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03/05/2007

「森進一にだけ唄わせるな」というのは無理

 歌手、森進一(59)が代表作「おふくろさん」のイントロ前に無断でせりふを足していた問題で、作詞家の川内康範氏(87)が4日までに、楽曲の著作権を管理するJASRAC(日本音楽著作権協会)に、森が川内氏の作品を歌唱できなくするよう訴えていたことが分かった。
とのニュースが報じられています。

 しかし、今日JASRACは、演奏権に関していえば、奏者との間で個別の演奏ごとに許諾契約を締結するという方式ではなく、放送局や会場経営者との間で包括的利用許諾契約を締結するという方式を多用している以上、既に包括的利用許諾を締結済みのコンサートホール等に対して「森進一に『おふくろさん』を歌唱させるな」という要求は法的にはできそうにありません。

 今後のことにしても、JASRACが「場」に対する「包括的利用許諾」という枠組みを放棄しない限り、「森進一」という個人に限定して「おふくろさん」という特定の管理著作物の歌唱を許諾しないということはできそうにないのですが、如何に川内康範先生が大御所とはいえ、川内康範先生のために、JASRACが長年苦労して築きあげてきた収入安定化のための手法を放棄するとは考えにくいところです(「要求をのまなければ自分の作品を全部引き揚げるぞ」と要求されても、JASRACとしては飲めない相談ではないかという気がします。)。

 川内康範先生がどうしても「おふくろさん」を森進一に唄わせたくないのであれば、「おふくろさん」をJASRACの管理著作物から外してもらうか、川内先生自身が著作者として、「心の卑しい森進一が『おふくろさん』を唄うことは、『おふくろさん』の作詞家である自分の名誉または声望を害する方法での利用にあたる」として差止請求を起こすしかないのではないかと思うのですが、ではそうすることで川内先生の要求が法的に認められる可能性がどの程度あるのかといえば、あまり無いかなあとは思います。

Posted by 小倉秀夫 at 07:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Voici les sites qui parlent de: 「森進一にだけ唄わせるな」というのは無理:

» もし、川内康範が戦略的に振る舞っていたとしたら…… de IN MY ROOM...
森進一の『おふくろさん』を巡る騒動は、さっぱり訳が分からない。そもそも法的に議論するようなものなのか。狭い世界で「先生」などと持ち上げられている人間がその権威をタテにし... Lire la suite

Notifié: 6 mars 2007, 13:49:28

» 森進一の『おふくろさん』歌唱禁止騒動の波紋拡がる これからは『かあさんの唄』をアレンジでして歌うしかないのだろうか… de おもしろ芸能ニュース!クチコミ情報局
だからアタシは何十年も前からいってたのよ、人の歌詞に勝手にせりふをつけくわえて歌... Lire la suite

Notifié: 13 mars 2007, 13:17:21

Commentaires

法律の範囲内でいえば、「心を大きく持て」「謙虚になれ」という法はないですね:-)
それにしても「(そんなに大事な歌なのに)30年も気づかなかったの?」というのが率直な感想。

Rédigé par: mohno | 6 mars 2007, 12:14:33

 法律を超えた感想でいえば、森進一の「心の卑しさ」よりも川内康範氏の「心の小ささ」と「傲慢さ」を強く感じてしまいます。

Rédigé par: 小倉秀夫 | 6 mars 2007, 08:41:28

それにしても、川内氏も、ものすごいことを言いますね。
「おふくろさん」は歌わないけれど、うちの上司^H^H某社員のカラオケは間違いなく同一性保持権の侵害になるかと・・・(いやぁ、匿名でコメントしたいときもあるものです^_^;)

Rédigé par: mohno | 6 mars 2007, 03:08:07

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