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05/23/2006

特別な人々が巨額の投資をして行う事業ばかりが尊いわけではない

 森・濱田松本法律事務所の齋藤浩貴弁護士は、「通信を利用した放送と著作権法の課題」を読む限り、IPマルチキャスト放送と比べて、一般のインターネット放送を低くみておられるようです。

 例えば、著作権法第2条第1項第9号の2の定義規定を見ている限りにおいてはIPマルチキャスト放送は有線放送に該当するものと解釈することは十分可能であるとしながらそのように解釈すべきではないとする実質な理由付けとして、

IPマルチキャスト放送を有線放送と解釈する場合には、必然的に、インターネット放送も有線放送と解釈せざるを得ないことになる。そのような解釈が、実際上の不都合を生じることは明らかであろう
としています(同31頁)。また、IPマルチキャスト放送を一定の範囲で有線放送と同一の扱いにするような法改正を行う際の注意点として、
IPマルチキャスト放送を、インターネット放送を含めない形で定義しなければならない
としています(同34頁)。

 ただ、齋藤先生は、

インターネット放送は、それほどの投資もなく、誰もが行うことができる。インターネット放送で放送の再送信を非営利無料で行うことは、誰の許諾も得ることなくできるとしたり、インターネット放送による商業用レコードの配信については、実演家やレコード製作者には報酬請求権しか認められず、一時的固定も許されるとすれば、著作者等の権利が不当に害されることは明らかである
とおっしゃったり(同31頁)、
その定義を、単純に電気通信役務利用放送法の「電気通信役務利用放送事業者」の定義と同一としたのでは、その文言からして、インターネット放送を含むものととられかねず、また、公共性のないものも含まれるかのような文言になっているため、そのような考えでよいのかは慎重な検討を要するであろう
とおっしゃったり(同34頁)しています。

 しかし、「それほどの投資もなく、誰もが行うことができる」という理由で、インターネット放送を、「多額の投資が必要であり、それ故に巨大資本の助けがなければできない」IPマルチキャストと著作権法上区別して扱うことの正当性は問われるべきでしょう。放送・有線放送での商業用レコードの利用については、レコード製作者や実演家に許諾権(禁止権)を付与していない(米国では報酬請求権すら認められていない。)わけですが、その趣旨は、放送・有線放送に公共性があるからというよりは、いつ、どの楽曲を視聴できるかを視聴者がコントロールできない放送・有線放送はレコード・CD等との代替性が低く、むしろ、放送・有線放送でその楽曲を放送されることはレコード・CD等の販売促進効果があるということにあったりするわけで(実際、米国では、特定の楽曲が、ミニFMでヘビーローテーションで放送されたことがきっかけとなって大ヒットしたなんて話は幾らでも転がっています。)、別に放送・有線放送は大企業がもっぱら担うから公共性がある云々ということは全然関係のないことだったりするわけです。そしてそのこと自体は、IPマルチキャスト放送はもちろん、インタラクティブ性のないインターネット放送なんかについても同じように当てはまるわけですから、いつ、どの楽曲を視聴できるかを視聴者がコントロールできない楽曲のネット配信については、放送・有線放送と別異に取り扱うものとする合理性等ないということができます(だから、米国でネットラジオからはロイヤリティを徴収できるようにする法改正がなされた際には非難囂々だったし、ネットラジオの側とコンテンツホルダーとの間でロイヤリティについて合意が成立した後も、ネット側は、「ウェブ放送曲ばかりが多額のロイヤリティの支払いを義務付けられており、音楽を無料で放送できる地上波ラジオに対して競争上不利な状況は変わらない」と不満を述べていたりするわけです。)。

 そういう意味では、インターネット放送による商業用レコードの配信について、報酬請求権が認められていることだけでも実演家やレコード製作者はありがたいと思うべきなのであって、禁止権が認められなければ権利が不当に害されるのだと考えること自体がおこがましいというべきなのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 03:10 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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