ライブの復権とネットとレコード会社
池田信夫先生のblogの「ネットはクリエイターの敵か」というエントリーのコメント欄では、レコーディングにかけるコストについての議論が行われていました。
もちろん、技術の進展により機材等の価格が劇的に低下したとはいえ、一定以上の水準の機材を備えているスタジオを借りてレコーディングを行うには、ある程度のスタジオ使用料は支払わなければいけないわけで、そういう意味では、それなりのレコーディングコストは現在でも不可避だということはいいうるでしょう。ただし、そのようなレコーディングスタジオを借りる日数は、想定される売上げに合わせて、増減させることができます。The BeatlesのPlease Please Me
がそうであったように、数時間のレコーディングで1枚のアルバムを作り上げることは可能です。
確かに、それは今の日本では多分に非現実的です。というのも、The Beatlesの場合は、メジャーデビュー前に膨大な数のライブをこなしており、スタジオ入りしてから念入りに練習する必要もありませんでしたし、1曲演奏するのに何テークも費やす必要もありませんでしたし、パートごとに別収録する必要もありませんでした。今の日本のアーティストでそんなことができるのはごく一握りです。しかし、長時間のレコーディングと機械的な修正・編集によりレコード会社が作り上げた音源については、様々な流通経路(正規CDの新品販売だけでなく、CDレンタルや中古売買、合法・非合法の音楽配信等)が既にあり、正規CDの価格について独占的に価格を引き上げられる環境ではなくなってしまっています。また、CDの次世代を担うパッケージメディアであるDVDでは、前述のレコード会社が作り上げた音源よりは、特定のライブ会場においてアーティストが一瞬のうちに作り上げた音源が好まれます。また、アーティスト側も、レコード会社による搾取の大きいパッケージより、レコード会社の搾取の及ばないライブを収益の柱としていこうという意志が垣間見られるようになっています(Princeの1件は、その嚆矢といえましょう。)。すると、いずれにせよ長時間スタジオを借りなければレコーディングもままならないようなアーティストはいずれ淘汰されるようになるのではないかという気がします。
そうなると、レコード会社はどのような役割を担うようになるのでしょうか。私は、特段レコード会社不要論に立つものではありませんが、とはいえ、アーティストの発掘、育成、プロモーションについでの主導権が、レコード会社からプロダクションに移行していく可能性は十分にあるとは思います。収益の核がパッケージからライブに移行すると、ライブでの収益の分配に預かることのできないレコード会社は投資のインセンティブを失っていくからです。もちろん、レコード会社が自社又は子会社を音楽出版社としてそのアーティストが実演する楽曲の著作権を管理することによりライブでの収益の分配に預かることも不可能ではないでしょうが、自作自演系のアーティストについていえば、自社系列の音楽出版社に著作権を管理させろと要求するレコード会社は回避しようということになっていくのではないかとも思います。
あとは、メジャーレーベルが持つラベリング機能が、Web2.0時代にどの程度生き残るのかというところです。ただ、欧米の例を見ると、「目利き」的な機能こそ、ネットがレコード会社を凌駕してしまう部分なのです(Kaminiなど典型ですが。)。
Posted by 小倉秀夫 at 07:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Notifié: 16 déc. 2007, 23:58:24
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