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11/10/2008

「第2節 私的使用目的の複製の見直しについて」についての意見

 「文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会平成20年度・中間まとめ」について,特に「第2節 私的使用目的の複製の見直しについて」について,下記のとおり意見を提出しました。


 私的使用目的で違法複製物等から著作物を複製する行為を違法化する法改正は不要であるのみならず,有害である。その理由は下記のとおりである。

 諸外国でも,著作権者等による権利行使の対象となっているのは,P2Pファイル共有システムを用いて違法複製物等をダウンロードした者であって,ダウンロードしたデータファイルを共有フォルダに蔵置していたものである。そして,世界に先駆けて著作物等について送信可能化権を設けている日本法においては,このような者に対しては送信可能化権を行使することが可能である。

 そうではなくて,ダウンロードしたデータファイルを共有フォルダに蔵置していない場合についても著作権者等による権利行使を行いたいとのことであれば,それは世界でもほとんど前例のないことであり,それが認められた場合の弊害はとても大きい。すなわち,その場合,著作権者等の側で被疑侵害者の使用しているコンピュータ内のハードディスク等の中に自分が著作権等を有する楽曲等の複製物が蔵置されていることを証明しなければならないが,そのためには,著作権者等は,第三者が使用しているコンピュータにどのようなデータが蔵置されているのかを検証することが必要となる。そして,それを可能とするためには,自分が著作権等を有する楽曲等が多数違法にアップロードされていることを疎明すれば,任意の第三者を債務者として証拠保全の申立てを行い,その使用しているコンピュータ内のハードディスクの100%物理コピーを入手することがほぼ必須である。従って,上記のような法改正がなされた場合,裁判所は,その立法趣旨に鑑み,現行の民事訴訟法の規定に従い,上記証拠保全手続としてのハードディスクの100%物理コピーを許可する可能性が十分にある(なお,当該第三者が違法にアップロードされた著作物等をダウンロードしていることの疎明は,技術的に困難であるし,それはまさに保全された証拠によって立証しようとする事項であるが故に,要求されないと予想される。)。この場合,当該ハードディスクにて保管しておいたプライバシー情報等は全て著作権者等に知られるところとなり,別の用途に悪用される危険がある(なお,証拠保全で収集した証拠により得た個人情報を他の用途に利活用することを刑事罰をもって禁止する法律は現在存在しないので,民事で慰謝料等を支払っても採算がとれるとなれば,別の用途に悪用される可能性は十分にある。)。

 なお,上記のような法改正が希望される表向きの理由としては,「ファイル交換ソフトによる違法配信からの録音録画については、違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するのが困難な場合があり、送信可能化権や公衆送信権では充分対応できない」ということがあげられている。しかし,上記のような「当てずっぽうで対象を選んでの証拠保全」を行わないとすると,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するよりも,それらの者からデータの送信を受けた者を特定する方が技術的に困難である(今回の資料の中でも,「仮にそのような法改正がなされた場合に,誰が何をダウンロードしたのかをどのように特定することが予定されているのか」について具体的に示されていないのは残念である。)。

 また,電子掲示板等に投稿する際にだけインターネットにアクセスすれば足り,公衆にIPアドレスを晒す必要がない名誉毀損等のケースと異なり,ファイル交換ソフトによる著作物等の違法配信の場合,継続的に自己のIPアドレスを公衆に晒す必要があるから,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するのは,技術的・法的には比較的容易である(日本の著作権等管理団体は,米国やドイツ等の著作権等管理団体と異なり,弁護士費用を惜しんで,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定して権利行使することを怠ってきただけのことである。)。

 また,上記法改正がなされてしまう場合には,いわゆる動画投稿サイトにて,日本では公開されていない海外の作品を視聴したり,民法テレビ局の少ない地域の住民が地元に系列局のないキー局の番組を視聴すること自体が違法とされてしまう等,著作権者等から地理的にブロックされている情報を知ること自体が不法行為とされてしまうのであり,それは国民の知る権利を大いに害することになる。

 なお,「ストリーミングに伴うキャッシュについては、著作権分科会報告書(平成18 年1 月)における一時的固定に関する議論の内容等を踏まえた上で、必要に応じ法改正すれば問題がないと考えられる」との議論があるが,「RAMへの一時的蓄積は著作権法上の複製にあたるか」という点についてはあたらないとするのが多数説並びに下級審判例ではあったものの,ハードディスクに固定されるキャッシュについては,コンピュータの電源を一度落としても繰り返し利用することが技術的に可能であるが故に「複製」と認定される可能性が高く,上記のような法改正がなされた場合には,著作権者等による情報の地理的分割に活用される危険が十分にあり,そのように活用された場合に,上記情報の地理的分割によって利益を得るのがテレビ局やレコード会社等文化庁と繋がりの深い事業者であるが故に,「複製」の定義に関する法整備が速やかに行われる可能性は低いと思われる。  

Posted by 小倉秀夫 at 12:32 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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