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10/06/2008

著作権法第2条第1項第7号の2の括弧書きの立法趣旨

 著作権法第2条第1項第7号の2の括弧書きの趣旨について,例えば加戸・逐条講義31ページは,

もともとはコンサートなどで歌手が歌をマイクを通して歌った場合に,前にいる人はその歌手の歌唱(これは第16号の箇所で述べますとおり,「演奏」に該当します。)を聞いていますけれども,後ろにいる人はスピーカーという受信装置を通じて公衆送信を聞いていると言うことになりかねませんが,この場合に公衆送信という概念で押さえるのはおかしかろうということで,少なくとも同一構内で行われている限りは公衆送信という概念をとらないで,演奏という概念で押さえようという観点から,こういう書き方をしたわけでございます。
との記載があります。しかし,現行著作権法が制定される際の国会の議事録はもちろん,現行著作権法の起草に先立つ著作権審議会の分科会の中間報告や最終答申などにも,同一構内か否かで,「演奏」か「公衆送信」かを分けるのだという趣旨の発言はありません。

 現行著作権法制定前において,例えば「有線放送業務の運用の規正に関する法律」が第2条において,

 (定義)
第二条 この法律において「有線放送」とは、左の各号の一に該当するものをいう。
 一 一区域内において公衆によつて直接聴取されることを目的として、放送を受信しこれを有線電気通信設備によつて再送信すること。
 二 一区域内において公衆によつて直接聴取されることを目的として、音声その他の音響を有線電気通信設備によつて送信すること。
 三 道路、広場、公園等公衆の通行し、又は集合する場所において公衆によつて直接聴取されることを目的として、音声その他の音響を有線電気通信設備によつて送信し、又は放送を受信しこれを有線電気通信設備によつて再送信すること。
としつつ,第10条において,
 (適用除外)
第十条 この法律の規定は、左の各号に掲げる有線放送の業務については適用しない。
 一 臨時且つ一時の目的のために行われる有線放送の業務
 二 一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる有線放送(第二条第三号に該当するものを除く。)の業務
(以下,略)
と規定されていることに代表されるように,「一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる有線放送」については「有線放送」としての規制の対象外とされていたことを踏襲したものと見る方が素直ではないかと思います。その際,同「一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる」有線放送については,「公衆送信」には該当するが公衆送信ないし有線放送としての保護・規制を受けないという規定ぶりにするより,そもそも「公衆送信」(及びその一カテゴリーである有線放送)の定義から除外するとした方が,法律の規定の仕方としてわかりやすいので,著作権法第2条において,「公衆送信」の定義規定において,上記括弧書きを付けることにしたと考える方が素直ではないかという気がします。

 ときおり,7号の2の括弧書きの趣旨は,「演奏」等に該当する場合を「公衆送信」から除き重畳適用を避けることにあったのだから,「演奏」等に該当しない場合は括弧書きを適用せず「公衆送信」に該当するものと解すべきだ,みたいな主張がなされることがあるのですが,もし立法者の意思がそのようなものだとするならば,「演奏」等の定義を先に決めた上で,「公衆送信」の定義規定において,「演奏」等に該当するものを除く旨の括弧書きを挿入したのではないかと思います。

 町村先生も,世間では、立法担当者の主観的認識といわゆる立法者意思とを混同している向きが多く、立法担当官が書いた逐条解説を金科玉条のごとく思いこむ人が多い。仰っていましたが,著作権法の分野では,何が立法者意思なのかを加戸知事の逐条解説に頼るのは結構危険だなあと言えそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:26 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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