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08/07/2008

TVブレイクとJASRACの進歩

 JASRACがTVブレイクの運営会社であるジャストオンラインを訴えた件がネット上で話題となっています。

 ITMediaの記事によれば、JASRACは、JASRACの管理楽曲リスト(一般的なリストで、TVブレイク上の侵害動画を指定したものではない)をCD-ROMで送り、ついで、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策を要請したとのことです。この辺を見ていると、JASRACは、ファイルローグ事件のときから進歩していないような気がします(包括的許諾契約を結びお金を払うという選択肢がある分、ファイルローグのころよりは少しましではありますが。)。

 JASRACの管理楽曲リストを渡されて、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策をとれと要求されたって、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲がJASRACの管理楽曲リストにある楽曲かどうかなんてわからないのだと言うことを何度言ったらわかるのでしょうか。機械的に処理するにせよ、人海戦術を行使するにせよ、JASRACの管理楽曲リストに掲載されている楽曲の歌詞やメロディ等の内容に関する情報がなければ、システム管理者側は、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲がJASRACの管理楽曲リストにある楽曲かを知り得ないわけです。

 ファイルローグ事件で裁判所がJASRACを甘やかしてしまったのがよくないのですが、人海戦術では処理できる量が限られている(JASRACの管理楽曲リストに掲載されている楽曲の歌詞やメロディと、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲とを比較参照しなければならない分、並びに、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲の方はある程度の長さそれを聞かないと、そのメロディも歌詞も把握できない分、誹謗中傷発言の削除よりは手間暇が掛かります。)のは明らかなのですから、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策をとらせたいのであれば、インターネット上で流通している音声データのうち管理楽曲の権利を侵害したものである可能性が高いものを機械的にピックアップするシステムをJASRACの側で開発し、広くネット企業にタダで使用させればよいだけの話です。そのように「管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策」を容易かつ安価に講じうる体制を整えた後に、なおもそのような対策を講じようとしない企業に対して訴訟を起こすというのであればまだ筋は通りますし、YouTube(Google)のようにそのようなシステムを構築する技術力と資金力を有する企業に対して訴訟を提起するというのであればまだ筋は通りますが、ジャストオンラインのような小さな企業に無理を強いる要求を掲げて訴訟を提起するというのは、弱いものいじめとの感が否めません。

 なお、訴訟の帰趨に関しては、権利侵害コンテンツの割合がどの程度あるのか、当該サイトが投稿者や閲覧者を絞り込む工夫をしていたか、運営会社の経営者が余計なことを口走っていないか、運営会社が具体的な削除要請や発信者情報の開示要請等に誠実に応じてきたかにもよりますし、すでに具体的な削除要請を行っていた部分が却ってJASRACに不利に働く場合もあり得るのですが(ファイルローグ事件の時は、管理会社側が用意したノーティス・アンド・テイクダウン手続を無視しきったことにより、この手続は実効性がないと判断してもらえました。)、まあ、どうなることでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 11:08 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Voici les sites qui parlent de: TVブレイクとJASRACの進歩:

» フェアユース、著作権者のロビー活動対策で? de 下級役人のつぶやき
こんにちは、今年もお盆が休めなかった下級役人です。(第17回)  ここのところ仕事が忙しくてなかなか勉強の余裕がないです。書き込みが滞っていてちょっと情けない限りですがご容赦を。本来は、私的録音録画補償金の関係で、権利者側が一枚岩なのかどうか、そこら辺の分析に入ろうかと思っていたのだが、著作隣接権あたりが複雑なので、ちょっとまだ整理が未成熟で、もう少し時間が欲しい。  とはいえ、何も書かずに1月過ぎてしまうと、さすがにブログとしては失格なのだろう。今日は、ちょっと勉強不足でも書き込め..... Lire la suite

Notifié: 18 août 2008, 03:42:14

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