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10/14/2008

海賊版の図書館への収蔵

 産経新聞によれば,萩原遼さんの著書の海賊版を納入し、貸し出しているのは著作権侵害にあたるとして、東大など8大学と外務省所管の財団法人日韓文化交流基金を相手取り、近く損害賠償を求める訴えを起こすことが判ったとのニュースが話題になっています。

 「公衆送信」云々という部分は萩原さんか産経新聞が勘違いしているだけでしょうからひとまず措くとして,プログラムの著作物以外の著作物については,海賊版の所持者がこれを不特定人に対し展示する行為は特段著作権侵害とならないので,これらの図書館等としては,当該海賊版について館外貸出しの対象としていなければ,損害賠償をしなければならない理由はありません。

 また,仮に館外貸出しの対象としていたとしても,頒布目的の所持が著作権侵害等とみなされるのは,その物が著作権等を侵害する行為により作成された者であるとの「情を知つて」行ったものに限られます。「情を知つて」の意義については,東京地判平成7年10月30日判タ908号69頁は,

著作権侵害を争っている者が、著作権法一一三条一項二号所定の「著作権・・・・・を侵害する行為によって作成された物」であるとの「情を知」るとは、その物を作成した行為が著作権侵害である旨判断した判決が確定したことを知る必要があるものではなく、仮処分決定、未確定の第一審判決等、中間的判断であっても、公権的判断で、その物が著作権を侵害する行為によって作成されたものである旨の判断、あるいは、その物が著作権を侵害する行為によって作成された物であることに直結する判断が示されたことを知れば足りるものと解するのか相当である

と判示しており,問題の「北韓解放直後極秘資料」が萩原さんの「北朝鮮の極秘文書」の複製物or二次的著作物か否かについて争いがある本件においては,この基準が変らない限り,訴訟や保全処分等を行って暫定的な結論を得ることすらしていない段階で「情を知つて」の要件を満たすことは容易ではありません。

 もちろん,上記裁判例は一般的な譲渡権が制定される前のものであり,一般的な譲渡権が制定された現在では,海賊版について譲渡権が消尽していないことを過失により知らずにこれを公衆に譲渡してしまった場合には,不法行為が成立する可能性があります(逆に,複製物の譲渡を受けたときに譲渡権が未だ消尽していないことを過失なくして知らなかった場合には,その後「情を知つて」これを公衆に譲渡したとしても譲渡権侵害とはならないわけですが(著作権法113条の2))。

 しかし,館外貸出しの場合は,譲渡権ではなく,貸与権が問題となりますから,権利の消尽云々は問題とならない反面,無償かつ非営利で行う分には,著作権者の許諾がそもそも不要ですので,過失云々が問題になることはありません。従って,実際上の争点は,館外貸出しを行った図書館等に営利性等を認めることができるのかという点に絞られることになりそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Voici les sites qui parlent de 海賊版の図書館への収蔵:

» Q33:図書館の海賊版所蔵資料を廃棄しろと言われたのですが… de ピリ辛著作権相談室
Q:こんばんは。私はとある大学図書館に勤務する者です。このブログに時々登場する公 [Lire la suite]

Notifié le 16 oct. 08 03:40:57

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Notifié le 16 oct. 08 20:44:00

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