パクリ問題と興奮した第三者について
AというアーティストのBという作品が、CというアーティストのDという作品の「パクリ」ではないかということで騒ぎになることがネット上では増えたような気がします。
ポピュラーミュージックの世界だと、むしろ、聞き手が「元ネタ」に気付いてにやっとするみたいな反応をすることが多かったので、昨今のネットで横行している「パクリに潔癖すぎる受け手」には正直違和感を感じざるを得ません。Dという作品の全部又は一部がBという作品に組み入れられているということについて、どのような権利処理が行われあるいは行われていないかなどということは、Aの側とBの側との間の問題であって、「受け手」ないし全くの第三者にとっては本来どうでもよい話です。
CはAによるBという作品を知らないと言うことはあるかもしれませんから、Dの全部又は一部と同一又は類似する要素がBのなかにあることに気が付いた人が、その旨をCまたはCの所属プロダクション等に連絡すること自体はそれほど悪くないかもしれないし、同じ指摘がいくつもCの側に寄せられてもCの側にも迷惑がかかりますから、上記連絡を行った場合にその旨をウェブサイトやブログなどで報告するくらいなら特にどうこういうようなことではないとも思うのですが、ただ「受け手」等の領分はそのくらいまでなのではないかと思うのです。
Cとしては、その程度の同一性・類似性ならば気にしないということもあり得ますし、Aには次から気をつけてくれれば今回は事を荒立てたくないと思うかもしれないし、自己の作品の一部をAに取り入れてもらって却って嬉しいと思うかもしれないし、あるいはAのことをけしからんと思うかもしれませんし、問題とされている部分は既に当該ジャンルにおいて「共有資産」となっているから同一又は類似でも文句はいえないと思うかもしれません。それは、周りがとやかく言うべき話ではありません。
「パクリ問題」というのは他人を攻撃していい気持ちになるのには格好の題材なのだろうとは思うのですが、私は、著作権法というのがそのようなストレス発散の道具に用いられることを快く思いません。それは、我が国の文化の発展に何ら資することはなく、むしろ、新たな作品の創作を萎縮させることにすら繋がるのではないかという危惧すら有してしまいます(同ジャンルのクリエイターとして特に問題視しないであろう程度の同一性又は類似性しか有しない場合であっても、創作に関して門外漢である「受け手」が「パクリ潔癖性」から執拗に攻撃してくるかもしれないということが、執拗な攻撃を受けて創作意欲や創作環境を失ってしまった他のクリエーターの姿によって強く印象づけられ、本来であれば公表され文化の発展に貢献していたであろう作品について、その公表が躊躇されるという事態を招きかねないからです。)。
【今日聴いた曲のうちのイチオシ】
「Besoin de vous」
by Indra & Frederic Lerner
Posted by 小倉秀夫 at 01:53 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Notifié: 27 oct. 2005 à 15:46:49
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Commentaires
私は、小倉氏の見解とは対立する場合が多いのですが、この件については、(非常に珍しく)同じ考えを持っています。
金田氏は「プロならパクルな」とおっしゃっていますが、恐らく、その時点で、小倉氏のこのエントリーの主旨を理解できていません。
小倉氏の主張の根幹は「第三者には、パクリかどうかは判断する材料がない」と言う点にあります。
つまり、オリジナルの作者C氏から、A氏の作品Bについて、C氏の名前や作品名Dを出さずに使用する許諾を得ているかもしれないのです。
この場合、「パクリ」ではありませんよね。
このような表に出ない(出す必要もない)許諾契約が存在する可能性を否定できるような材料が何かあるのか?そこがポイントになるかと思います。
Rédigé par: sandman | 10 nov. 2005 à 03:32:02
(へ´ω`) パチモンで周りが騒ぐなというのは
偽ブランド品はOKということか。
消費者が批判したり、警察が動くのは
不当なんだな。
なにこのイタイ発想。
Rédigé par: DinoSwift | 2 nov. 2005 à 13:59:56
>私は、著作権法というのがそのようなストレス発散の道具に用いられることを快く思いません。それは、我が国の文化の発展に何ら資することはなく、むしろ、新たな作品の創作を萎縮させることにすら繋がるのではないかという危惧すら有してしまいます
全面的に賛成します。表現の自由と同じように創作の自由が、心無いフレームで萎縮効が生じるのは、自由な創作活動の発展にとって、脅威以外の何物でもありません。自分の価値観と合わない小説だからといって出版社へ押しかけて嫌がらせをするのと同じです。
Rédigé par: 通り過ぎ | 26 oct. 2005 à 20:15:10
あと、どうでもいいけど、二回、名前で呼びかけるの。うざいからやめてくれ。
Rédigé par: 鼓笛隊 | 25 oct. 2005 à 14:45:39
小倉と見るとバカみたいになんでも反対するんだね。で、困ってきたら言ってることを少しずつずらす(ネット右翼がよくやる議論のやり方だよ)。最初こう書いてるじゃない。
>ニヤリですまないパクリ、例えばあるキャラクターが一升瓶を持つだけで規制されうるほどに似たキャラクターが登場した場合、第三者が「おいおいそれでいいのか」となるのは当然です。
それでいいんだけど、なにか?立派な別のキャラクターだよ。それ以前に、だいたいモナーとのまねこって似てないんだよね(笑)。
Rédigé par: 鼓笛隊 | 25 oct. 2005 à 14:44:15
水割りさん水割りさん
そうでもありませんよ。私はこのエントリに絞ればただ一点、「それはわかるけど、でも、商売でやってるプロならパクっちゃマズいよね」と言っているにすぎません。
引用や翻案、リメイクですね。あと、パロディ。そういったものは当然認められてしかるべきものです。が、安易にパクってちゃあそれは「作品」ではないだろう?ということです。模写はあくまでも模写でしかなく、模写であることを明らかにしなければ贋作なんです。
音楽堂茶室のJ2さんが、私よりもっとうまい表現をしていました。
「私が思う「許せないパクリ」とは、この「生みの苦しみを回避するような盗用行為」である。」( http://www.virtual-pop.com/tearoom/archives/000108.html )
同じことを、私は「プロならパクんな」(名前: 金田真一 | octobre 24, 2005 11:28 AM)と表現したのです。
Rédigé par: 金田真一 | 25 oct. 2005 à 11:26:04
作品に「オリジナルに対する敬意」が払われているのかいないのかを判断するのはクレジットされているかですか?第3者ですか?
