ライブハウス経営者の刑事責任
平成18年2月7日に、ライブハウスの経営者が著作権法違反の疑いで逮捕されたそうです。
ライブハウスにおいて公衆に直接聞かせる目的で実際に歌唱・演奏をしているのは当該ライブハウスを利用するアーティストの方々ですから、ライブハウスの経営者に著作権侵害違反の罪を問うには工夫が必要です。
考えられる方法としては、
- 各アーティストを正犯とし、ライブハウスの経営者に幇助犯としての責任を問う
- 各アーティストをいわば道具として利用した間接正犯としての責任を問う
- いわゆる「カラオケ法理」を刑罰法規としての著作権法を適用する場面でも活用する
報道の書き方を見ると、「カラオケ法理」をあっさり適用して普通の直接正犯として逮捕してしまったのではないかという気もするのですが、そうだとすると、「著作権法の規律の観点」という明文化されていない正当化要素によって、曖昧模糊とした処罰範囲の拡張を認めようとしているという点で、罪刑法定主義という観点からもかなりまずいのではないかという気がします。
そういう意味では、起訴をする段階で幇助に落とせば問題はなくなるのですが、そうすると、刑事法的には正犯性がなくせいぜい幇助犯が成立するにすぎないのに、民事的には利用主体、侵害主体と認定できるのかという問題を生ずることになります。
著作物等の利用行為に間接的に関与したに過ぎない者を直接の利用主体と無理矢理認定してきたツケが現れたといえなくもなさそうです。
Posted by 小倉秀夫 at 06:02 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Notifié: 10 févr. 2006, 22:57:52
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Notifié: 12 févr. 2006, 02:14:05
» [著作権]ライブハウス経営者 de patentdjのblog
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20060212/1139678034”http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2006/02/post_156b.html Lire la suite
Notifié: 13 févr. 2006, 12:43:57
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Commentaires
今回の事件はライブハウスというもののタイプに関係する部分があります。
今回問題になっている店は、HPを見るかぎり、バンドを雇って経営側が演目(あるいは演奏指針)を選択しているタイプのような気がします。いわゆるハコバンをつかって営業するこうしたタイプの店(基本、昔のバンド付きキャバレーと同じです)の場合、経営者側が直接侵害で追求される可能性は当然あるかもしれません。
一方、ここ数年JASRACがライブハウス問題で社会的に非難されてきた主たる理由は、本来JASRAC管理曲の比重が非常に低く、個々のバンドに演奏場所を提供するタイプのライブハウスに直接侵害扱いで過去全営業時間対象の請求をしようとしたことです。小倉先生ご指摘の内容はこのタイプのライブハウスに対して該当するものだと思います。(←法律に門外漢の我々としては、やはりそうなんですよね、という感じです。)
昨年末からJASRACはこの問題に対して考え方を大きく転換したようです。この領域の実情を正確に把握し管理体制を自主改革する方針にあることは確かのようです。これは一応の評価にあたると思います。今後、どう適正化が進むかは利用者側の意識も重要だと思います。
今回経営者が逮捕された店の場合、もし経営者側がある段階で支払う意志を示したとすればその段階でのJASRACの対応と、一千万単位にもなってしまうという計算根拠が本当に正当なのかどうか、あたりが検証の要点かとも思います。
Rédigé par: COMAP | 12 févr. 2006, 23:02:08