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03/04/2006

「カラオケ法理」は必要悪だったのか

 いわゆる「カラオケ法理」の主たる機能の一つに、適法な行為に間接的に関与する行為を違法化する機能があります(特別の規定がない限り適法な行為を幇助しても適法であることとは大違いです。また、米国の寄与侵害責任、代位責任、誘因責任とも、「違法な行為」にも関与していることが責任の前提です。)。

 この適法な行為に関与する行為を違法化する機能の嚆矢は、なんといってもクラブキャッツアイ事件最高裁判決です。カラオケスナックで楽しそうにカラオケを楽しんでいる客のほとんどは、「公衆に直接聞かせる」目的もなしに、無償かつ非営利目的で歌を歌っています。従って、客による歌唱自体は著作権侵害とはなりませんから、客による歌唱を幇助したということでカラオケスナックの経営者に幇助責任を問うことはできなかったのです。だからこそ、最高裁は、JASRACの要望を聞き届けるために、カラオケスナックの経営者を歌唱の主体と認定するという荒技を用いる必要があったのです。

 しかし、翻って考えてみると、最高裁判所はそのような禁じ手のような技法を用いてまでクラブキャッツアイ事件でJASRACを勝訴させる必要があったのかというと、それは大いに疑問だったりします。

 クラブキャッツアイ事件当時、音楽著作物(特にカラオケでの歌唱の対象となるような大衆音楽)の著作権者がその音楽著作物を経済的に利用する方法としては、主として、コンサートなどでプロの歌い手に歌ってもらい、レコード等に収録して広く頒布してもらい、テレビやラジオで放送してもらう等することであって、それらを通じてその音楽のファンになった大衆がその歌を口ずさむこと自体から収入を得るということはそもそも収入源としては想定されていませんでした。そして、その楽曲のファンがカラオケスナック等でその歌を気持ちよく歌うということは上記レコード等の売り上げやコンサート収入、テレビ・ラジオ等のスポンサー料等を減少させるものではなく(注1)、従って、著作権者の著作権収入を減少させるものではありませんでした。したがって、クラブキャッツアイ事件でJASRACを敗訴させた結果カラオケスナックにおける客の歌唱に関してJASRACが著作権使用料の支払いを受けられないということになったとしても、それにより作詞家、作曲家たちの創作へのインセンティブが低下するということはなかったということができます(所詮、現状維持なのですから。)。

 もちろん、作詞家・作曲家の創作へのインセンティブをより高めるために、カラオケスナックでの客の歌唱について作詞家・作曲家等が収入を得られるようにしようという政策論議というのはあり得ると思います。しかし、そのような新たな政策を実現するのは、裁判所ではなく、議会の役割であったはずです。従って、著作権法を改正したり特別立法をしたりなどしてカラオケスナックでの客の歌唱について作詞家・作曲家等が収入を得られるようにするというのはそれはありだと思うのですが、裁判所が過度に技巧的な解釈を行うことによって議会の承認を得ずしてカラオケスナックでの客の歌唱について作詞家・作曲家等が収入を得られるようにしてしまうというのは、やはりまずかったのではないかと思います。

 今後、著作権法についても間接侵害の規定を設けることの当否が議論されることになるかとは思います。その際には、適法な行為への関与を違法化する機能は「カラオケ法理」から継承しないようにしてもらいたいと思います。

注1
 その後しばらくして、むしろ、新曲をいち早くカラオケで披露したいがために音楽CDを購入することが広く行われるようになり、それが90年代前半の音楽CDバブルを牽引したことは記憶に新しいです。

【今日聴いた曲の中でお勧めの1曲】


The World Is Mine

    by David Guetta

Posted by H_Ogura at 05:45 PM dans sur la propriètè intellectualle |

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Commentaires

裁判所はカラオケ法理に則って裁判をしていますが、実は最高裁が行っている情報公開制度については行政機関と異なり著作権法で例外規定が設けられていないため、民間人の著作物を開示した場合、著作権侵害のおそれがあります。
根拠法令は法令ではなく「最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱」という通達レベルのもので、謄写を業者に委託するなど、法務局が著作権の責任を問われた「土地宝典事件判決」を地で行くような内容となっています。
詳しくは次のサイトで解説されていますので、ご参考までにご紹介します。

ピリ辛著作権相談室 Q31:国会事務局に情報公開請求したいのですが…
http://urheberrecht.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/q31_1447.html

Rédigé par: にゃんきち | le 08/17/2008 à 13:31

  これ、比較法的にはどうなんでしょ。
 村林古稀でまはらじゃ事件の判例評釈をかくときに特にしなかったんですけど、学者のかたでやっているかたはいないんでしょううか。

Rédigé par: madi | le 03/08/2006 à 16:27

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