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12/25/2008

アジア海賊版文化

 土佐昌樹「アジア海賊版文化──『辺境』から見るアメリカ化の現実」の第2章,第3章は面白かったです。

 軍事独裁が続くビルマ(ミャンマー)では,外国放送局による衛星放送の域外受信と,外国映画の海賊版VCDおよびDVDこそが,市民にグローバルな文化を届ける数少ない手段となっている事実。イギリス植民地時代に作られたイギリス著作権法とほぼ同様のビルマ著作権を可能な限り完全実行せよと西側先進国がビルマ政府に迫ることは,軍事独裁政権による情報統制をさらに強めることになるという現実。このような極端な実例こそが,著作権法が情報統制の為のツールという側面を本来的に有することを私たちに改めて思い起こさせます。

 もちろん,理論的にはビルマ国民が正規商品を購入すれば政府から著作権法違反を理由とする統制を受けずに済むといえなくもありません。しかし,DVD等の正規商品は,その国の,一般大衆の購買力に応じた値付けがなされていないので,そもそもこの国の一般大衆が西側先進国で作られた映画等の正規DVD等を購入するというのは無理がありますし,また,軍事独裁政権なので正規商品を輸入しようとすると厳しい検閲に晒されます。従って,国民がグローバルな情報を知るためには,域外放送の受信と海賊版VCDおよびDVDが事実上不可欠となっているのです。


 日本を含む西側先進国では,さすがに政府が外国からの情報を逐一検閲して排除するということは──わいせつ系をのぞくと──ほぼなくなってはいます。しかし,「コンテンツホールダー」といわれる人々が正規商品による情報の流通を地理的に統制しようとする動きは日に日に強まっています。地上波放送のデジタル化により域外放送の受信が困難となれば,佐賀,徳島は,たちまち「情報鎖国」に陥ります。また,「オンライン配信のみ」のコンテンツが増えると,受信者の滞在国ないしビリングアドレス所在国によりその正規サービスによる受信が拒まれるシステムの下では,「日本在住者は正規には知り得ない情報」がどんどんと増えていくことになります。それは音楽・映像作品にとどまりません。Kindleの普及により,堅い内容の書籍もオンラインで配信される例が実際に米国で増加しています。今後は,そのような形式で配布される論文等については,日本在住者のみ蚊帳の外に置かれるという事態も増えてきそうです。

 「軍事独裁政権による情報統制は悪い情報統制だが,コンテンツホルダーによる情報統制は良い情報統制」と考える人たちは,ダウンロード行為の違法化に賛成するのでしょう。実際,ある研究会で,コンテンツホルダー側の代理人をされる弁護士さんは,どの情報を日本国民に視聴させ,どの情報を視聴させないかを含めて,コンテンツホルダーが決定をするということで何が悪いのだと言っていましたし。しかし,民間企業に情報コントロール権を認めてしまって,本当によいのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 08:46 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/17/2008

テレビ局等のロビー活動の費用の回収方法は?

 ITProの報道によれば,

ネット上に無許諾でアップロードされたコンテンツをユーザーがダウンロードする行為については、違法とする方針を明記。上位組織である著作権分科会の承認を経て、早ければ2009年の通常国会に提出される。

とのことです。

 違法サイトからのダウンロード行為を違法化しても,権利者は実際には権利行使しないから大丈夫だ──これは,ダウンロード行為の違法化が認められた場合権利行使の過程で私たちのパソコンのハードディスク等の中身が一部の著作権者たちに丸ごと把握されてしまうという批判をした場合に,違法化推進論者からなされるほとんど唯一の反論です。パブコメにあたって,違法サイトからのダウンロード行為を違法化した場合権利行使の過程で国民のプライバシーが大きく侵害されることのあることを指摘したわけですが,結局,この点については,一切答えないまま,ダウンロード行為を違法とすることを文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会は決めたわけです。

 しかし,「新たな権利を創設しても権利者はその権利を行使しないはずだからその権利が行使された場合のデメリット等考慮する必要がない」なんて議論がまかり通るのは,著作権法以外の分野ではなかなか見出すことができるものではありません。それに,行使するはずのない権利を創設するために,手間暇かけて金かけてロビー活動を行うって,普通に考えてあり得ないでしょう。

