時事の事件と歌詞の引用
先日、北海道新聞の記者さんから、この記事の件で、電話でインタビューを受けました。正確に伝わったかわからないので、法的な面についてメモランダム的に書いてみることにします。
まず、「歌詞」だからといって「引用」の対象にならないわけではありません。著作権法第32条の規定は、適法な引用の客体から「歌詞」を除外していないからです。加戸守行「著作権法逐条講義(三訂新版)」234頁には「報道の材料として著作物を引っ張ってくる場合」を、その引用が「公正な慣行に合致する場合」の例として掲げていますから、「報道の材料として」歌詞の一部を引用することはおそらく適法なのでしょう(たとえば、松本零士対槇原槇原敬之との間での「盗作騒動」の関係で報道各社は槇原さんの作詞した歌詞を普通に引用していたことは、記憶に新しいかと思います。)。
また、著作権法41条は、
写真、映画、放送その他の方法によって時事の事件を報道する場合は、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴って利用することができる。
と定めています。加戸・前掲267頁は、「その他の方法には、新聞・雑誌における文章記事報道や有線放送におけるニュース報道などがございましょう」とありますから、大元の北海道新聞の記事報道がこれに当たることは明らかですが、そのウェブ版についても
、「有線放送におけるニュース報道」と似たようなものですから、「その他の方法」に含まれるというべきでしょう。
この記事では、報道された「時事の事件」というのは幌南小学校の(最後の)入学式であって、「Tomorrow(トゥモロー)」という曲が歌われたということもこの「事件」を構成しているということができるように思います(北海道新聞の記者さんのお話を窺っている限りにおいては、その場面でそのような歌詞を含む曲が歌われたということ自体が、記事で伝えようとしていることとの関係で重要な意味を持つとのことでしたし。)。
まあ、JASRACがそういう理論構成を認めないのはその職責上仕方がないとして(41条にあたるかどうかは異論のあり得る話ですし。)、JASRACと法廷闘争をしてでも戦わず、あっさり歌詞の引用部分をウェブ版では削除してしまった北海道新聞は情けないなあとは思ったりします。JASRAC との法廷闘争すら尻込みをする人たちが権力と戦う云々と大きなことを言ってみてもなあとの思いは拭い去れないのです。
Posted by 小倉秀夫 at 12:41 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink | Commentaires (0) | TrackBack (1)