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01/26/2009

Winny事件第1審判決についての評釈

Winny事件について控訴審がようやく動き出したようですので,第1審判決に関して,ジュリストに掲載していただいた文章の,校正前原稿をアップロードいたします。


 匿名性が高度に保障されることがその特徴の一つとされていたP2Pファイル共有ソフトの公開と著作権侵害罪の幇助犯の成否

一 初めに

 近時飛躍的な発達を見せている情報通信技術の多くは、これを利用して送受信される情報の内容及び適法性の有無にかかわらず、所定の効果を発揮する。そして、多くの場合、一旦その技術を公開した後は、これが違法な情報流通にしばしば利用されるようになったとしても、当該技術の開発者ないし公開者には、違法な利用を事前に阻止する現実的な手だてはない。

 このような情報通信技術の特徴は、刑罰法規を適用することによって違法ではない情報流通のために利用され得る技術の公開を阻碍するべきではないという考えとも結びつく反面、一度公開されると取り返しのつかない危険な技術の公開を刑罰法規によって事前に規制すべきだという考え方とも結びつくものである。

 「Winny」という情報発信者の匿名性が高度に保障されることをその特徴の一つとするP2Pファイル共有ソフトの開発・公開者が、著作権侵害罪の幇助犯として逮捕され、起訴された事件(以下、「Winny事件」という。)は、法曹関係者のみならず、ソフトウェア技術者等の間でも大きな反響を呼んだ1が、まさに、上記相反する考え方をどのように調整するのかが問われた事件であるということである。

 本稿では、上記事件に関する京都地裁判決2を題材として、上記点について検討を加えることとする。

二 Winny事件の概要

 WinMX3というP2Pファイル共有ソフトを利用してパッケージソフトをアップロードしていた大学生等が京都府警に逮捕された直後、Xは、「2ちゃんねる」という匿名電子掲示板4の「ダウンロード板」に、「暇なんでfreenet5みたいだけど2chネラー向きのファイル共有ソフトつーのを作ってみるわ。もちろんWindowsネイティブな。少しまちなー」とのコメントを匿名で投稿し、程なくして、「Winny」という名称6の新たなP2Pファイル共有ソフトを開発し、自己の開設した匿名ウェブサイト「Winny Web Site」にて公開した7

 「Winny」のP2Pファイル共有機能には、特定の電子ファイルを意図的に「Winny」ネットワークに置いた者のIPアドレスを隠蔽する「キャッシュ」8機能が組み込まれていたことから、誰が特定の電子ファイルをアップロードしたのかを隠蔽してくれるP2Pファイル共有ソフトとして、日本国内のP2Pファイル共有ソフトの利用者の間で瞬く間に普及していった。「Winny」自体は、電子ファイルの形式、性質、違法性の有無等を問わず中立的にP2P間でファイルを送受信する機能を有していたが、実際に「Winny」を利用してアップロードされている電子ファイルの大部分は、著作権者の許諾なくしてアップロードされていると思しきものであった9

 Xは、その後も「Winny」の改良を重ね、そのたびごとに、改良版を「Winny Web  Site」にて公開した。その後、Xは、P2Pファイル共有機能を主たる機能としたバージョン(以下「Winny1」という。)はほぼ完成したとしてその開発を一旦終了し、大規模匿名電子掲示板機能を主たる機能とするソフトウェア(これを「Winny2」という。)の開発に移行し(但し、「Winny2」にも、「Winny1」と互換性はないが、ほぼ同様の特徴を有するP2Pファイル共有機能が組み込まれていた。)、これをXが開設する匿名ウェブサイト「Winny2 Web Site」にて公開した。Xは、「Winny2」についても頻繁に改良を重ね、そのたびごとに改良版を「Winny2 Web Site」にて公開したが、著作権侵害目的で用いられることを抑制するような改良は行わなかった。