 さらにいえば,テレビ局が証拠保全の申立を行って私たちのパソコンのハードディスクの中身を洗いざらい持って行って,何か面白そうなデータがあったら,適当に報道部門で使わないとの保証は一切ありません。私のような職業であれば,依頼者との守秘義務を果たすためには,弁護士としての仕事の一環として文書を作成するのに用いるパソコンではインターネットに接続できないようにすることが必要になるかもしれません。だって,インターネットに接続しているパソコンは,常に違法サイトからのダウンロード行為に用いられる可能性を否定しがたいので,テレビ局による証拠保全の対象となりうるからです。

 証拠保全の結果,そのテレビ局が権利を有する著作物の複製物が見つからなかったり,見つかっても「情を知って」の要件を満たすとの立証ができなくて,結果,複製権侵害の存在を立証できなかったとしても,マスメディアとしては,特定の人物が使用しているパソコンのハードディスクの中身を丸ごと検証できるというのはとてもおいしい話ということになります。実際,私がテレビ局の人間であれば,スキャンダル等の焦点となっている人物について,「自分たちの放送を違法サイトからダウンロードしている虞がある」として証拠保全の申立をして,その使用しているパソコンに蔵置されているデータを丸ごとコピーして解析し,スキャンダルに結びつくデータが見つかったらこれを報道(ワイドショーを含む)に流すことの魅力に抗しうるだろうかと考えると自信がありません。ダウンローダーから数十万円程度の損害賠償金を受領するより,証拠保全の過程でつかんだスキャンダルネタで報道番組の視聴率を1%上げた方がよくよくテレビ局の利益になるわけですし。

Posted by 小倉秀夫 at 08:53 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/15/2008

まねきTV事件高裁判決(速報)

 まねきTV事件について,本日,知財高裁にて,控訴を棄却する旨の判決が下されました。

Posted by 小倉秀夫 at 02:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/13/2008

私家版2008年ベスト10

 2008年度も残り少なくなってきましたので,恒例の私が選んだ2008年度の楽曲ベスト10を公表しようと思います。

順位 Artist Title
1 Housse De Racket Oh Yeah
2 Alister Qu'est-ce qu'on va faire de toi ?
3 Alizeé Fifty Sixty
4 Yelle Tristesse/Joie
5 Camille Gospel With No Lord
6 BB Brunes Perdus Cette Nuit
7 TRYO Toi et Moi
8 Paris Hilton Paris for President
9 PEP’S Liberta
10 Estelle American Boy

 J-POPだと,GReeeeNの「キセキ」が2008年を代表する歌だったのではないかという気がします(賞レースはそういう論理では動かないので,他の楽曲が受賞するとは思いますが)。まあ,NHKもGReeeeNを紅白歌合戦に出場させることができたら本当に「サプライズ」で視聴率も上がったと思うのですが,デビュー後3カ月で3枚のシングルを出しそのいずれもオリコン最高位3位に終わったGIRL NEXT DOORを出場させることにしてしまったという別の意味での「サプライズ」を醸し出して終わってしまった感があります。

Posted by 小倉秀夫 at 04:32 PM dans musique | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/11/2008

12月9日のJASRACシンポ

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が12月9日に開いたシンポジウムの様子がITmediaで取り上げられるや,ネット上では様々な批判を声が上げられているようです。パネリストは個々的には正しいことをいっているようなのですが,それを間違った文脈に結びつけてしまうので,全体としておかしな議論になってしまっているようです。

 まず,モデレータの安念潤司教授の

厳しい状況にあると、人は起死回生の魔法を求めたがる

とのご発言は,正規商品をCCCD形式にしたり,違法にアップロードされた音楽等ファイルの私的使用目的の複製を違法とするようロビー活動したりしている人に向けられた言葉であるならば,まさにその通りといわざるを得ません。

