「デジタル・コンテンツの流通の促進」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に対する意見
総務省が,「デジタル・コンテンツの流通の促進」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に対する意見募集をしていましたので,下記のとおり意見を出してみました。
7頁
意見等
私的使用目的の孫コピーを制限するような制御手段は,直ちに廃止すべきである。
理由
「コピーワンス」であろうが「ダビング10」であろうが,孫コピーを一切許さない現行方式では,携帯型プレイヤー等を介して「ユビキタス」にコンテンツを視聴できる社会は実現しない。
テレビにおいて放送される番組は,その多くが後にパッケージ化されて販売されることなく終わるのが実情であり,私的使用目的の録画を禁止したからといって,テレビ局や番組出演者等の収入が顕著に増大することは考えがたい(劇場用映画にしても,CMでぶつ切りにされる上に,多くの場合放送時間に合わせて適宜カット等がなされているため,テレビで放送された劇場用映画が録画されたとしても,上記のような不都合がなく,かつ,特典映像等もついているDVD等の市場を脅かすものではない。)。従って,テレビ放送に関してコピー制御を行うことの必要性自体がそもそもない。
「クリエイターに対する適正な対価の還元」という点についていえば,インターネット等を介して日本中でその番組が視聴されうること,タイムシフト視聴によりいわゆる視聴率により換算される視聴者数(いわゆるリアルタイム視聴している人の統計上の数)よりも多くの人がその番組を視聴していることを前提に,テレビ局がスポンサーから受ける広告料の引き上げ及びクリエイター等への出演料等の引き上げを図ることにより実現すべきである。その際,転送再生視聴率や,録画再生視聴率が計測できるよう,IT企業の協力を仰ぐべきである。
38頁
意見
いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限するべきではなく,仮にするとしても,コピー制御等に対応する技術については,何人も,無償かつ無条件ででこれを利用できるようにすべきである。
理由
いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限した場合,コピー制御等に対応する技術のライセンスを恣意的に行うことにより,録画機器等の市場が不当に歪められる危険がある。また,上記技術のライセンスを受けるにあたり,制御されている行為とは直接関係のない行為を強要される危険もある(視聴規制に過ぎないB-CASについて,これと直接関係を有しない「コピー制御に反応させる」ということを飲むことを解除技術のライセンス付与の条件とするがごときである。)。もちろん,それは独占禁止法上問題があるが,ライセンスの付与が恣意的に行われることが立証されて公正取引委員会が排除勧告を行うまでには相当の時間を要するため,これを嫌って,海外のメーカーや国内の新規メーカーが国内市場への参入を躊躇する事態が懸念される。
また,いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限した場合,コピー制御等に対応する技術のライセンスのライセンス料を極めて高額に設定することが考えられる(理論的には,特許権等の保有者の言い値を飲まない限り,録画機器等の製造販売を行い得ないことになる。)。本来クリエイターの権利を保護するために加えられたコピー制御について,上記ライセンス料の製品価格への反映という形で消費者が費用負担をさせられるのは不正義である。
85頁
意見
放送コンテンツをインターネット上で広く二次利用できるようにするためには,実演家の権利との関係でいえば,著作権法93条及び94条頼みの現状のライセンス実務をまず改めるべきであり,レコード製作者との関係では,レコードの送信可能化等についても強制許諾制度を導入するなどにより「放送」とされた場合の二次使用料と「送信可能化」とされた場合の許諾料がアンバランスを解消し,又は,放送局からなる団体とレコード会社からなる団体とで協議をして「放送」の場合の二次使用料を引き上げる代わりにテレビ放送を「送信可能化」する場合には合理的な価格でレコード音源の使用を許諾するシステムを構築する(放送局の範囲を限定せず,新規の放送局をその取り決めから排除しないことを条件に独占禁止法の適用除外とする等の支援を国はするに留める)べきである。ただし,放送コンテンツのインターネット上での二次利用は,放送事業者又はその関連会社に限定されるべきではなく,放送事業者が恣意的にライセンスをする場合には,強制許諾制度の導入等も視野に入れるべきである。
理由
著作権法第92条の2第2項は,実演家としての録音・録画権を有する者の許諾を得て録画された実演については,送信可能化権の対象外とするものと規定されている。従って,放送局は,その番組を製作するにあたって,そのコンテンツを二次使用することを前提に,出演者からその実演についてこれを放送することの許諾のみでなく,複製及び送信可能化することについての許諾も受け,その分のライセンス料を実演家に支払っていれば,そのコンテンツをインターネット上で二次利用することが可能である。すなわち,実演家の権利との関係でいえば,著作権法93条及び94条頼みの現状のライセンス実務をまず改めるべきである。
テレビ番組でのレコードの使用についても,「放送」とされた場合の二次使用料と「送信可能化」とされた場合の許諾料がアンバランスであることが,放送番組での過剰なレコード音源の使用と,これを送信可能化する場合の権利処理コストの過剰性を呼び込んでいる。レコードの送信可能化等についても強制許諾制度を導入するなどにより上記アンバランスを解消するか,放送局からなる団体とレコード会社からなる団体とで協議をして「放送」の場合の二次使用料を引き上げる代わりにテレビ放送を「送信可能化」する場合には合理的な価格でレコード音源の使用を許諾するシステムを構築する等の施策が必要である。
録画ネット事件からまねきTV事件に至るまでの近時の訴訟を見る限り,テレビ局は,東京キー局の番組を関東広域圏外の住民が視聴することを忌み嫌っており,放送コンテンツのインターネット上での二次使用を放送事業者又はその関連会社に限定した場合,東京キー局の番組をインターネット上で視聴できるのは関東広域圏内の住民に限定されるようないびつな仕組みができかねない。そのような地方住民の知る権利並びに文化的な発展を阻害するようなシステムを21世紀に導入すべきではない。
Posted by 小倉秀夫 at 12:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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