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08/31/2006

さきがけ事件・続報

 さきがけ事件については、特にSlashdot日本版でさかんに取り上げて頂きました。あの弾さんにも取り上げて頂きました。

 まあ、誤解と思われる点もありましたので、ゲームラボでの連載コラムで、この件を取り上げることにしました(編集長から突き返されない限り)。

 問題の根幹はプログラムの保護を著作権法で行うこととした点にあるのであって、現行法の枠内で問題の解決を図る法律実務家が非難されるのは筋違いだとは思います。

 もっとも、どのような要件を具備したプログラムについて、どのような内容の独占権を付与することが、コンピュータ文化の発展に最もよく繋がるのかということに関して、コンピュータ業界の方々の中でおよそのコンセンサスも得られていない状態では、「プログラマーの常識に合致したプログラム保護立法」を行おうにも行いようがないわけで、そういう意味では、法律実務家の無理解を嘆いたり蔑んだりする前に、プログラマー同士でのコンセンサスづくりが先なのではないかなあという気がしてなりません。

 なお、法学系出身者は、最新の技術を駆使した華やかなソフトの開発はともかく、枯れた技術を駆使した地道な業務用アプリの開発には向いていると思います。そういうアプリは、創作性の有無が微妙なのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 06:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

08/24/2006

著作権法上の「公衆」

 著作権法上の「公衆」とは「不特定の者人又は多数の者のことをいう」というのが多数説なのですが、では、誰との間にどのような関係がある場合にその者が「特定の者」といえるかについては,争いのあり得るところです。この点,加戸守行『著作権法逐条講義[第5版]』の70頁は「行為者との間に個人的な結合関係があるものを指」すとするのですが,そのように定義する根拠は記されていないし,そこでいう「個人的な結合」というのがどのような種類の,どの程度に濃密な関係を指すのかが明らかにされていません。

 そこでまず,「特定の者」という語が他の立法例においてどのような意味に用いられているのかを探求し,そこから著作権法上の「公衆」を画する基準である「特定」性を検討することとします。

