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04/12/2007

「Theo(テオ)」のグランドオープン

 「 弁護士専用貸しオフィス「Theo(テオ)」をグランドオープン」とのことです。

 

「Theo(テオ)」は、2007年10月の、法科大学院を卒業し司法修習を終了した弁護士が大量に新規参入する時代を見据えて開始するサービスです。
とのことなのですが、家賃を払えるのでしょうか。司法修習を終了したばかりの弁護士って、中坊公平・元弁護士のように親御さんから優良な顧問先を回してもらえる等のごく恵まれた方を除くと、国選弁護とか当番弁護とかの報酬プラスα程度しか個人事件収入がないものなのですが。かといって、コクヨもトールも弁護士ではないので、事件斡旋をすると、弁護士法に違反してしまいますし。

 それはともかく、

会議室や法律書を集めた図書スペースを備えている他、来客者への対応や電話取次ぎ、ホームページ作成や事務補助など各種サービスも提供し、弁護士業務を強力にサポートします。
との点ですが、著作権侵害にあたるのではないかと人ごとながら心配してしまいます。

 図書スペースの蔵書を各弁護士の専用スペースへ一時的に持ち込むことを認めると、書籍の「貸与」とされる危険があります。この場合、「Theo」は図書スペースがあることを売りにして賃借人を集めていますので、この書籍の貸与は営利目的とされる可能性大です。

 かといって、図書スペースにコピー機を設置して入居弁護士にセルフサービスで必要部分をコピーさせるとなると、いわゆるカラオケ法理によって、コピー機の設置者であるコクヨが複製の主体とされる危険があります。この場合、複製の主体と複製物の使用の主体が異なるとして、私的使用目的の抗弁(著作権法30条1項)が成り立たない可能性があります。かといって、「Theo」は図書スペースが著作権法31条1項にいう「図書館その他の施設で政令で定めるもの」にあたらないことは明らかです。

 すると、許されていることは、この「図書スペース」内での書籍の閲覧のみを可能とすること及び入居弁護士が独自に複製機器(デジカメやハンディスキャナ等)を図書スペースに持ち込んで文献の必要部分をコピーすることくらいということになります。それはそれで結構不便そうです。

 漫画業界の主観的利益に配慮して書籍・雑誌をも貸与権の対象としてしまった著作権法の改正の弊害が、こんなところにも現れているといえそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 04:43 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Commentaires

構成員が頻繁に変わるわけでもないのでしょうから、きっと共有にするんじゃないですか?

それはさておき、大手法律事務所でも、図書室の本は誰でも(共有者であるパートナーはともかく、単なるアソシエイトでも)借りることができますが、そっちの貸与権との関係はどうなっているんでしょうか。

Rédigé par: 留学中 | 26 avr. 2007, 20:44:17

 著作権法の解説書を見ると、企業内における複製には著作権法30条1項の適用がないとするのが多数説ですが、それは文言解釈上無理があるし、現行法制定時の議論を見ても難しいのではないかと思います。もちろん、企業内における複製に30条1項を適用しなかった古い裁判例が1つあるのですが、それは設計図に関する特殊なケースです。
 法律事務所における文献のコピーの場合、それ自体を裁判所に提出するためだけではなく、特定の論点に関する文献を1つの手控え記録にまとめるために行われる場合が少なからずありますが、これを42条で処理するのは文言的に苦しいでしょう。また、企業内における複製だって、集中処理機構で対処できるものはごく一部です(例えば、ある程度知名度のある会社の総務部は、主要なニュース番組を録画して自社に関してどのような報道がなされているのかを担当者がチェックしていると思いますが、これは30条1項でしか正当化できないでしょう。)。
 また、研究者についても、自分の手持ち文献について、必要な部分のみをひとまとめにするための複製はやっているでしょうし、最近では、OCRでの取り込みとしての複製をやっている人も少なくないでしょう。

Rédigé par: 小倉秀夫 | 15 avr. 2007, 01:11:39

ご回答ありがとうございます。
法律事務所における複写が30条1項の適用を受けるという解釈をされている方がどなたで、どこでそのようなことを書かれているか、出来ましたらお教えいただければと思います。

私が知っている範囲では、田村善之教授の「著作権法概説[第2版]」の200ページで企業内の複写でも、30条の範囲内のものがあると書かれていました。
私は、企業内での複写問題から、著作権に取り組むようになりました。
色々と文献を調べたところ、企業内での複写は原則として30条として認められことは無いというのが、一般的な解釈のようですが、この記述を読んで、私はずいぶん力づけられました。

田村先生以外で、同じようなことを書かれている方がいらっしゃるのであれば、是非ともお教えください。

また、職業的研究者が大学の研究者であれば、大学図書館を通じて複写を行うのが大半だと思いますので、やはり30条の範囲で行うのではなくて、31条ではないかと思います。
そして、企業内の研究者の複写は、論文を書くためとは言え、30条とは認められません。認められるのであれば、複写権センター、学著協、JCLS等の集中処理機構と企業が契約する必要は無くなります。(そうであれば、本当にうれしいのですが)
現実問題として、企業の中での複写は30条として認められる可能性は非常に低いかと思います。(そんな中で、今回の法改正で、特許申請・薬事申請に関する複写が権利制限として認められたことは、非常に意義があると思いますが。)

私も30条の範囲が広く解釈されることを望んでおりますが、文化審議会での議論などを見ても、30条の範囲を出来る限り制限して解釈する議論がまかり通っていますし、30条をより限定的に解釈する方向に進んでいるように思います。私はそれを望んでいませんが。

Rédigé par: 末廣恒夫 | 14 avr. 2007, 22:27:52

 私は、30条1項柱書を文理解釈しますので、複製物を「限られた範囲内」で使用することを目的としている限りにおいて、その複製が通常の業務活動の一環としてなされたとしても、30条1項の適用を受けられると解しております。著作権法の解説書を見ると、会社等における内部的利用のための複製行為は30条1項の適用を受けないとする方が多いようですが、それでも法律事務所における文献コピー等は30条1項の適用を受けるとするものがあったと記憶しています(法律事務所だけ特別に扱う理由はないと思いますし、業務活動の一環として行われる複製は30条1項の適用を受けられないというのであれば、職業的研究者が学術論文を執筆する際の資料として文献を複製する場合も30条1項の適用を受けられないとすべきだと思うのですが、そこまで断言する著作権研究者はおられないようです。)。

Rédigé par: 小倉秀夫 | 14 avr. 2007, 12:19:28

弁護士の方のコピーは第30条ではなくて、第42条の「裁判手続等における複製」ではないでしょうか。
弁護士の仕事(業務)としてのコピーなので、「私的使用のための複製」では無いと思います。
ですので、複製機器を持ち込んでのコピーも、第42条の「裁判手続等における複製」の範囲内に限られるので、相当限定された範囲しかコピー出来ないと思います。


Rédigé par: 末廣恒夫 | 13 avr. 2007, 01:02:58

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