« 新TLDを登場させる意味 | Accueil | 日本の裁判所だったら »

06/23/2007

エイベックスの特別顧問は、違法配信のネタもとがレンタルだと問題視?

 岸博幸さんって、現在エイベックス・グループ・ホールディングスの特別顧問で、6月24日の定時総会で同社の非常勤取締役に就任予定の方だったのですね。それなら、少なくともエイベックスの特別顧問に就任していることくらいは略歴欄に書いておけばいいのに(特にこの話題だったら)とは思いました。ポジションによって党派性が生ずるのは仕方がないですが、それはそれで明示した方が、読者には親切です。

 それはともかく、問題の本質が「デジタルコピーして、ネット上で違法配信するのが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」ということならば、「様々な個別論のなかでは、例えば私的録音録画補償金制度よりもレンタル市場の存続の可否という問題の方がよほど重要である」という認識は改めた方がいいのではないかと思うのです。デジタルコピーの大元が「レンタル店から安価で借りて」きたCD等か、CDショップで高価で購入してきたCD等か、業界関係者に無料で配布されたCD等かなんて、「最初の1枚に関しての収益の差」(定価3000円のCDアルバムだと、実演家で30円〜100円程度の差)でしかないのですから(よもや、「高額の代金を支払って購入したCD等からリッピングしたデジタルデータを無料でP2Pネットワークに放出するお人好しなどいるわけない」と思っていないでしょうね。P2Pネットワークでの音楽データの共有の本場アメリカ合衆国において、CDレンタル業者がほぼ存在しない事実を思い起こすべきでしょう。)。

 「デジタルコピーして、ネット上で違法配信するのが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」という問題設定に対して、「CDレンタル事業を押しつぶすべき」という回答を出してくるシンクタンクなり特別顧問なりがいたら、私ならそういう人たちとは上手に縁を切るように会社にお勧めしますけど、レコード会社の上層部の人には、「CDレンタルがなくなれば、今までCDレンタルを利用してきた若者が、どこからかお金を調達してきて、その分新品CDを購入してくれるようになる」というストーリーの受けが良さそうだから、CDレンタル事業を悪者とする回答を提出した方が、出世の階段を上りやすいのだろうなということは思ったりします(そんなお金、どこから調達できるの?ってことを考えれば、非現実的な話でしかないことはすぐにわかるのですが。)。

 私ならば、「iPod等の大容量携帯型音楽再生機で音楽を楽しむことが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」という問題設定をした上で、むしろ、流通部門の中間マージンが大きく、また返品リスクの高い新品CD販売部門の縮小と、音楽配信およびレンタル部門のてこ入れを図りますが、そういうことをいっていると受けが悪いようです。消費者が音楽データを入手するのに費やす金額が一定であれば、その金額の範囲内で消費者が入手する音楽データの数が相当程度増加したって、音楽産業は全体的には損をしない(ただ、特定の作品への収益の集中が分散される)のですけれども。

Posted by 小倉秀夫 at 09:36 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

TrackBack


Voici les sites qui parlent de: エイベックスの特別顧問は、違法配信のネタもとがレンタルだと問題視?:

» 楽曲は誰のもの? de プログレッシブな日々
↓「私的録音録画補償金制度」を巡るここのところの話題 アップル・ジャパン(株)を名乗るパブリックコメントにが、 噛みついた慶応の先生が、実はレコード会社(エイベックス)の身内だったことが判明↓ benli: エイベックスの特別顧問は、違法配信のネタもとがレンタルだ..... Lire la suite

Notifié: 25 juin 2007 à 20:21:43

» パブリックコメント制度に関する問題点 de eビジネス・IT戦略の波間に
 知的財産推進計画2007に関連した話題ですが、日経IT-PLUSのサイトに先週 Lire la suite

Notifié: 29 juin 2007 à 17:41:54

Commentaires

はじめまして。トラックバックしました。(コメント欄に書くにはあまりに長くて…)
岸さん、どっかで顔を見たことあるような。有名な人なんですね。
トラックバック先に少し勝手に計算した数量データを載せてみました。
明らかに、音楽配信は音楽業界にとって利益です。 CDレンタルも音楽業界全体の成長率から考えると、収益の上がるPR費用として考えてもOKだと思います。
どうなんでしょうか。

Rédigé par: shoeless | 27 juin 2007 à 14:35:17

池田先生、どうもです。
こういう方々は、適当に作り上げた仮想的を押しつぶした後、どうしたいのか、私には理解しがたいです。
貸しレコード業を廃業に追い込んだところで、P2Pネットワークにアップロードされる楽曲のカタログ数は減少しないし、貸しレコードを頻繁に利用している層は新品CDを購入するゆとりはないのだから、結局、貸しレコード業者から得ていた収益がなくなるだけに終わることが予想されるのですけど。

Rédigé par: 小倉秀夫 | 24 juin 2007 à 01:44:32

こんにちは、小倉さん。いつもコメントをいただいているので、たまにはこっちからコメントを:

この問題は、根が深いと思います。ご存じのように、岸氏は竹中平蔵氏のブレーンで、去年の総務省の「通信・放送懇談会」を迷走させた張本人です。慶応に行ったあとも、総務省の「通信・放送問題に関するタスクフォース」のメンバーとして、通信政策の取りまとめをしています。iPodやCDレンタルを敵視する彼の意見が、総務省の政策をミスリードする危険は高いと思われます。こういうデリケートな政策を審議するメンバーに、一方の利害関係者(エイベックス)のロビイストが入っているというのは、いかがなものでしょうか。

Rédigé par: 池田信夫 | 23 juin 2007 à 22:40:13

Poster un commentaire