僕には判断するのはオリジナルの作者以外ないと思うんですけどねぇ。
Rédigé par: やまだ | 25 oct. 2005 à 02:17:14
>金田真一さん
小倉先生とみたら、なんでも反対するのはやめたらどうです?
いや、やめなくてもいいですけど。はてなブクマで面白がられるだけかもしれないですから。
Rédigé par: 水割り | 25 oct. 2005 à 01:06:37
食っていけるだけ稼げたらアマチュアじゃないような・・・でも言われてみれば大手同人さんはかなり稼いでいると聞いたことがありますな。
確かに線引きは難しいと思いますが、おおっぴらにリリースする以上は、といったところでしょうか。
同人であればまだ仲間内とみなせなくも無いわけで、だからこそコンテンツホルダもお目こぼししてくれているのかなと。
逆にいえば、一般に販売するならばってところでしょうか。
>「プロ」を神聖視する背景
俺はこれで稼いでるんだっていう・・自信?覚悟?ちょっと表現がうまくありませんが、そういったものがプロにはあるべきだという思いがあります。
たとえば、私は自分の仕事は真面目にやりたいと思っています。お客さんに正直でありたいし、Win-Win の関係が構築できるようにしたい。まだまだ試行錯誤で失敗もありますが、故意にお客さんを裏切りたくないんです。私はプロですから。今の仕事でお給料を頂く以上、プロなんです。
本業副業を問わず業務として対価を得るなら、そういう意識でいて欲しいってことです。
遊びでやってる範囲ならヌルくてもいいんですけどね。遊びじゃすまないくらいになったら、遊びのつもりでいちゃいけないってことですよ。
#なかなか気持ちの切り替えも難しいんですけどね
Rédigé par: 金田真一 | 24 oct. 2005 à 13:35:28
>カネ取って売るなら、アマチュアの同人みたいな真似をすんなよ、と。
>
>省略
>
>簡単に言えば、プロならパクんなってことでしょうか。
コンテンツ業界におけるプロとアマチュアの区別なんて商業流通を利用しているかいないか程度の区別でしかないと思うのですが。
商業流通に乗せてもぜんぜん稼いでいない「プロ」もいれば、食っていけるだけの金を稼いでいる「アマチュア」もたくさんいますよ。
「プロなら恥ずかしい仕事をしないよう心がけるべき」という部分については否定しませんが、そこまで「プロ」を神聖視する背景が気になります。
Rédigé par: hsbt | 24 oct. 2005 à 13:15:56
サミーさんサミーさん
私はマンガ「封神演義」を考えていました。あれも、当時マイナーだった小説を一気に広めましたよね。
ただ記憶があやふやで原作をクレジットしていたかどうか未確認なのですが・・・
そもそもパクリと翻案は違います。パクリで稼ごうなんていうのはプロとして極めて恥ずかしい行為ですが、翻案して新たな解釈や新しい技法で生まれ変わらせることはクリエイティブな作業だと思います。
プロなら恥ずかしい仕事をしないよう心がけるべきで、パクリはストレス解消に指摘されるのではなく、プロとしての姿勢を問われているのだと思うのです。
また、参考文献としてあげてしまうことで、パクリと言われなくて済んでいる例もあります。漫画家の荒木飛呂彦さんは構図やポーズ、ファッションをファッション誌を参考にしていることを明らかにしてますが、別段問題視されていません。仮に「パクリだ!」と指摘があっても、あらかじめ参考にしていると明言されているため、恥ずべきコトとして扱われないのです。
何もかもオリジナルで生み出せるわけではないのですから、参考にしたなら参考にしたと紹介しちゃうのもアリでしょう、という一例ですね。
Rédigé par: 金田真一 | 24 oct. 2005 à 12:55:19
>昨今のネットで横行している「パクリに潔癖すぎる受け手」
これは、最近までの政府の知的財産の一方的な保護強化と、それに守られた音楽産業や権利者団体の潔癖かつ断固たる利用者への対応が反映した結果だというのは確かだと思いますよ。
制作側権利者側には相当にゆるい著作権概念が認められているのに、利用者の自由は極力認めないという不均衡がある限り、法的措置などとりにくい庶民の抵抗手段は限られてくるでしょう。
勿論、このえっけんさんの指摘には100%賛成ですが、そうではない適正な範囲の議論批判は問題ないでしょう。
>パクリを認めるとか認めないとかのことではなく、鬼の首取ったかのように荒らしの材料にしてはいけない
Rédigé par: COMAP | 24 oct. 2005 à 12:51:18
大昔、大滝詠一という人がいましたが、その人は、余程のマニアでないと知らない曲を、原曲を知らない人のための翻案としてパクって、原曲の作曲家を「Dedicated to」としてクレジットして、自分のラジオ番組で原曲を紹介して原曲を啓蒙するという形で活動していたのを思い出しました。これもパクリと言えるのかなあ?
