平成20年度後期第1回目のゼミの課題
そろそろ中大法学部の2年生の学生さんが3年時以降のゼミの希望を出す時期になりましたので,私のゼミでどのような課題が出されているのかをご提示しておきたいと思います。例えば,前回のゼミの課題は概ね下記のようなものです。
Aは,著名な戦場カメラマンである。Aは,朝鮮戦争を取材中,中国人民志願軍の反抗に巻き込まれ,行方不明となった。
Bは,朝鮮戦争について,Aと特派員契約を結んでいた新聞社である。Bは,Aが制作した朝鮮戦争に関する写真および記事の交付をAより受け,その一部をBが発行するB新聞に掲載していた。
Aが行方不明となった当時,Aの推定相続人はCとDのみであった。
E市は,その開設する美術館Fにおいて,報道写真で戦後を振り返ることを主たるテーマとした展覧会Gを企画した。E市としては,展覧会Gにおいては,Aが朝鮮戦争を取材中に撮影したAの代表作Hおよびこれに付された記事を展示することは欠かせないと考えていた(なお,写真Hは,国連軍がソウルを奪還した頃の写真であるが,この写真の初出は,中国人民志願軍が北朝鮮内から完全撤退をしたことを受けてその1週間後にB新聞に掲載された,朝鮮戦争を振り返る特集記事であった。)。また,Hについては,パンフレットや展示作品を収蔵した写真集やDVD等を,出入り業者Iに委託して作成させ,FのミュージアムショップJで販売することを企画した。
問1
BまたはE市は,Aについて失踪宣告の申立を行うことが出来るか。また,Aについて失踪宣告が認められた場合,Aの作品についての著作権の保護期間はいつ終了するか。
Bから要請を受けたCの申立てによりAについて失踪宣告がなされ,その後の遺産分割協議において,Hのネガフィルムおよびこれに付された記事の草稿等はCが相続することとなった(遺産分割協議においては,ネガフィルムや草稿などの遺稿については,C,D間でそれぞれ半数ずつ分け,その他の遺産については,それぞれ2分の1ずつの割合で共有することとした。ただし,CおよびDは,これらについての著作権は既に保護期間が経過していると考え,ことさら遺産分割協議書には著作権について言及しなかった。)。しかし,展覧会Gの開催日の半年前に,K新聞のスクープにより,Aは朝鮮戦争では死亡せず,「L」と名前を変えて,闇の武器商人として暗躍していたことがわかった(ただし,Aは,ベトナム戦争取材中,テト攻勢に巻き込まれて死亡していた。)。
Bから自分だけお金をもらって失踪宣告の申立てを行ったC,および自分を無視したBに遺恨を抱いたDは,Hについて,展覧会Gに出品し,その際に,出入り業者Iが作成し,ミュージアムショップJで販売される写真集やDVD等にHを掲載することに反対した。
問2
B又はE市としては,合法的に,Hについて,展覧会Gに出品し,その際に,出入り業者Iが作成し,ミュージアムショップJで販売される写真集やDVD等にHを掲載するにはどうしたらよいか。
問3
Cは,あのDの頑なな態度の元では,Cが単独相続したAのネガフィルム等をプリントしてAの作品を世に広めることができなくなると心配になった。そこで,Cは,Cがネガフィルム等を単独相続した作品については,ライセンス料収入の半分をDに支払うことを条件に,Cの指定する出版社等に,写真集,DVD等への掲載を許諾することに合意することを求める訴訟を提起することを考えた。このような請求は認められるか。
問4
Cは,Hを含むAの作品に係る著作権について,共有物分割の申立て(又はこれに準ずる手続)を行い,これにより,ネガフィルム等について単独相続を行った相続人がその著作権を単独で所有することとするようにしてもらうことは出来るか。
問5
Cは,妻子ある男性Mと駆け落ちし,その後Mと重婚的内縁状態にあったが,子供をもうけなかった。Cは,自分の遺産は全てMに相続させる旨の公正証書遺言を作成していた。Cの死亡後,DはMに対し,「Aの作品の著作権についてのCの持分がMに渡ることには同意できない。それらは全て,Cの死により,私が相続したのだ」と主張し,その後,Dは,Dがネガフィルム等を相続したAの写真について,Mに相談なしに,出版社Nと出版契約を結んだ。
MはNに対して,Aの写真を掲載した写真集の出版の差し止めを求めることは出来るか。
相続等により著作物が共有状態になっているときに著作物を利用するためにはどのような法的な措置が必要となるのか,また,現行著作権法の施行前に作成された著作物についてその保護期間をどのように算定するのか,を理解していただくのが主眼です。まあ,後期の第1回目ということもあって,若干民法の復習もしていただきましたが。
Posted by 小倉秀夫 at 11:25 AM dans D'autre problème de droite | Permalink
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Q:タイゾーさん、はじめまして。私は昨年4月に大学の仏文科を卒業して就職した24 Lire la suite
Notifié: 16 oct. 2008, 23:16:54
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