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02/25/2007

おふくろさん騒動

 JASRACに信託譲渡された音楽著作物についていえば、特定の歌手がこれを歌唱することを拒む権利は作詞家にも作曲家にもありません。作詞家がその歌手に対してどんなに憤っていてもです。著作権等の集中管理というのはそういうものです。気に入らない歌手に歌唱されたというだけでは、「名誉又は声望を害する」とまではさすがに言えませんから、著作者人格権の問題も発生しません。

 ですから、少なくとも「語り」の部分を加えずに「おふくろさん」を森進一が唄う分には、川内康範さんはこれを止めさせることは法的にはできません(力関係を利用して森進一をパージすることはできるかも知れませんが、それはそれで法的に問題が発生しそうです。)。

 なお、「歌唱パート」の前に語りを加えることが一般的に歌詞の同一性保持権を侵害するかのような説明がなされていることもあるようですが、それはいかがなものかなあと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 12:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

More Fiction Than Fact

 カナダのオタワ大学法学部でインターネット法と電子商取引法を教えているMichael Geist教授が、その開設ブログにおいて、「Movie Piracy Claims More Fiction Than Fact」というエントリーを立ち上げています。

 要するに、the Motion Picture Association of America (MPAA) から、「カナダは、映画の海賊版DVDの世界的な供給源になっているので、法改正しなさい」と要求されたのに対し、「それは、事実というより、フィクションだ」と怒っているということです。奇遇なことに、日本もまた「illegal camcording」(映画館で上映されている映画を、小型ビデオカメラを用いて録画して、それを販売目的でDVDにコピーすること)対策のために著作権法の改正をしようとしているらしいので、この点に関するGeist教授の議論はとても参考になります。

 例えば、

In fact, AT&T Labs, which conducted the last major public study on movie piracy in 2003, concluded that 77 percent of pirated movies actually originate from industry insiders and advance screener copies provided to movie reviewers.
なんていう指摘もあるわけで、日本でもDVDリリース前の海賊版DVDの出所が本当に「illegal camcording」なのかは、独立した調査機関等に調査してもらった方がよいのではないかと思ったりします。

 それにしても、著作権の保護を強化せよと迫る団体のやることというのは、どこの国でも似ているものですね。

Posted by 小倉秀夫 at 01:55 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/21/2007

WinnyシンポとAntinny

 Winnyシンポに出席してもう一つ感じたことは、Antinnyウィルスによる情報流出事故に関して、金子さんは他に責任を転嫁するような発言はしない方が良いのではないかということです。

 実証実験のためとはいえ、不完全な危険なソフトウェアを広く公開してしまったことがこれらの事故に繋がっているわけですから、法的な責任の有無はともかくとして、道義的な責任の一端は感じてもらわないと、却って好感度は落ちていくのではないかと思いました(といいますか、あの部分の説明は、私は不快に感じました。)。さらに言えば、今回の判決自体Antinnyウィルスについては触れていないのですから、そもそも今回のWinnyシンポで金子さん自らAntinnyウィルスの話をする必要があったのかすら疑問に思いました。

 どうしてもAntinnyの話をしたいのであれば、公開当初そのような脆弱性には気が付かなかったこと並びに刑事裁判の関係で現時点では対策がとれないことを少なくとも道義的に謝罪した上で、Antinny対策のバグフィックスが終了するまでの間、Winnyを使用しないように呼びかけるべきだったのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 05:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/20/2007

ひょっとして、「法務」だけ浮いていますか?