Rédigé par: サミー | 24 oct. 2005 à 12:23:12
んー。もちろん荒らしていいと言っているわけではありませんよ。
普通に考えてやっちゃいかんことはやるなということは大前提です。便乗して騒ぎたいだけの奴は真面目に考えている奴にとっても邪魔でしかありませんが、騒ぎが大きくなればどうしても野次馬が集まるのは仕方がないでしょう。
で。パクリじゃないの?と思った人が、「俺はこう思う」とネットなり何なりで発言する。
もし、「それパクリじゃねえだろ」つまり「ニヤリで済む程度」なら、パクリ騒ぎに発展することなんかありません。
それでも許せない潔癖症・・・そんなにたくさんいますかねえ?
パクリを後ろめたいと思うならパクらなきゃいい。パクリではなくカバーやリメイク、翻案ですな。そういったものであるなら、クレジットしてやればいいんです。
後ろめたいことをしていて責められたくないってそりゃあ都合が良すぎるってもんです。カネ取って売るなら、アマチュアの同人みたいな真似をすんなよ、と。
そういうことでしかないんですよ。パクリを後ろめたいと思っているから、感づかれる。
堂々とできるようにしてりゃいいんです。胸を張れるならそうすればいい。
本当に自分の作品だと思っているならそう主張できるはずです。
簡単に言えば、プロならパクんなってことでしょうか。
人のもので食い扶持稼ごうなんて盗人猛々しいと思いませんか?
Rédigé par: 金田真一 | 24 oct. 2005 à 11:28:24
これは全く同感です。とくに、
>我が国の文化の発展に何ら資することはなく、むしろ、新たな作品の創作を萎縮させることにすら繋がるのではないかという危惧すら有してしまいます
という部分に、意を強くしています。とりわけ音楽なんてパクリの歴史・・・なんて言っちゃダメかもしれないけれど、そういう心の余裕というか、「本歌取り」を楽しむ心がないと、音楽文化でもどんな文化(もちろんネット上のそれも含まれることと思いますが)でも大きな発展は期待できませんよね。
Rédigé par: 鼓笛隊 | 24 oct. 2005 à 11:07:50
第三者は、指摘行為だけに留まるべきで、数の暴力に任せて相手先を荒らしたり、あるいはネットという公共の場で中傷を繰り返すのはおかしな話でしょう。
小倉さんの主張は、権利者でもない輩が、著作権法を武器に、ストレス発散の場としてネットを使うな、ということですから、暴論とは思えないですね。
それでもパクリは許せないのならば、見つけた人はもともとの権利者に通報すればいいだけの話。
パクリを認めるとか認めないとかのことではなく、鬼の首取ったかのように荒らしの材料にしてはいけない、ということと読みました。
Rédigé par: えっけん | 24 oct. 2005 à 10:21:16
パクリに気付いても「受け手ないしは全くの第三者」は黙っていろというのは暴論ですね。
ニヤリですまないパクリ、例えばあるキャラクターが一升瓶を持つだけで規制されうるほどに似たキャラクターが登場した場合、第三者が「おいおいそれでいいのか」となるのは当然です。
それは「他人を攻撃していい気持ちになるのには格好の題材」ではなく、単に「他人のものをコピーしてはいけない」というハナシなのだろうと思うのです。
通信技術の門外漢がプロトコルの大幅な改定を必要とする提案をするのとは違って、基本的に善意の指摘であろうと思うのですよ。
それはインターネット上の言論を圧迫するのとは違って、単に「パクリよくない」の一言に集約されるんです。パクリでないなら、オリジナルに敬意を払ってクレジットすればよいのですから。
Rédigé par: 金田真一 | 24 oct. 2005 à 08:36:06