テレビ局等のロビー活動の費用の回収方法は?
ITProの報道によれば,
ネット上に無許諾でアップロードされたコンテンツをユーザーがダウンロードする行為については、違法とする方針を明記。上位組織である著作権分科会の承認を経て、早ければ2009年の通常国会に提出される。
とのことです。
違法サイトからのダウンロード行為を違法化しても,権利者は実際には権利行使しないから大丈夫だ──これは,ダウンロード行為の違法化が認められた場合権利行使の過程で私たちのパソコンのハードディスク等の中身が一部の著作権者たちに丸ごと把握されてしまうという批判をした場合に,違法化推進論者からなされるほとんど唯一の反論です。パブコメにあたって,違法サイトからのダウンロード行為を違法化した場合権利行使の過程で国民のプライバシーが大きく侵害されることのあることを指摘したわけですが,結局,この点については,一切答えないまま,ダウンロード行為を違法とすることを文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会は決めたわけです。
しかし,「新たな権利を創設しても権利者はその権利を行使しないはずだからその権利が行使された場合のデメリット等考慮する必要がない」なんて議論がまかり通るのは,著作権法以外の分野ではなかなか見出すことができるものではありません。それに,行使するはずのない権利を創設するために,手間暇かけて金かけてロビー活動を行うって,普通に考えてあり得ないでしょう。
さらにいえば,テレビ局が証拠保全の申立を行って私たちのパソコンのハードディスクの中身を洗いざらい持って行って,何か面白そうなデータがあったら,適当に報道部門で使わないとの保証は一切ありません。私のような職業であれば,依頼者との守秘義務を果たすためには,弁護士としての仕事の一環として文書を作成するのに用いるパソコンではインターネットに接続できないようにすることが必要になるかもしれません。だって,インターネットに接続しているパソコンは,常に違法サイトからのダウンロード行為に用いられる可能性を否定しがたいので,テレビ局による証拠保全の対象となりうるからです。
証拠保全の結果,そのテレビ局が権利を有する著作物の複製物が見つからなかったり,見つかっても「情を知って」の要件を満たすとの立証ができなくて,結果,複製権侵害の存在を立証できなかったとしても,マスメディアとしては,特定の人物が使用しているパソコンのハードディスクの中身を丸ごと検証できるというのはとてもおいしい話ということになります。実際,私がテレビ局の人間であれば,スキャンダル等の焦点となっている人物について,「自分たちの放送を違法サイトからダウンロードしている虞がある」として証拠保全の申立をして,その使用しているパソコンに蔵置されているデータを丸ごとコピーして解析し,スキャンダルに結びつくデータが見つかったらこれを報道(ワイドショーを含む)に流すことの魅力に抗しうるだろうかと考えると自信がありません。ダウンローダーから数十万円程度の損害賠償金を受領するより,証拠保全の過程でつかんだスキャンダルネタで報道番組の視聴率を1%上げた方がよくよくテレビ局の利益になるわけですし。
Posted by 小倉秀夫 at 08:53 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
L'utilisation des commentaires est désactivée pour cette note.
Commentaires