私的に録画してもらった方がテレビ局には安上がり
江口靖二さんが次のように述べています。
コピーが1回でも10回でも、関係者全員が納得できる公式を経済性も踏まえたうえで導き出すのはきわめて困難だ。それよりも「なぜ録画をしようとするのか」という点にもっと着目するべきだろう。
それは「不安だから」である。何となく手に入らなくなりそうな気がするからである。だとすれば再放送、多チャンネル、VODなどで視聴機会を最大化して、録画という行為の意味をなくしていくことが権利者、放送局、メーカー、視聴者全員のメリットになるはずだ。
規制緩和をすべき軸は接触機会の最大化に向けられるべきだ。ネットワーク上のどこかに番組が正規の手続きによって置かれていて、権利者との合意に基づいて公開非公開が決められればよいのだ。そうなれば究極の姿は「コピーネバー」、録画はできなくてもよくなるはずである。
しかし、「採算」を考えると非現実的です。テレビ番組のタイムシフト視聴及び近時のスペースシフト視聴は、視聴者の側が自ら必要な機器を購入する等して自己負担でやってきたことです。これを放送局が全部自己負担で行おうとすると、かなりの費用負担がかかります。視聴者は、自分が見たい番組だけを録画すればいいし、見終わったらデータを消去すれば済みますが、テレビ局がこれを行うとなれば原則全部の番組を相当長期間にわたって視聴できるようにしておく必要があります。「放送終了後1週間でデータを消去する」なんてことにしたら、大変なことになりそうです。「1週間の海外旅行中に国内で放送されていた連続ドラマ」を見る機会を失ってしまいますから。また、タイムシフト視聴のために従前各家庭のビデオデッキに向かっていたアクセスが、一斉に、テレビ局の提供するVODサーバに向かうわけですから、当該サーバ及びサーバ周りの回線は、同時に数百万、数千万単位のアクセスに対応できるようにする必要があります。
では、視聴料を別途徴収してシステムの維持費を賄うという選択ができるのかというと、一定期間内に視聴者が支払う再生視聴料が、そのような視聴をするために必要な録画機器等の購入費用を上回るようであれば、視聴者の怒りを買うだけの話です。したがって、2万円足らずでそれなりのビデオデッキが購入できる現状では、家庭内録画を禁止する代わりに提供される有償VODで許される年間視聴料はせいぜい数千円だと思います。それで上記システムにかかる費用を賄い切れるとも思いません。
しかも、その場合、ビデオ機器メーカーからの広告料収入が途絶えるわけですし。
したがって、テレビ局内部において経済的合理性を重んずる風潮が仮に強いのだとすれば、タイムシフト視聴については、利用者側で勝手にやってくれる現状をそのままにしておくことになろうかと思います。
Posted by 小倉秀夫 at 07:15 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Commentaires
現在の GyaO が補完的な役割ではないとする根拠はどこにあるんでしょうね。
また、タイムシフト視聴目的がビジネスにならないとするなら、それを禁止することは「テレビ局」にとって困る理由がないですね。あるいは、視聴者はレコーダーには対価を払うのだから、テレビ局が管理するレコーダーを用意して、対価を払ってもらってもいいですね。
おかしな論理展開で私的複製を制約されるようになったら嫌なんですが。
Rédigé par: mohno | 23 juil. 2007, 08:31:40
VODは、補完的な役割ならば、ビジネス的に成り立ち得ると思いますけど、タイムシフト視聴目的の録画を禁止してタイムシフト視聴をVODで一本化するとなると、コストが大きすぎてビジネス的にはどうかと思ったりします。その差がわかる人とわからない人がいるのは仕方がないですね。
Rédigé par: 小倉秀夫 | 22 juil. 2007, 18:05:20
VOD にビジネスチャンスがないというなら、わざわざ、そのために法整備することも不要ですね。
そのような主張をされている弁護士さんを見かけた気もするのですが。
Rédigé par: mohno | 22 juil. 2007, 10:42:15
とりあえずGYAOは今のところ赤字ですね。
東京キー局のCMを見る限り「1ヶ月後だったら意味がない」CMの比率はかなり低いので、広告をリアルタイムで見せるためにかけられるコストはそんなに高くはないように思います。
Rédigé par: 小倉秀夫 | 21 juil. 2007, 09:47:20
つまり、GyaO なんてビジネスが続くはずがないとおっしゃっていますか?
録画したものが、“たとえCMスキップせずに”見られたとしても、それが1か月後だったりすれば広告主にとって嬉しいとは限りません。VOD なら時期に応じたCMが出せますから、それによる収益が VOD システムを支えられれば維持できますし、そうでなければやれないでしょう。
私も江口氏の意見には全く与しませんが、番組(コンテンツ)制作費がどこから生み出されるのかを無視して論じても意味はないでしょう。
Rédigé par: mohno | 20 juil. 2007, 22:56:07