアクセスすることができなくなるようにする手段として著作隣接権が活用されているわけです。現行の法制度のまま楽曲データの流通手段の主流がCDから音楽配信へと移行し、音楽配信でのみ楽曲データを販売するということが日常化していった場合、レコード会社は、「黄色人種がうじょうじょいる日本という国に住んでいる奴らに聞かせてやっていい楽曲と、奴らに聞かせるのはもったいない楽曲」とを峻別することが可能となります。

 例えばアメリカにおいて、黒人の割合が多い地区でダウンロードできる楽曲と白人の割合が多い地区でダウンロードできる楽曲とに顕著な差を設けたら、人種差別だということで大問題になるでしょうし、黒人の割合が多い地区でのダウンロードを許諾しなかったレコード会社はおそらくもたないでしょう。しかし、「国境」というマジックワードが挟まると、何となく納得してしまう人が多いようです。でも、よく考えてみれば、ある人種なり宗教なり民族なりが多数派を占める地域の住民をある種の情報から排除することを倫理的に正当化する要素に「国境」がなりうるかというとたぶんに疑問です。自由主義社会に属しているはずの日本において、情報が日本国内に流入することを排除する特権を特定の人々に認めてしまうなんて!!

 私は、音楽において、私有財産制度がない社会まで想像せよといっているのではありません。適切なライセンス料なら喜んで支払います。でも、音楽配信時代になったら、もう「国」という概念がないことくらいは想像し、実現してもよいのではないかって思うんですよ。「夢想家」にすぎますかね。

Posted by 小倉秀夫 at 11:02 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

TrackBack


Voici les sites qui parlent de: Imagine there's no country.:

Commentaires

元SME・丸山氏「音楽配信発のビッグアーティスト生み出したい」
http://japan.cnet.com/interview/story/0,2000050154,20086678,00.htm

Rédigé par: 無七志 | 6 sept. 2005, 01:59:54

ソニーは驚くほど早く白旗を揚げたようです。
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20050905/sme.htm

Rédigé par: 謎工 | 5 sept. 2005, 20:20:55

それだったら、ソニーがMacでも動くアプリを開発すればよい、ということになるのではないでしょうか。実現するかはともかく、考えとしてはありだと思います。少なくとも、iTMSに参入することが何よりも第一、という考えには反対です。

本当は、認証、決裁、管理方法が中立化して、その仕様にしたがってサーバー、クライアント双方が実装すればよい、というのが一番なのですが、利権が絡みすぎて、さすがにそれは難しそうですね。

Rédigé par: はっぴー | 3 sept. 2005, 15:01:49

 私は、Macユーザーなので、私にとってはiTMS以外の音楽配信サービスはないのと一緒です。

 それはともかく、ネットラジオ系はともかく、音楽配信サービス系は、だいたい事情は一緒ではないでしょうか?

Rédigé par: 小倉秀夫 | 3 sept. 2005, 14:03:18

申し訳ないですが、iTMSだけが、音楽配信市場なんでしょうか。iTMSが使い易いのはわかりますが、それだけで音楽配信の意義を訴えられても、困ります。現に、僕はLinuxを普段使っているので、iTMSを利用することができません。

これでは、まるで「Windowsで動かないソフトは世の中に無いも同然」といわれているようで、論法におかしさを覚えます。

Rédigé par: はっぴー | 3 sept. 2005, 13:20:46

L'utilisation des commentaires est désactivée pour cette note.