 さきほどTBSのお昼の番組のスタッフの方から、森進一の件でインタビューをさせてもらいたいとの電話がありました。

 「ホームページを見て」との話だったので、「私はまだその件については何も書いていませんが?」と返答したところ、「著作権にお詳しい先生を捜していた」とのことだったので、「そこまで調べたのであれば、私がTBSと訴訟していることもご存じですよね」と言いましたら、「知りませんでした」と言っていました。

 その前は、読売テレビの方から、著作権を保護しすぎることがIT技術の発展の妨げになることにつき電話インタビューを求められましたので、「その通りである」と答えておきました。

 ところで、テレビ局では、選撮見録やまねきTVについて訴訟を提起することやその後の訴訟進行に関して、社内的なアナウンスをちゃんとしていないのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 05:16 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/19/2007

Winnyシンポ

 たまたま選撮見録事件の控訴審(高裁での口頭弁論が終結し、判決言渡しが6月14日に指定されました。)の関係等で大阪に行く機会があったので、2月17日に大阪弁護士会で行われたWinnyシンポジウムに出席してきました。

 そこには、岡村先生や奥村先生落合先生町村先生等の「いつもの顔」がありました。

 Winny事件地裁判決については、既に東大とSofticとで研究発表していることもあり、このシンポジウムには参加しないような法学研究者や法律実務家の感想というのも私は聞いていました。そういう観点から見ると、現状の方針では高裁で逆転無罪を勝ち取るには厳しいのではないかという感想を持ちました。

 まず、Winnyにおいて「キャッシュ」といわれている仕組みは何のために用意されたのかという質問を、両研究会において受けたわけですが、実際、第1放流者のIPアドレスを隠蔽する必要性というのが「Winny」における「ファイル共有」には見いだしにくいと思います。もちろん、金子さんの本には「プライバシー保護」というお題目を掲げているし、壇先生は「IPアドレスもプライバシーの対象でしょう」とはおっしゃるのですが、その漠然とした「Winnyネットワークに放流するファイルが違法性を欠くものであったとしても第1放流者がIPアドレスを知られたくない」という希望に叶えることが、第1放流者のIPアドレスを隠蔽することにより著作権侵害ファイル等の違法ファイルの放流を助長してしまうというデメリットを凌駕するほどの社会的な利益として認めてもらえるのかというと、少なくとも日本の高等裁判所、特に刑事部では難しいのではないかという気がしています。

 また、Winny2において、Winny1のそれよりは機能的に劣るものであるとはいえ、ファイル共有機能を付加した理由というのも、説得的に説明できていないなあと思いました。電子掲示板の管理に必要な「ネットワーク上から特定の情報を消去する機能」が完成したのでそれをファイル共有部分にも応用してみたというのであればそれを全面に押し出せばいいわけですが、そうでないのであれば、既にWinny1で実験を完了しているはずのファイル共有機能をWinny2に実装した動機を「実験目的」という言葉で押し切るのは難しいのではないかと思いました。

Posted by 小倉秀夫 at 12:25 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (2)

02/18/2007

貧せざるが貪す

 「仮処分の申請が認められたので本訴に移行する」ということはよくある(ex.ファイルローグ事件)のですが、「仮処分申請が最高裁でも認められなかったため本訴に移行する」ということは聞いたことがありません。もちろん、保全の必要性が認められず申立てが却下されたというのならばまだわからなくはないのですが、被保全権利がないとして申立てが却下されたにもかかわらず同一の事案に関して本案訴訟を提起する合理的理由というのは、通常ありません。

 日経新聞によれば、

フジテレビジョンなど民放キー局5社とNHKは、「まねきTV」の名称でインターネットによるテレビ番組の転送事業を手がける永野商店(東京・文京、永野周平社長)を相手取り、サービス停止を求める民事訴訟を3月にも東京地裁に起こす方針を固めた。「ソフトただ乗りを見過ごさない」(民放幹部)姿勢を明確にする狙い。最高裁への仮処分の申請が認められなかったため、本訴に移行する。
とのことです。

