2つの「公衆」
インターネット放送は著作権法上「有線放送」にあたるのか「自動公衆送信」にあたるのかという論点に関し、文化庁は、一貫して「自動公衆送信」にあたるとしています。
例えば、平成18年3月30日付の「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」では、
とした上で、
有線電気通信設備を用いた送信が著作権法上の有線放送と解されるには、公衆送信の概念を整理した平成9年の著作権法改正時の立法趣旨や著作権法上の「有線放送」(第2条第1項第9号の2)、「自動公衆送信」(同条同項第9号の4)及び「送信可能化」(同条同項第9号の5)の条文の内容から、
- 有線電気通信設備により受信者に対し一斉に送信が行われること、
- 送信された番組を受信者が実際に視聴しているかどうかにかかわらず、受信者の受信装置まで常時、当該番組が届いていること
が必要であると考えられる。
電気通信役務放送利用放送事業者が行ういわゆるIPマルチキャスト放送については、その実態として、利用者の求めに応じて初めて当該利用者に送信されることから、当時の立法趣旨等に照らし、有線放送とは考えられず、いわゆる入力型の自動公衆送信と考えられる。と結論づけています。
ただ、有線放送に関する第2条第1項第9号の2を普通に読むと、なぜ2.の要件が出てくるのか理解ができません。「公衆=不特定人又は多数人」というドグマに従う限り、当該番組を視聴したいとして送信要求をした「不特定人又は多数人」が同一の内容を同時に受信するように情報を送信する限りにおいては、有線放送の定義に合致するはずです(「公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。」という自動公衆送信の定義(2条1項9号の4)からすると、「公衆からの求めに応じ自動的に行う有線放送」というものを著作権法は予定しており、かつ、それを自動公衆送信ではなく、有線放送にカテゴライズする旨が明確に示されています。)。
ひょっとしたら、文化庁は、「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう」という場合の「公衆」のみ「不特定人又は多数人」というドグマを離れて「あまねく人々」という意味に解しているのかもしれません。そうだとすれば、(当該内容の視聴を希望していない人々を含めた)すべての人々にあまねく同じ電気信号を送信するもののみが「有線放送」と言いうるのであって、その内容を視聴したい人々に対してのみ同一内容の電気信号を送信するに過ぎない場合は、「公衆=あまねく人々」が同一の内容を同時に受信する ことにはならないから、「有線放送」とは評価できないということになりそうです。
もっとも、この考え方にたった場合、何故に、公衆送信の定義における「公衆」を「不特定人又は多数人」と解しておきながら、「公衆送信」を分類するメルクマールとしての「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信される」目的における「公衆」のみを「あまねく人々」の意味に解することができるのか、説得的な理由付けが必要かと思います。
Posted by 小倉秀夫 at 10:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Commentaires
文化庁が有線放送要件の見解で「実際に視聴しているかどうかにかかわらず」と書いたのは、受信者側のアクセスによって発生するサービスは「有線放送」ではないという定義からです。たとえば音声電話で電話をかけてきた人に対して音楽やエッチな声を流して聞かせる有料電話サービスがありますが、あれは「有線放送」ではありません。インターネットが普及する以前からこうしたサービスが存在していたため、ああいう文化庁の見解が生まれたのです。
Rédigé par: 城ワイン | 11 août 2007, 20:52:45