  1.  個人情報保護法23条4項3号は,「個人データを特定の者との間で共同して利用する場合であって,その旨並びに共同して利用される個人データの項目,共同して利用する者の範囲,利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について,あらかじめ,本人に通知し,又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。」と規定しています。
      ここでの「特定の者」とは,個人データを共同して利用することにつき当該行為者と一定の協定を結んだものをいい,行為者と「特定の者」との間に,当該個人データの共同利用という行為の目的を離れた個人的な結合関係があることは必要とされていません。
  2.  入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律2条5項3号は,「入札又は契約に関する情報のうち特定の事業者又は事業者団体が知ることによりこれらの者が入札談合等を行うことが容易となる情報であって秘密として管理されているものを,特定の者に対して教示し,又は示唆すること」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」とは,「入札又は契約に関する情報のうち特定の事業者又は事業者団体が知ることによりこれらの者が入札談合等を行うことが容易となる情報であって秘密として管理されているもの」を教示又は示唆する対象として行為者が意図的に選択した者を指しているのであり,行為者との間に特段の個人的な結合関係があることは必要とされていません。不正競争防止法2条1項4号に「窃取,詐欺,強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し,若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)」と規定されている場合の「特定の者」も同様です。
  3.  ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項柱書は「この法律において「つきまとい等」とは,特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,当該特定の者又はその配偶者,直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し,次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」とはストーカー行為の対象として行為者が特に選択した者をいい,行為者との間に特段の個人的な結合関係があることは必要とされていません。
  4.  不正競争防止法2条1項11号は,「他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像,音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像,音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,若しくは輸入し,又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」とは,コンテンツ提供事業者等「の契約者などで当該コンテンツを視聴,実効又は記録することができる権原を有しているもの」のことをいう(山本庸幸『要説不正競争防止法 第3版』204頁)をいい,行為者またはコンテンツ提供事業者等との間に特段の個人的な結合関係があることは必要とされていません。
  5.  特定電子メールの送信の適正化等に関する法律2条1号は「電子メール 特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。次条において同じ。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。)であって,総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」とは電気通信の送信先として行為者が特に選択した者をいい,行為者との間に特別な個人的な結合関係があることは必要とされていない(いわゆるスパムメールの規制を目的とする本法の性格を考えれば,特段の個人的結合関係のない相手方に向けて送信される電子メールを,規制対象である「電子メール」の定義から除外するということはあり得ない。)。
  6.  特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律2条1号は,「特定電気通信 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。以下この号において同じ。)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう。」と規定しています。
      本法の起草者らは,「インターネット上のウェブページ,電子掲示板等は,電気通信の一形態ではあるが,不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(=有線,無線その他の電磁気的方法により,符号,音響又は影像を送り,伝え,又は受けること(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号))の送信であることから,このような形態で送信される電気通信を通信概念から切り出し,『特定電気通信』としたものです。電子メール等の1対1の通信は,『特定電気通信』には含まれない。なお,多数の者に宛てて同時に送信される形態での電子メールの送信も,1対1の通信が多数集合したものにすぎず,『特定電気通信』には含まれない。」(総務省電気通信利用環境整備室著=社団法人テレコムサービス協会編著「プロバイダ責任制限法──逐条解説とガイドライン──」17頁)としています。
      また,東京地裁平成16年1月14日判決(判タ1152号134頁,金商1196号39頁)は,同号の趣旨について,「電子メールが,送信側ユーザー及び受信側ユーザーとの間の人的なつながりを持つことを前提に,双方において具体的な相手方を特定できる関係にあるのに対し,「特定電気通信」の場合は,送信者側と受信者側に人的なつながりがなく,技術的にも双方とも相手方を具体的に特定できないため(匿名性),(a)誰もが容易に発信することが可能であり (発信の容易性),(b)ひとたび被害が発生すると容易に拡大し(被害の拡大性),(c)匿名で発信された場合には被害の回復が困難である(被害回復の困難性)などの特質があることによるとされている」と判示しています。このように,本条項にいう「特定の者」とは,行為者との間に「双方において具体的な相手方を特定できる」程度の人的な繋がりは要求される例があるにせよ,それ以上の,親族関係類似の濃密な個人的な結合関係は求められていない(例えば,事前に購読者登録をした人全員に同じ内容の電子メールを同封送信することが予定されているメールマガジンは特定電気通信(不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」にはあたらないものと一般に解されている。)。
  7.  保険業法2条1項は,「この法律において「保険業」とは,不特定の者を相手方として,人の生死に関し一定額の保険金を支払うことを約し保険料を収受する保険,一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し保険料を収受する保険その他の保険で,第3条第4項各号又は第5項各号に掲げるものの引受けを行う事業(他の法律に特別の規定のあるものを除く。)をいう。」と規定しています。
      ここでいう「不特定の者を相手方として」との文言について,東京海上火災保険株式会社編『損害保険実務講座[補巻]保険業法』14頁は,「これは,必ずしも現実に多数の者を相手方として引き受けが行われている必要はないということを間接的に明らかにしたものと解すれば足り,保険という要件をさらに絞り込むまでの意味はなく,この要件に格別の意味を持たせることは適当でないであろう」としています。
  8.  貨物自動車運送事業法2条3項は「この法律において『特定貨物自動車運送事業』とは,特定の者の需要に応じ,有償で,自動車を使用して貨物を運送する事業をいう。」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」(運送需用者)について,「運送需用者は,単数の者に特定され,等が運送需用者の輸送量の大部分を確保されるものであること」及び「運送需用者と直接運送契約を締結するものであり,運送の指示等において第三者が介入するものではないこと」等の具体的な要件が公示されてます(国土交通省北海道運輸局「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可基準」)が,運送事業者と「特定の者」との間に,それ以上に濃密な個人的結合関係があることは要求されていません。

 このように他の法令等において「特定の者」との語が用いられる場合,特定の行為ごとに行為者が意図的に行為の対象となる人物の範囲を絞り込めば足りるのか,それとも当該行為に先立って継続的な契約等により行為者と一定の人的な繋がりを有しておく必要があるかについては差違があるにせよ,継続的な契約関係よりもプリミティブな,濃密な個人的な結合関係(親族関係等)があることまでも必要としているものはありません。

 そして,著作権法上の「公衆」の範囲を画する概念としての「特定の者」の意義について,これらの他の立法例における意義と別異に解する特段の事情は存しませんので,継続的な契約関係よりもプリミティブな,濃密な個人的な結合関係(親族関係等)があることまでも必要としないものと解するべきです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:14 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