 砂川浩慶准教授の

テレビ番組制作会社では離職率の高さが問題になっているという。仕事を任せられる5年目くらいの中堅社員が少なく、「新しいものを作りだそうという土壌が生み出せていない」

という発言と,菅原常務理事の

タダと言っているコンテンツは実はタダではない。ユーザーは通信料は払っている。従来からものには流通コストが含まれていた。流通コストとコンテンツにかかるコストを整理して認識する必要がある

という発言とを組み合わせれば,コンテンツを作成しているテレビ番組制作会社と,これを放送波等を用いて流通させている放送事業者との利益バランスを見直すことが肝要だという結論を導くことができるのではないかという気がします。「あるある大辞典」のときでも分かったことですが,「テレビ番組制作会社では離職率の高さ」の主たる原因の一つと思われる「テレビ番組制作会社の給与水準の低さ」は,YouTube等の動画投稿サイトやP2P File Sharing等による視聴率の低下云々ということではなく,テレビ番組制作会社が制作したテレビ番組についてスポンサーが支払ったスポンサー料がテレビ局その他に次々とかすめ取られて実際に番組を製作している現場に殆ど降りてこないことに起因しているわけです。

 堀義貴社長の

過去の番組のネット配信には賛成だが「お金を払いたくないと言っている人がいるようであれば産業にならない」と指摘し、過去に作ったコンテンツにも対価が支払われ、十分に仕事が成り立つと分かれば、制作者は将来に向けて作品を作る意欲がわくだろう

についても,だから,テレビ制作会社等が制作したテレビ番組を死蔵させることは許されない,その番組を制作した会社がiTunes Store等でそれをオンライン販売することにより幾ばくかの利益を得たいと希望するのであれば,テレビ局はこれを拒むべきではないという結論に至るのであれば誠にその通りです。

 この点,岸博幸教授は,個々的に見ても正しくないことをいうので,期待を裏切りません。

「ネット法で著作権者の権利制限をするならば、権利制限せざるを得ない公益性がなければならないはず。立法論から言っておかしい

とのことですが,著作物等の文化の所産を全国の津々浦々に流通させてわが国の文化の発展に寄与させるということが著作権法の究極目的である以上,著作権法が却って著作物等の流通を阻害する場合に一定の権利制限を設けてその流通を促進することは,まさに公益性があるというより他ありません。

Posted by 小倉秀夫 at 03:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/02/2008

「海賊」という言葉

 著作物の複製物を違法に作成して市場に流通させる行為を「海賊」行為と表現するのは,やはり違和感はあります。「海賊」という言葉に含まれる,武器等を用いた有形力の行使又はその威嚇という要素が,違法複製物流通行為にはないからです。

 もちろん,「倭寇」に代表される歴史上の「海賊」は,必ずしも武力で他人の商品を奪ってばかりいたわけではなく,「御朱印船」に代表される,商品流通の独占又は寡占を保護する法制度に反して,商品の流通を担っていたのであって,それは,消費者のみならず,生産者の利益にもなっていたという深遠なニュアンスを含めて「海賊」という表現を用いているのだという反論はあり得るのかもしれません。しかし,それはそれで一般の人にはわかりにくすぎます。

 「海賊」というと,「直ちに取り締まらなければならないもの」というイメージが持たれがちですが,「海賊」の職務のうち「私貿易」に関していえば,現代ではむしろ,取り締まられるどころか大いに奨励されるべきものとされています。「マスメディア」という交易ルートが一部の事業者に押さえられ,著作隣接権や,著作権のテレビ局等の流通業者による囲い込み等のもとで著作物たる商品の正規ルートでの流通が阻害されている現状においては,現在の「海賊」たちもまた,「私貿易」の担い手という側面がないわけではありません。

 著作権法の黎明期にロビー活動力が強かったという理由で著作隣接権を確保しているレコード製作者や放送事業者の著作隣接権が将来の条約・法令の改正等により消滅した暁には,現在「海賊」行為と呼ばれている著作物等の私的流通行為のいくつかは,取り締まられるべきどころか,むしろ大いに奨励されるべき行為として位置づけられるかもしれません。

Posted by 小倉秀夫 at 11:24 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)