コピー制御信号を脅しに使うことについて
朝日新聞の記事によれば,
iPodなどの携帯音楽プレーヤーと、テレビ番組を録画するハードディスク内蔵型レコーダーに「著作権料」の一種を課金する制度改正の骨子案を文化庁がまとめた。8日の文化審議会に提案する。抵抗するメーカーに対し、課金を求める著作権団体が「秘策」で揺さぶりもかける。
とのことです。その秘策とは何かといえば,
一方、著作権団体の「秘策」は、6月2日から導入する方針の「ダビング10」の拒否だ。デジタル放送のテレビ番組を自宅のハードディスク内蔵型レコーダーなどに録画した後、DVDなどに9回複製できる新しい方式だ
とのことのようです。
しかし,2011年までに地上波アナログを停止させるというのはテレビ局側の事情なのであって,「アナログ波受信からデジタル波受信に切り替えると却って不便になる」状態を継続することにより追い込まれるのはテレビ局側なのではないかという気がしなくもありません。更にいえば,テレビ番組(とりわけ地上波デジタル放送の番組)を録画する機能を有する機器を製造・販売しているわけではない携帯音楽プレイヤー製造会社にとっては,何でそんなもののために払わなくとも良い上納金を払うことに同意しないといけないのかというところではないかという気がします。
それ以前に,著作権法の平成11年改正の際には,コピー制御信号に対応する機器を製造・販売する義務を負わせないことを前提としておきながら,コピー制御信号に対応させることを事実上メーカーに義務づけるために無料放送である地上波デジタルにスクランブルをかけていることだけでも本来許し難いのに,そのようにして半ば強制的に録画機器に対応させたコピー制御信号を,私的団体による徴収され分配される一種の税金の範囲を拡張することに反対させないための脅しとして用いるというのは許されることではありません。無料放送である地上波デジタルにかけられたスクランブルがこのような邪な目的に活用されるのであれば,議会は直ちに放送法を改正して,地上波デジタルについてスクランブルをかけることを禁止すべきです。スクランブルをかけた上でなければ放送をしたくない事業者は地上波の放送免許を返上していただき,衛星放送等で思う存分スクランブル付の放送をしていただいたらよいのであって,地上波デジタルの放送免許は,そのような上納金を必要としない事業者に交付したらよいことです。
強いて妥協案を提示するとするならば,ハードディスク内蔵型ビデオレコーダーに限定して私的録音録画補償金の対象とする代わりに,地上波デジタルについてはスクランブルをかけることを禁止するといったところでしょうか。従前B-CAS社に流れていたお金の一部が著作者団体等に流れるということであれば,機器メーカーもエンドユーザーも特段の不利益を被らないので(正確に言うと,有料放送を視聴したいユーザーは多少不利益を被るのですが),それならば検討に値する話ということができます。
Posted by 小倉秀夫 at 04:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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