08/23/2006

さきがけ事件地裁判決

 最高裁のウェブサイトには載せてもらえていないのですが(同じ知財訴訟でも、福岡地裁管轄だと、全件掲載ではないようです。)、市販のコンピュータプログラムの創作性が否定されたという点で珍しい裁判例ですので、ご紹介します。

 福岡地判平成18年3月29日[「さきがけ」事件]

 なお、この事件は、控訴がなく、すでに判決が確定しています。

Posted by 小倉秀夫 at 04:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/20/2006

情報の流通や文化の伝播を「国境」で食い止めるのはもうやめよう。

 まねきTVのようなサービスを押しつぶすために、テレビ局は、「こんなサービスが容認されると、日本はオリンピックなどの映像について放送ライセンスが得られなくなる」云々と言って脅してきます。まあ、こんなニッチなサービスが容認されたからといって、日本の放送局が支払う莫大な放送権料を諦めて日本への放送ライセンスの付与を拒絶する組織があるとはにわかに信じがたいところではあります。

 百歩譲って、仮に有力なコンテンツをお持ちの組織の中にこの種のニッチなサービスが容認される国には一切放送権を付与しないという傲慢な組織があり、その組織がお持ちのコンテンツを視聴したいという国民が多い場合、その組織がお持ちのコンテンツだけはエリアシフトできないように工夫したらよいだけのことのようにも思います(テレビ局と機器メーカーとの間で「エリアシフトを不可とする番組」であることを示す信号を取り決めれば済むだけのことです。)。

 もっといってしまえば、海外スポーツの中継や映画のTV放映のような外部コンテンツ以外のコンテンツ(ニュースやドラマ、バラエティなど)は、ストリーミング型でいくかダウンロード型でいくかはともかくとして、全世界に向けてオンライン配信してしまえばよいのです(配信先の国・地域ごとにCMを入れ替えられるようにすれば、国外配信分についても広告収入が得られる可能性が高くあるわけですし。)。実際問題として、海外に滞在している際に見たくなる日本のテレビ番組としては、ニュースや日本国内制作のドラマ、日本の国内スポーツ等が上位にくるのであって、オリンピック中継だのサッカー中継だのは、無理して日本国内で放送されているものを見たいとは思わないですし、そういうものとして番組を制作すれば権利処理だってそんなに難しいものだとは思いません(いずれにせよ、YouTubeその他のサービスが存在する以上、外国人タレント等が日本のバラエティやCMで羽目を外した映像が日本国内で流れれば、その映像は米国等にも流れるわけですし。)。

 情報の流通や文化の伝播を「国境」で食い止めるという、反社会的なことのために、貴重な資本や法的なリソースを活用するという無意味なことは、そろそろやめにしてもらいたいものです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/19/2006

双方向番組も文字情報もどうでも良いから、とにかく見たい番組を見られるようにしてくれ

 まねきTVに関しては、どうしても、「海外にいながらにして日本のテレビを視聴する」目的で利用するというイメージが強いと思うのですが、実際には、「地方にいながらにして東京キー局のテレビを視聴する」目的で利用する方も結構多かったりします。私は東京の人間ですので地方出張の折りにホテルのテレビで見るときくらいしかローカル局のオリジナル番組を見る機会はないのですが、確かに、地元密着かもしれないけどそれなりにチープっぽさを感じしてしまいますし、そのようなローカル局オリジナル番組を放送するために地元では放送されていない東京キー局制作番組が全国的に評判を呼んでいる(そのことはネットを見ればわかります。)なんてことになれば、それはとても不愉快なことなのだろうと思います。

 ですから、日本全国どこにでも、東京キー局の番組を見たいという需要はあるのだろうし、ローカルテレビ局が極端に少ない地域では特にそうなのだろうということは想像に難くありません。だから、まねきTVのようなサービスを押さえつけようと思ったら、まずは、東京キー局みずから、その放送する番組を日本全国で視聴できるようにしてしまえばよいわけです。インターネットを使うもよし、BSデジタルを活用するもよし(どうせ、BSデジタルオリジナル番組なんて大したものはやっていないのですから。)。重要なのは、「いくつかの番組を視聴できる」のではなく「全ての番組を視聴できる」ようにすることです。