 もちろん、フジテレビジョンなど民放キー局5社とNHKには豊富な資金があり、たくさんの弁護士に多額の報酬を支払って訴訟遂行を委任することができます。これに対し、永野商店は、これらキー局と比べると遥かにちっぽけな会社であり、キー局との訴訟に応対するために捻出できる弁護士費用等はキー局らのそれを遥かに下回ります。すると、地裁から数えて第4審目の審理に応対するには、永野商店が無理を重ねて弁護士費用を調達するか、弁護士がただ同然で訴訟遂行を引き受けるより他ありません。まあ、この調子だと、本案訴訟において、地裁、高裁と永野商店が勝ち進んでも、キー局側は控訴、上告と繰り返すのでしょう。途中で、永野商店がその訴訟費用の負担に音を上げて商売を畳んでくれればキー局側は事実上勝利したのと同様の効果を得ることができますし、永野商店の訴訟代理人がボランティア同然での訴訟遂行に音を上げて辞任してくれれば、被告本人訴訟となりますから、逆転勝訴の可能性も見えてくる。ひょっとしたらその程度の狙いなのかも知れませんし、あるいは、両当事者の資本力の差や社会的地位の差を斟酌して結論を決めるタイプの裁判官にあたることにかけているだけなのかも知れません。

Posted by 小倉秀夫 at 11:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/17/2007

デサフィナード事件

 大阪地裁平成19年1月30日〔デサフィナード事件〕の判例解説を書いているところなのですが、大阪地裁民事21部らしいぐだぐだぶりにクラクラ来ているところです。

 この事件、一般には「ピアノの撤去まで認められた」という点が注目されているようですが、その前段階のカラオケ法理の適用の部分からぐだぐだです。店舗側主催のライブやBGMとしてのピアノ生演奏についてまでご丁寧にカラオケ法理を適用している(これは「手足」論でいいでしょう?)上に、演奏者等の企画・主催にかかるライブについては主催者と店舗側の共同侵害行為と認定し、結婚披露宴等の貸切営業については演奏主体性を認めないという混乱ぶりです。

 ライブの場合に、JASRACの管理著作物が演奏曲目にJASRACの管理著作物が入っていないかどうか、入っている場合にその演奏者がJASRACと契約を結んでいるかを事前にチェックする義務を仮にライブ会場提供者に認めるとしても、そのチェックを怠った会場提供者はせいぜい幇助者としての共同不法行為責任を負えば足りるのであって、著作権侵害行為を主催者と共同して行っているとまで見る必要があるのかというととても疑問です。

 第1審の主文だと、演奏者側の企画・主催にかかるライブのためであっても楽器類の店舗内への搬入が禁止されるので、そこでJASRACの管理著作物が演奏されなくとも、また、演奏者側がJASRACの管理著作物を演奏する場合には利用料をきちんと支払う人々であったとしても、ライブのために楽器類を搬入した段階で間接強制金の支払い義務が生じます。

 この事件の被告が開設している電子掲示板の記載によると、

地元の社会人で構成されているアマチュアバンドの方から、 デサフィナードにライブの申し込みがありました。 演奏曲をお伺いしたところ、JASRACの管理楽曲が入っているようなので、JASRACに許諾を得るようお願いしました。 このライブはノーチャージです。 もし、営業時間中でのライブに問題があるのであればライブ当日は臨時休業をし、演奏場所を無料で提供する事も提案しました。 しかし、残念ながらJASRACから許諾は得られず、2月15日のライブは中止となりました。
とのことですが、この主文だとこういう意地悪が行えてしまうのですね(デサフィナードが場所を無料で提供しても、バンドの側がチケットを販売すれば、差止命令に違反したとして間接強制金が発生します。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

02/09/2007

法律より契約──「監督に著作権」を巡って

 「監督に著作権を 大島渚監督ら」とのことですが、著作権法は、完成した映画の著作物の著作権を完成と同時に映画製作者から映画監督に譲渡する旨の契約を、映画製作者と映画監督の間で締結することまで禁止しているわけではありません。したがって、監督が映画の著作物についての著作権を欲しいのであれば、著作権法の改正を訴えるよりは、契約ルールの変更を求める方が手っ取り早いです。

