角川歴彦さんの誤解
角川歴彦さんの最大の誤解は、エンドユーザーによる著作物の享受を「著作物の利用」に含めている点にあります。しかし、歴史的にも、比較法的にも、あるいは国際条約との関係でも、著作物を享受すること自体は著作物の「利用」に含まれていません。'エンドユーザーが著作物を享受をしたことについて著作権者等に利益還元を行わない'という状況は、著作権システムとしてはそもそも正常なのです。例えば、書籍を借りて読んだ場合に、少なくとも借主は、営利目的であったか否かを問わず、その書籍を読んだことによる利益の一部を著作権者に還元などしてこなかったわけです。
近年、エンドユーザーが著作物を享受する際に、著作物を自己使用目的で複製することが広く行われるようになりましたが、これとて、社会経済的に見ると、エンドユーザーによる著作物の享受の一態様でしかないので、そのことについて著作権者等に利益還元を行わないということは、著作権システムとしては正常の範囲にあると見ることが可能です。形式的に「複製」が行われているにせよ、その「複製」は頒布行為の予備的行為としての複製とは性質が異なるのです。その意味において、インターネットによる配信を「三次利用」と位置づけ、映像を閲覧したユーザーから、視聴料金とは別に料金を徴収する権利として
「閲覧権」を創設せよとする 角川さんのご提唱こそ、従来的な著作権の概念を覆すものであるといえます。
最もいけないことは、著作者がコンテンツの創作意欲をなくすこと
であるとしても、そのために、著作権システムとしてはいびつな料金徴収を行うことが果たして適切なのか、ということは大いに問題です。むしろ、「著作者がコンテンツの創作意欲をなく」さないようにするためには、出版社等の中間業者が、印税率等を引き上げたり、契約で必要以上に著作者の権利を吸い上げることをやめたりすることの方が先決なのではないかと思います。折角書籍について貸与権を創設しても、貸与権を有しない出版社がライセンス料の大半をせしめてしまうようでは、エンドユーザー側の譲歩は「著作者がコンテンツの創作意欲をなく」さないようにすることに貢献しないのです。
Posted by 小倉秀夫 at 02:36 AM dans D'autre problème de droite | Permalink
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