J-Popのアジアでの落ち込み
せっかくレコード輸入権を作ったのにJ-Popがアジア圏で売れていないことが話題となっています。
しかし、ソニー・ミュージックエンタテインメントの田中章国際グループインターナショナル・マーケティング部長の、
日本の音楽コンテンツがアジアで普及するためには、「映画、テレビ、アニメと連携して展開する」「その国にはない幅広い音楽を提供する」「ライブでアーティストのパワーを直接見せる」といった方法が必要との発言を見れば、J-Popがアジアでも売れなくなっている理由が分かります。
そうです。ここには「インターネット」という言葉が一つも出てこないのです。
私が洋楽ファンだから言うのですが、自国のメディアで普通に流れている楽曲以外の楽曲に出会うのはどういう機会でかといえば、圧倒的に「インターネットを介して」です。「ライブでアーティストのパワーを直接見せる」たって、何を歌うのか分からないアーティストのライブにいきなり大枚はたいていこうという人はなかなかいませんし、そもそも、日本でそれなりに売れているアーティストが、現地での人気を獲得するまで、アジアの物価水準でどっしりとツアーを重ねるというのは、あまり合理的ではありません。
また、音源を購入する側の立場からいえば、何らかの切っ掛けで聴いた楽曲を気に入ったと思うから買ってみようというのであって、それがどこの国の楽曲かというのはそれほど重要ではありません。「自国にあるようなタイプの音楽なら自国のアーティストのものを買う」と決めている音楽ファンというのは、統計を取ったわけではありませんが、あまり多くはなさそうです。したがって、「その国にはない幅広い音楽を提供する」というのも解決策にはならなさそうです。
結局のところ、アジアでも豊かになってきた地域では、豊かになった人々又はなりつつある人々の間では急速にインターネットが普及しており、すると、未知の音楽に出会う場としてのインターネットの役割が大きくなってきているわけで、そうなってくると、世界に先駆けて送信可能化権を創設し、しかも同時再送信型のストリーミング配信をも「放送・有線放送」ではなく「自動公衆送信」にあたるという解釈を文化庁が未だに維持している状況の中で、J-Popを含む番組をインターネット上で配信することのハードルが著しく高くなってしまっていることが、レコード会社にとって、却って徒(あだ)になっているのではないかという気がします。
日本のレコード会社が本気でJ-Popをアジアで売りたいと思っているのであれば、一般のアジアの人々がアクセス可能な場所及びビットレートでプロモーションビデオをストリーミング配信するとともに、一般のアジアの人々に人気のあるインターネットラジオに向けて、インターネットラジオで放送可能な音源を提供するくらいのことは考えるべきではないでしょうか。さらにいえば、日本国内の音楽ファンが、非常に低廉なライセンス料で、J-Popをインターネットラジオ放送や、自作アニメのBGMとしてストリーミング配信してよいということにすれば、テレビ局等とのタイアップのために使う莫大な費用をいささか節約しつつ、音楽ファンの視点に立ったプロモーション活動をそれこそ勝手にやってくれるのではないかと思ったりします(ストリーミングに対するライセンス料をけちって、パッケージ販売やダウンロード販売の機会を減少させていくというのはあまり利口そうな話ではありません。)。
Posted by 小倉秀夫 at 02:00 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Commentaires
ネットラジオのような単方向性(かつ保存不可)の音楽配信については、もっと普及させてほしいとは思いますが、前年との比較数値しかなく、各国の市場規模の推移や他国の楽曲の状況などを踏まえてもいないない(=ロクでもない)資料をみて、「売れない理由がわかる」と言い切れるというのは、私にはわからないですねぇ。
そもそもたいていの人は、テレビとかラジオとかコンビニのBGMのような、より受動的なメディアから「新たな切っ掛け」を得ることの方が多いように思いますが。
Rédigé par: mohno | 5 oct. 2007, 18:35:32