L.H.O.O.Q
前回の中央大学でのゼミの課題として,次のような設問を出しました。
Marcel Duchampが『L.H.O.O.Q.』を製作し,また,『髭を剃られたL.H.O.O.Q.』を公表する行為は,現在の日本で行われたとしたら,犯罪となるでしょうか。
著作権法第60条は,
著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
と規定し,これを受けて著作権法第120条は,
第六十条又は第百一条の三の規定に違反した者は、五百万円以下の罰金に処する。
と規定しており,このため,著作権の保護期間をどうするかに関わりなく,著作者の人格的利益は半永久的に保護されるとされています。では,有史以来人類が創作した作品全てについて,現代においても,著作者の人格的利益は保護されているのだろうかということがここでは問題となります。
加戸・逐条講義等ですと,上記の点を肯定しつつ,起訴便宜主義があるから大丈夫だという話をするのですが,遠い昔に創作された作品についてはこれを改変等しても刑事罰を科せられないような解釈論が何かないだろうかということが問題となります。
この点についての私の試案は,旧著作権法第47条が本法施行前に著作権の消滅せざる著作物は本法施行の日より本法の保護を享有す
と規定しているのを反対解釈して,旧著作権法施行前に著作権が消滅した著作物についてはその時点で著作者人格権を含めて権利が消滅したと解した上で,現行著作権法附則第2条1項を類推適用して,「現行法施行日以前に消滅している権利については,現行法の施行により復活しない」という部分を著作者人格権についても拡張して,旧著作権法施行時に既に著作権が消滅している著作物については,現行著作権法60条及び120条が適用されない,とするものですが,技巧的にすぎるような気はしなくもありません。
Posted by 小倉秀夫 at 08:32 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Commentaires
日本法に関しては和歌の本歌とりおよび狂歌・川柳の伝統にのっとり、古典作品のもじりについては許容性あり,とでもして、あとは条文にこじつけるか一般条項をつかうか、ということになっていくのでしょうね。どちらにしろ憲法論特有のあてはめ段階でのたいへんさはのこります。
Rédigé par: madi | 5 déc. 2008, 10:24:52