文科省とダウンロード規制と思想統制
INTERNET Watchの記事によれば、
なお、YouTubeなどの動画共有サイトを視聴する際には、動画ファイルのキャッシュがPC内のHDDに一時的に保存される。この点についてIT・ジャーナリストの津田大介氏は、「違法ダウンロードが法制化された場合は、キャッシュとして保存することも複製と見なされ、違法行為になってしまうのか」と疑問を示した。とのことです。
この質問に対して川瀬氏は、「それが複製にあたるかどうかの知識はない」と前置きした上で、2006年1月に提出された文化審議会著作権分科会報告書の内容を紹介。それによれば、文化審議会著作権分科会に設けられた「法制小委員会」において、仮に現行の著作権法でキャッシュが「複製」と解釈されても、権利制限を加えるべきではないとする見解が示され、法改正事項として挙げられていると答えた。
現在著作権法の専門家の中で、ハードディスクへのキャッシュを、「一時的蓄積」に過ぎず著作権法上の「複製」にはあたらないとするものは決して多くはなく、むしろ、世渡りのうまい人たちはRAMへの一時的記憶すら著作権法上の「複製」に含めるべきであるとの強く主張しています。従って、違法にアップロードされた著作物を受信して複製する行為について著作権法30条1項から除外した場合には、YouTubeの画像を視聴したに過ぎない人々も、ハードディスクにキャッシュを保存したことにより、あるいは、RAMにデータを一時的に記憶させたことにより、複製権侵害に当たるとされる虞が十分にあります。
文化庁の川瀬氏は「それが複製にあたるかどうかの知識はない」としていますが、文化庁の著作権課の官僚さんが一時的蓄積に関する学説の状況を知らないとはにわかに信じがたいです。その上で、「仮に現行の著作権法でキャッシュが「複製」と解釈されても、権利制限を加えるべきではない」としているのは、裁判所が少なくともディスク上へのキャッシュについては裁判所がこれを著作権法上の「複製」とする可能性がそれなりに高く、その場合にはYouTubeでの動画視聴が違法とされることになることを十分に知りつつも、その場合には、これを適法なものとするような法改正は行わず、日本ではYouTubeの視聴自体をずっと違法なものということにしておきますよという趣旨ではないかと思います。
YouTubeの視聴自体を違法なものとしておくことに成功すれば、JARSAC等の著作権管理団体に権利行使をさせることにより、日本在住者をかなりの程度「情報鎖国」状態に置くことができます。ベルリンの壁が壊れるにあたっては、西ヨーロッパのテレビ局やラジオ局等が放送する内容を東ヨーロッパの人たちが受信し、西ヨーロッパの真の姿を知ることができたことが大きかったわけですが、今後の日本は、西側諸国のメディアで報道された内容を、YouTube等を介して知ることが許されなくなることでしょう。
また、JARSAC等に権利行使をさせれば、普通の家庭の普通のコンピュータについて訴訟前の証拠保全を掛けて、そのハードディスクの中身を調べることも可能となるかもしれません(といいますか、それができないとすると、どうやって違法受信者を摘発するのでしょうか。)。文科省の外局である文化庁が所管する社団法人であるJASRACが、一般市民の思想調査を行うことができることになります(なお、証拠保全で入手した情報については、特段の秘密保持義務を負いませんので、JASRACが行った証拠保全の結果、日本国政府に都合の悪い海外メディアの情報を視聴していた個人の情報をJASRACが文科省に報告することはとりあえず可能です。)。文科省は、日の丸君が代問題でも知られているとおり、思想調査・思想統制が好きな官庁ですので、そういう官庁に思想調査の道具を与えても大丈夫なのかいなという危惧がないわけでもありません。
杞憂なら良いのですが、ダウンロード者規制なんていう経済的に割の合わないものを、なぜそこまでして推進するのかということを、疑って係る必要はあるのではないかという気もしたりします。
Posted by 小倉秀夫 at 02:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink | Commentaires (6) | TrackBack (2)