 もちろん、そうなると、ローカルテレビ局としては、専らオリジナル番組で勝負しなければいけなくなるので、大阪のような大都市圏を除けば、1局残るかどうかというところかもしれません(地元密着系の番組を流す放送局は1局あれば十分でしょう。)し、その1局はケーブルテレビだったりインターネット放送だったりするかもしれません。しかし、それは仕方がない話です。ローカルテレビ局を残すために、地方の人々が、東京キー局で放送されている番組を視聴できない状況を甘受しなければならないというのは、本末転倒な話です。

 「双方向番組も文字情報もどうでも良いから、とにかく見たい番組を見られるようにしてくれ」という声に応えるためのインフラ投資をテレビ局も真剣に考えればいいのになあと私などは思ってしまう今日この頃です。

Posted by 小倉秀夫 at 07:25 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

バランスを欠く著作権法のreplace

 フランス社会党は、先日改正された新著作権法が「コンテンツ・クリエイターの権利とインターネットユーザーの選択の自由とのバランスを欠く法律である」として、来年の国政選挙および大統領選挙で勝利したら、著作権法を再改正すると表明しているようです。

 以前取り上げた海賊党──既にスペインやオーストリアでも政党登録済みのようですし、活動自体は、 米国、フランス、ドイツ、ポーランド、イタリア、ベルギーでも行われているようですが──は、新興の零細政党でしかありませんが、フランス社会党といえば、ミッテラン大統領を輩出した有力政党ですし、ロワイヤル氏が大統領候補になると勝利しかねない勢いですので、こういうところが著作権法の行き過ぎを見直す方向の公約を掲げるようになってくると、世の中はまともな方向に動いていきそうな気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 11:48 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/11/2006

著作権と基本的人権

 著作権は基本的人権か否かという問題にはいろいろな解答があります。

 「著作権は一種の財産権である。財産権は基本的人権の一つである。故に著作権は基本的人権である」というのが一つの考え方です。

 「法律により内容が規定された財産権を享有するということが基本的人権の内容であって、著作権という法律により創設された個別の私権が基本的人権となるのではない」という考え方もあり得るでしょう。

 また、一定の行為を制限する根拠としての著作権に着目すれば、著作権というのは、一種の規制であるということもできるでしょう。

 基本的人権と基本的人権とが衝突する場合にその調整を図る限度で基本的人権は内在的に制約されるという考え方にたてば、ある人にとっては基本的人権を保障するための法的ルールが、別の人にとっては基本的人権を制約する規制にすぎなくなるということは良くあることなので、著作権は基本的人権の一種であるとともに、基本的人権の行使を妨げる規制の一種であるという解答も十分に成り立ち得ます。

 したがって、「著作権は基本的人権である」という議論は、「だから、著作権による保護の範囲を強化する立法・解釈が善であって、狭める立法・解釈は悪である」という結論を導きません。むしろ、著作権と衝突する利害が、経済的自由よりも優越的地位にたつ精神的自由(表現の自由等)である場合には、著作権の適用範囲は必要最小限度にすべきではないかということが立法又は解釈の現場で語られてしかるべきではないかという結論が導かれる可能性があります。

Posted by 小倉秀夫 at 02:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/08/2006

技術革新の成果を市民が享受することへの配慮について

 まねきTV事件の仮処分却下決定は、ネット上でもそこそこ話題になっているようです。

 債務者側は、技術革新の成果を市民が享受することを著作権法が阻害する近時の裁判例の流れが変わることを祈って、準備書面の一節に下記のような文章を織り込んだわけですが、これが功を奏したのであれば、これ以上の幸せはないといったところです。