 もちろん、その場合、映画製作者としては、その映画の製作にあたって投資した費用に見合う対価を求めることになりますが、「経済的な負担は映画製作者に!経済的権益は映画監督に!」なんて虫のよい話は普通は実現しないので仕方がないといえます(仮に、著作権法を改正して映画の著作物の著作権は監督に原始的に帰属するということにしても、映画製作者がその費用を負担するというルールが変わらなければ、完成した映画の著作物の著作権を当然に映画製作者に譲渡する旨の条項が入らない限り、映画製作者は映画監督と映画製作契約を結ばなくなるだけなのではないかと思いますし。

Posted by 小倉秀夫 at 01:21 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

02/07/2007

Double Apple 訴訟に見られる抜本的和解とYouTube問題

 The Beatlesの所属レーベルとして知られるApples Corpsと、MacintoshやiPodでお馴染みのApple Inc.との間の商標を巡る紛争が和解により解決したそうです。

新しい契約ではApple Inc.がAppleという登録商標のすべての権利を所有し、Apple Corpsに対してその商標の継続的な使用をライセンス供与することになる。

 商標の主たる機能が出所表示機能であることを考えると、最初にその標章を商標として登録した人・企業にいつまでも商標権が帰属し続けるより、その標章から最もその出所が想起される人・企業に商標権が帰属する方が好ましいので、商標権移転の対価にもよるのでしょうが、基本的にはいい解決だと思います。

 また、日本の著作権系権利者団体の代表とYouTubeのCEOさんらとの間の話し合いも行われたそうです。

 「紳士的な対応をしてくれた、と認識している。YouTubeも著作権を重視しており、Googleの協力を得て著作権侵害を防止する技術を開発するなど、問題解決に向けて努力すると言っていた」——植井氏は、YouTube側の対応をこう評価する。

 著作隣接権が著作物の流布に貢献した人・企業にインセンティブを与えて著作物の流布を活性化させることで文化の発展を図るために認められていることを考えると、著作物の流布に最も貢献できる人・企業に著作隣接権が帰属することが好ましいのだから、J-Popについての実演家及びレコード製作者としての著作隣接権としての送信可能化権並びにプロモーションビデオについての著作権としての自動公衆送信権(送信可能化権を含む。)をGoogle社に買い取ってもらった上で、実演家及びレコード製作者の意向で音楽配信サービスに提供する場合はGoogle社が無償で利用許諾する方式にした方がよいのではないかという気がしなくもありません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/01/2007

気分転換で「星の王子様」

 桜井哲夫「占領下パリの思想家たち──収容所と亡命の時代」156頁によると、

1942年6月、コンスエロとの関係に頭を悩ませ、ブルトンの攻撃に困惑し、肉体的にも精神的にも疲れ切っていたサン=テグジュペリに、編集者のエリザベス・レイナルが、気分転換の仕事として子供向けの本を書かないかと誘った
ところ、これに応じてサン=テグジュペリが書いたのが、かの有名な「星の王子様」であるとのことです(注1)

 優れた作家は、自分の曾孫が働かずに安穏と生活できることを保障してあげなくとも、「気分転換」で、これだけの素敵な作品を作り上げることができるようです。

注1

このころ、サン=テグジュペリはアメリカ亡命中(フランスはヴィシー政権下)。コンスエロは、サン=テグジュペリの3番目の妻。アンドレ・ブルトンは、フランスの詩人、文学者、シュルレアリスト。桜井・前掲141頁によれば、ブルトンは、コンスエロに一目惚れしたらしく、ヴィシー政府の国民議会に選出された(ただし、本人は就任しない旨を宣言)という1年前の件を蒸し返してこのころサン=テグジュペリを攻撃中。っていいますか、自国が外国(ドイツ)軍に占領されて傀儡政権を作らされ、さあこれからレジスタンスだ!というときにも、フランス人は、男女問題に手を抜かなすぎです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)