ネットオークションと著作権
讀賣新聞の記事によれば、
横浜市が税金滞納者から差し押さえた絵画をインターネットオークションで公売する際、画家の許諾を得ないで画像を掲載するのは著作権の侵害にあたるとして、著作権管理事業者が12日、同市を相手取り、掲載の差し止めなどを求める訴訟を東京地裁に起こしたとのことです。
これに対して、横浜市側は、
「(公売オークションでは)画像が鮮明にならないように調整しており、著作権者の許諾が必要な『複製』には当たらない。複製だとしても、今回のケースは『引用』に当たるため、やはり著作権者の許諾は必要ない」と反論しているのだそうです。
一見この横浜市側の主張はピントがはずれているように見えますが、あるいは、東京高判平成14年2月18日判例時報1786号136頁【照明器具広告用カタログ事件】を意識しているのかもしれません。
照明器具広告用カタログ事件においては、
書を写真により再製した場合に、その行為が美術の著作物としての書の複製に当たるといえるためには、一般人の通常の注意力を基準とした上、当該書の写真において、常軌表現形式を通じ、単に字体や書体が再現されているにとどまらず、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、黒色の冴えと変化、筆の勢いといった常軌の美的要素を直接感得することができる程度に再現がされていることを要するものというべきであると判示されています。もちろんこれは、「書」の特殊性(書は、本来的には情報伝達という実用的機能を担うものとして特定人の独占が許されない文字を素材として成り立っているという性格上、文字の基本的な形(自体、書体)による表現上の制約を伴うことは否定することができず、書として表現されているとしても、その自体や書体そのものに著作物性を見いだすことは一般的には困難である)という点から導かれている反面、写真により再生した場合にその行為が美術の著作物の複製にあたるといえるためには、その美的要素を直接感得することができる程度に再現がされていることを要するということが美術の著作物一般に当てはまる余地がないわけではないようにも思われます。
というのも、美術の著作物にとってその作品のある程度詳細な構成というのは著作物を特定するのに最も重要な情報という意味で実用的な価値を有しているのであり、そのような情報を著作権者に独占させるのはアイディアではなく表現の創作的な部分を保護することを原則に置く著作権法の建前からするとやや行き過ぎであり、従って、絵画の著作物を特定するために必要な情報を超えた、美的要素を直接感得させる程度に絵画の著作物が写真の中に再現されるような場合に初めて著作権法による規制の対象となると解することには合理性があるように思われるからです(写真における絵画の著作物の再現の程度がその作品の美的要素を直接感得させる程度に至っていない場合は、その写真は正規商品との間の代替性が低いのですから、これを規制する必要性は低くなるということができます。)。
また、絵画等の著作物が公売に付される可能性があることは、絵画等の著作物が「紙」などの有体物に化体されている以上、避けがたいことであり、公売に付される場合には、入札する権利を有する不特定多数人に当該絵画の著作物が提示されるのは避けがたいことであります。だとすれば、絵画等について公売手続きを行う上で必要最小限の範囲内において著作物を利用することは、公売制度の公平性・公正性を維持するためには必要不可欠であり、したがって、絵画の著作物についての著作権を行使して公売の客体たる絵画作品の公衆への提示を阻害するのは権利の濫用だということも不可能ではない(オフラインのオークションだって、オークションの対象となる絵画等を不特定多数のバイヤーに向けて展示するのは展示権侵害だといえなくはないのですが、実際にはそのような主張を行って自分の作品がオークションにかけられるのを阻止しようとしたって、おそらく多くの人は「そりゃ、むちゃくちゃな」と思うでしょう?)ようにも思うのです。
Posted by 小倉秀夫 at 02:29 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Voici les sites qui parlent de: ネットオークションと著作権:
» [インターネット事件]絵画公売オークションで提訴「画像は著作権侵害」 de 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20051013ic02.htm 訴状などによると、横浜市は今年2月、民間業者が運営するサイトで、市税滞納者から差し押さえた物品の公売オークションを実施。この中で、原告が著作権管理委託契約を結ぶ洋画家の絵画1点を出品し、全体写真と署名部分の拡大写真計3枚を掲載した。 これについて原告側は、同市は著作権者から画像掲載の許諾を得ておらず、著作権を侵害していると主張。掲載の差し止めと、未払いの許諾料など約17万円の支払いを... Lire la suite
Notifié: 16 oct. 2005, 10:21:56
» 絵画公売オークションで提訴「画像は著作権侵害」 de こんなことあるんだよね
絵画などの美術品の著作権を管理する美術著作権センターが、インターネットオークションで公売する際、画家の許諾を得ないで画像を掲載するのは著作権の侵害にあたるとして、掲載の差し止めなどを求める訴訟を起こしたらしい。... Lire la suite
Notifié: 20 nov. 2005, 21:01:45
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Commentaires
47条のような既定を設ける必要があるということになりますかね?
Rédigé par: あ | 17 oct. 2005, 10:17:56