第5  技術革新の成果を市民が享受することへの配慮について

1 米国の連邦最高裁判所は,技術革新により著作物の新しい利用が可能となった場合に,裁判所がこの可能性を摘み取ることには非常に慎重である。それは,いわゆるベータマックス事件最高裁判決(Sony Corp. v. Universal City Studios, 464 U.S. 417 (1984))をみても明らかであるし(この技術革新の結果、従来在宅しなかったために視聴できなかった者がベータマックスにより情報にアクセスできるようになったという点を積極的に評価している。),結果的に新しい技術の提供者に法的な責任を認めたグロックスター事件最高裁判決(MGM Studios, v. Grokster, Ltd., (04-0480) 545 U.S. ; 125 S.Ct. 2764 (2005))においても,グロックスター社がその提供するソフトウェアを用いて利用者が違法行為を行うことを積極的に誘引したという事実が認定されて初めて法的責任が認められたのであり,逆にいえば,そのような事実認定なしにはグロックスター社に法的責任を認める判決は下されなかった(高裁の判断がまさにそうである。)。

 2 他方,日本の裁判所はこれまで,技術革新の結果著作物の新しい利用が可能となった場合に,裁判所がこの可能性を摘み取る危険を十分に考慮してきたとは言い難い。その結果,一般市民が,専ら自分がいい気分に浸りたいがために酒場や小部屋で歌を歌うことすら音楽著作権管理団体にお金を支払わなければ許されず(平成18年6月3日にエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク主催で行われたシンポジウムにおける社団法人日本音楽著作権協会企画部長北田暢也氏の説明によれば,米国では,カラオケ等での客の歌唱について音楽著作権管理団体は料金を徴収していないとのことである。),テレビ番組の録画用機器を共同住宅の所有者間で共有しコストを下げることも許されないという事態になり,また,テレビ番組の受信・録画機能のあるコンピュータを用いて海外在住者が日本のテレビを視聴することも許されないという事態になりうる危険がある。

 では,技術革新の成果を市民が享受することに配慮が行われてきた米国と,市民の利益への配慮が十分でなく,技術革新の波から著作権者等の言わば既得権者を守ってきたと言える日本とを比較した場合に,米国のクリエイターたちは創作のインセンティブを失った結果,国際競争力のある良質なコンテンツを創作しなくなったかとか,他方,創作のインセンティブを裁判所から十二分に保障してもらった日本のクリエイターたちは国際競争力のある良質なコンテンツを次々と創作するようになったかというと,実際はその正反対である。著作権者等を過大に保護することは,結局,文化の発展に貢献していないと言わざるをえないのではないだろうか。

 本件においても,債権者らは,本件仮処分が認容されないと大変なことになるということを縷々主張していたが,債務者がその主張について具体的な根拠を問いただしても答えず,債務者がその主張に対して具体的に反論をしても再反論をしなかった。それは,「NHKや東京キー局等の『強者』」対「技術革新の成果を生かして消費者に利益をもたらす新たなサービスを提供し始めた『弱者』」という構造において,日本の裁判所が「強者」の保護を続けてくれると信じているからとしか考えられないところである。

 現在までの技術革新の成果を利用して訴外ソニーが実現した「ロケーションフリー」という新たなTVの視聴スタイルは,ハウジングサービスと組み合わされることによって,より多くの日本国民に「TVを通じて知る権利」の実質化に貢献することとなる。そして,そのことによって債権者らの利益が実質的に害されることはない。したがって,米国の連邦最高裁判所であれば,債務者による本件サービスを違法とする判決が下されることは考えがたい。では,日本の裁判所はどうなのだろか。米国の連邦最高裁判所と同様に,技術革新が国民の福祉にもたらす成果を正当に配慮するか否かが本件では問われていると思われる。

Posted by 小倉秀夫 at 12:01 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/05/2006

まねきTV事件地裁決定の肝

 本日の朝日新聞朝刊に掲載されたことでちょっとになっている「まねきTV事件仮処分却下決定」ですが、下記の事情に照らして、「ベースステーションにおいて放送波を受信してデジタル波を受信してデジタル化された放送データを専用モニター又はパソコンに送信するのは、ベースステーションを所有する本件サービスの所有者であり、ベースステーションからの放送データを受信する者も、当該専用モニター又はパソコンを所有する本件サービスの利用者自身であるということができる」と判示したところが肝です(いわゆる「カラオケ法理」の適否に関する応用問題なのです。)

