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05/02/2007

アソシエイト弁護士による蔵書の持ち帰りと貸与権侵害

 「「Theo(テオ)」のグランドオープン」というエントリーに対し、「大手法律事務所でも、図書室の本は誰でも(共有者であるパートナーはともかく、単なるアソシエイトでも)借りることができますが、そっちの貸与権との関係はどうなっているんでしょうか。」という質問が寄せられました。

 図書室の書籍を事務所外に持ち出すことができるシステムの場合、パートナー弁護士らで構成する共有者団ないし弁護士法人がアソシエイトに対して書籍を貸与したということになるのでしょう。これが「貸与権侵害」となるかは、このことにより著作物をその複製物の貸与により公衆に提供したといえるかにまず係ってきます(著作権法26条の3)。

 パートナー弁護士らないし弁護士法人にとってアソシエイト弁護士は「特定の者」にあたると言って差し支えないでしょう。ただし、著作権法上の「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれます(2条5項)。ここで問題が起こります。もちろん、「何人から『多数の者』にあたるのか」ということも問題です。それ以上に問題なのは、「多数の者」といえるだけの人数のアソシエイト弁護士が特定の書籍を借り受けられるようになっていたが、実際にその書籍を借りてそこに収録されている著作物を知覚した場合に、その著作物は公衆(≒「多数の者」)に提供されたといえるのか、ということです。というのも、著作権法はもともと、映画の著作物以外の著作物について、複製物の貸与を禁止することを予定としていなかったため、「貸与」が絡むと条文がどうしても整合性を失う傾向があるからです(何しろ、原作品又は少部数の複製物を公衆に貸与することで著作物を流布する場合は、貸与の誘因の過程で展示する等の特段の事情がない限り、4条を文理解釈すると、著作物は「公表」の要件を満たさないわけですから。)。

 仮に、「多数の者」といえるだけの人数のアソシエイト弁護士が特定の書籍を借り受けられるようになっていたときには「著作物をその複製物の貸与により公衆に提供した」といえるとした場合、弁護士法人等は、その貸与を営利目的で行ったといえるのかが問題となります(38条4項)。プロボノではない弁護士業務をアソシエイトに手伝わせる過程で必要な文献を読了させるために特定の書籍をアソシエイト弁護士に貸与する場合、弁護士法人等の側に営利目的がないということは厳しいのではないかという気がします。

 私のところのように、弁護士9名(うち2人は法科大学院の教授と助教授で、教育活動にほぼ専念)、司法書士1名、弁理士1名の事務所では、「公衆」要件を明らかに満たさないのでよいのですが、100人を超えるような大規模事務所では、アソシエイトに蔵書を貸し出しすることも法的なリスクを伴うことになるので、大変ですね。

Posted by 小倉秀夫 at 01:44 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Commentaires

やはり、そのリスクは否定できないですよね。
図書館内でのみ閲覧可能にしたら仕事しづらくてしょうがないし。。

すぐにこの問題に首を突っ込む法律事務所・出版社(著者)はいないのでしょうが、何れは出版社にプラスのお金を払って(ライセンスを受ける方向で)解決した方が、使う方、書く方、出版社の三法一両得になる気がします。

Rédigé par: 留学中 | le 05/05/2007 à 03:22

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