デサフィナード事件
大阪地裁平成19年1月30日〔デサフィナード事件〕の判例解説を書いているところなのですが、大阪地裁民事21部らしいぐだぐだぶりにクラクラ来ているところです。
この事件、一般には「ピアノの撤去まで認められた」という点が注目されているようですが、その前段階のカラオケ法理の適用の部分からぐだぐだです。店舗側主催のライブやBGMとしてのピアノ生演奏についてまでご丁寧にカラオケ法理を適用している(これは「手足」論でいいでしょう?)上に、演奏者等の企画・主催にかかるライブについては主催者と店舗側の共同侵害行為と認定し、結婚披露宴等の貸切営業については演奏主体性を認めないという混乱ぶりです。
ライブの場合に、JASRACの管理著作物が演奏曲目にJASRACの管理著作物が入っていないかどうか、入っている場合にその演奏者がJASRACと契約を結んでいるかを事前にチェックする義務を仮にライブ会場提供者に認めるとしても、そのチェックを怠った会場提供者はせいぜい幇助者としての共同不法行為責任を負えば足りるのであって、著作権侵害行為を主催者と共同して行っているとまで見る必要があるのかというととても疑問です。
第1審の主文だと、演奏者側の企画・主催にかかるライブのためであっても楽器類の店舗内への搬入が禁止されるので、そこでJASRACの管理著作物が演奏されなくとも、また、演奏者側がJASRACの管理著作物を演奏する場合には利用料をきちんと支払う人々であったとしても、ライブのために楽器類を搬入した段階で間接強制金の支払い義務が生じます。
この事件の被告が開設している電子掲示板の記載によると、
地元の社会人で構成されているアマチュアバンドの方から、とのことですが、この主文だとこういう意地悪が行えてしまうのですね(デサフィナードが場所を無料で提供しても、バンドの側がチケットを販売すれば、差止命令に違反したとして間接強制金が発生します。)。
デサフィナードにライブの申し込みがありました。
演奏曲をお伺いしたところ、JASRACの管理楽曲が入っているようなので、JASRACに許諾を得るようお願いしました。
このライブはノーチャージです。
もし、営業時間中でのライブに問題があるのであればライブ当日は臨時休業をし、演奏場所を無料で提供する事も提案しました。
しかし、残念ながらJASRACから許諾は得られず、2月15日のライブは中止となりました。
Posted by 小倉秀夫 at 02:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Commentaires
調べでググってたら2年ぶりに到着しましたw
あらら、こちら自分にレス入ってたですね。とおりすがり様、長期に気づかず失礼しました(って見てないか(笑。いやぁ~今読み返しても理にかなった発言だったんじゃないですかね? 公取委も大変ですよ。排除命令拒否だつって普通の日本語できないんとこ相手しないとならないんだもん。
Rédigé par: コマプ墨田 | 29 mars 2009, 23:41:29
>>コマプさま
お怒りはごもっともですが、著作権等管理事業法に独占禁止法を持ち込んで、自由競争を促すほど、使用料規程の料金は上昇して、店や利用者側が苦境に陥るのではないのですか?
スーパーでの買物と違って、著作権等管理事業のお客は最終消費者である利用者ではなく著作権者ですから。JASRACと契約している服部克也の楽曲は高いから、代わりにイーライセンスと契約している△△の楽曲を使うということはなかなかできませんしね。
消費者圧力は、JASRACなどの著作権等管理事業者ではなく、どの事業者と委託契約を締結するかの選択権を持つ著作権者(作詞家、作曲家、音楽出版社など)に向けた方が効果的だと思いますよ。
Rédigé par: とおりすがり | 1 sept. 2008, 02:14:00
JASRACがカラオケ法理をガイドラインに生演奏営業の裁判を起こすというのは、次の性質を含むプロセスとして話が展開するのは必然だと思うんですね。↓
カラオケでの支払い義務は、これが生演奏にあたるというアクロバットな論理展開の結果、生演奏使用料規程をあてはめて、高額支払いを導くものです。これは、既存の生演奏の使用料規程の正当性に異論が起こり難い論争の性質から、法廷でこの要点は問題視されなかったと推測します。もし、現状零細事業者を苦しめる高額請求に、このカラオケ判例の成果を自明とした訴訟や裁判が進められる場合、法廷がカラオケ裁判で本質を素通りしてしまった要点「料金算定が本来損害賠償の理屈に見合って妥当かどうか」という議論を、本家フィールド内のあらゆる問題をさらって議論する必要が出てくるのです。当時のカラオケ裁判では、著作権違反に焦点が在ったために、素通りしてしまった要点を引き戻すということですね。デサフィナード裁判判決後当事者BBSで勃発した、独占禁止法+著作権等管理事業法に関わる議論は、このことにおいて必然だと思います。
そもそも、「百万単位での零細業者への請求が社会モラルおよび市場経済に的確な内容だと出来る使用料規程が、いつ、どのように、なぜ、成立しているか」の方が問題の本質なのです。こういう利用者にとって異常に不利な契約内容を利用者自身が同意するはずは本来ありませんでしょう。利用者がそれに言われるがまま従わざるを得ない法律上の道理(それがいかなるものなのか)こそが追求されるべきなのです。
Rédigé par: コマプ墨田 | 20 févr. 2007, 19:50:47