  1.  それに使用される機器の中心をなし、そのままではインターネット回線に送信できない放送波を送信可能なデジタルデータにする役割を果たすベースステーションは、名実ともに利用者が所有するものであり、その余は汎用品であり、本件サービスに特有のものではなく、特別なソフトウェアも使用していないこと、
  2.  1台のベースステーションから送信される放送データを受信できるのはそれに対応する1台の専用モニター又はパソコンに放送データが送信されることは予定されていないこと、
  3.  特定の利用者のベースステーションと他の利用者のベースステーションとは、全く無関係に稼働し、それぞれ独立しており、債務者が保管する複数のベースステーション全体が一体のシステムとして機能しているとは言い難いものであること、
  4.  特定の利用者が所有する1台のベースステーションからは、当該利用者の選択した放送のみが、当該利用者の専用モニター又はパソコンのみに送信されるにすぎず、この点に債務者の関与はないこと、
  5.  利用者によるベースステーションへのアクセスに特別な認証手順を要求するなどして、利用者による放送の視聴を管理することはしていないこと

 ということで、
「ベースステーションによる放送データの送信は、1主体(利用者)から特定の1主体(当該利用者自身)に対してなされたものである」


「ベースステーションによる送信は、不特定又は特定多数の者に対するものとはいえず、これをもって『公衆』に対する送信ということはできない」

「本件サービスにおける個々のベースステーションは、『自動公衆送信装置』には当たらない」
ということになったのです。

 まあ、このサービスって早い話が「ベースステーションのハウジング」なので、「契約者がハウジングされているコンピュータを用いて行う行為の主体は、著作権法の規律の観点からは、ハウジング業者なのか契約者なのか」という問題に帰すると思っていたりはします(録画ネットの場合は、高裁の事実認定のもとでは、ハウジングではなく、ホスティングです。)。

【追伸】決定書がアップロードされたようです。

Posted by 小倉秀夫 at 05:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

08/04/2006

午後5時の吉報

 こちらの事件につき、東京地裁民事第47部より、本日午後5時付けで却下決定を頂きました。

 まずは一安心です。

【追伸】一部メディアで紹介されたようです。

Posted by 小倉秀夫 at 07:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

むしろ、有料音楽配信の受信可能なWMPのOSX版を作らせるのが先では?

 私には、フランスの国会議員の感覚というのが理解できないことがあります。

 「iTunes Music Store」でダウンロードした楽曲はiPod以外の携帯型ハードディスクプレイヤーでは視聴できないとしても、各携帯型ハードディスクプレイヤーに対応した音楽配信サービスが存在すれば(そして、収録楽曲の殆どが共通であれば)「携帯型ハードディスクプレイヤーの機種の変更」問題以外の問題は、発生しないように思います。

 これに対し、Apple社がフランス国内での「iTunes Music Store」サービスを取りやめることとした場合、フランス国内では、WindowsOSユーザー以外はPC型の音楽配信サービスを正規に受けられなくなります。その方が消費者の選択肢は減少しそうです(有料音楽配信を受ける機能をMac版やLinux版のWindows Media Playerにも実装させるのが先なのではないかと思います。)。

 

Posted by 小倉秀夫 at 01:55 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

08/03/2006

著作物等の利活用に資する商品等の提供と著作権等の侵害

  以前お話しした「2006年度 秋期弁護士研修講座」の件ですが、以下の題で講演させて頂くことにしました。

「IT社会における著作権問題」
(副題)
 著作物等の利活用に資する商品等の提供と著作権等の侵害

Posted by 小倉秀夫 at 04:29 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/02/2006

プロ野球選手のパブリシティについての独占的許諾権

 プロ野球選手のパブリシティ権に関する判決が昨日東京地裁で下りたわけですが、氏名に関する権利にせよ、肖像に関する権利にせよ、人格権的な要素があるが故に法律の定めなくして排他的な権利が認められているものについて、独占的な許諾権を契約で設定できるという考え方には違和感があります。

 氏名や肖像についても商業的な使用に関する権利については、一身専属性のある人格権ではなく、譲渡その他の処分が可能な財産権と解するのだとする考え方もあり得るかもしれないのですが、これらを財産権と解するのであれば、法律による明文の定めが必要なのではないかとの疑問を捨てきることはできません(あるいは、温泉権等の「慣習法による物権」の可否の論点の類推として、氏名・肖像の商業的な利用について「慣習法による無体財産権」の可否みたいなことを考えるのかもしれないですが(判決文では、過去の運用実績を縷々認定していますし)。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:07 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)