 その後、「Winny2 Web Site」からWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」をダウンロードして、自己の使用するパーソナルコンピュータにインストールし、「スーパーマリオアドバンス」ほか25本のゲームソフトの各情報が記録されているハードディスクと接続したパーソナルコンピュータを用いて、インターネットに接続された状態の下、下記各情報が特定のフォルダに存在しアップロード可能な状態にあるWinnyを起動させ、同コンピュータにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に上記各情報を自動公衆送信し得るようにし、上記各著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害したY等が著作権法違反の疑いで逮捕・起訴され、有罪となった10。さらに、「Winny」を開発しその匿名ウェブサイトにて公開したXもまた、上記著作権法違反の幇助犯として逮捕され、起訴されるに至った。

 これについて、京都地裁は、Yが著作物の公衆送信権を侵害して著作権法違反の犯行を行った際、「これに先立ち、Winnyが不特定多数者によって著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害する情報の送受信に広く利用されている状況にあることを認識しながら、その状況を認容し、あえてWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」を被告人方から前記「Winny2 Web  Site」と称するホームページ上に公開して不特定多数者が入手できる状態にした上、Y方において、同人にこれをダウンロードさせて提供し、もって、Yの前記犯行を容易ならしめてこれを幇助したものである。」として、Xを罰金150万円の刑に処した。

三 幇助の行為

 刑法第62条1項の従犯(幇助犯)とは、「それ自体犯罪の実行でない行為によって、正犯の行為を助けその実現を容易ならしめたもの」11をいう。幇助犯が成立するためには、幇助の意思と幇助の行為が必要とされる。

 幇助行為は、実行行為に用いる道具等の提供等の有形的・物質的なものと、激励・助言を与える等の無形的・精神的なものとに大別される。後者はさらに「技術的な助言」と「意思決定の強化(心理的幇助)」に分けられる12。一般に、実行行為ないしその行為者の発覚を困難とする行為は、そのことを正犯が認識している場合には、正犯の犯罪意思を維持・強化・喚起することに繋がるので、心理的幇助にあたると解されている13  。

 情報通信技術は、違法な情報の送受信を物理的に容易にするのが通常であるが、情報発信者の匿名性を高めることにより心理的に幇助するものも少なくない。本判決においても、「Xが開発、公開したWinny2がYの実行行為における手段を提供して有形的に有形的に容易ならしめたほか、Winnyの機能として匿名性があることで精神的にも容易ならしめた」として、物理的幇助と心理的幇助の2つの側面から幇助行為を認めている。

 もっとも、本判決における補足説明によれば、「Winny」において実際に「中継」が発生するのは4%程度と例外的であり、警察官がダウンロードした際の電子ファイルの送信元のIPアドレスの割当てを受けていたYが著作権法違反の罪(公衆送信権侵害)の正犯として認定されている14のであって、「Winny」の利用者が期待しているほどの「匿名性」は得られていない15。このような場合にも、「実行行為ないしその行為者の発覚を困難」としたとして、心理的幇助を認めることができるのかということは問題となり得る。客観的にはどうであれ、正犯はその匿名性保障機能を信じて「Winny」を利用することでその犯罪意思が実際に強化された場合には心理的幇助の成立を認めることができようが、「Winny」の匿名性保障機能を正しく理解しつつ「Winny」ネットワークのもつ高い国内シェアに着目して16正犯が「Winny」を用いていた場合には心理的幇助まで認めるのは理論的には困難ではなかろうか17

 Xは不特定の者に対して「Winny」をダウンロードさせていたことから、「Winny」をダウンロードさせたことが幇助行為であるならば、それは「不特定人に対する幇助」ということになる。通説が被教唆者は特定の者でなければならないと解している18こととの関係で、このような「不特定人に対する幇助」が可罰性を有するのかという点も問題となる。① 教唆犯の場合「人を教唆して犯罪を実行させた者」(刑法61条1項)という文言になっているのに対し幇助犯の場合「正犯を幇助した者」(同62条1項)という文言になっていること、② 不特定人に対する教唆の場合「扇動」ないし「あおり」としてこれを処罰する場合が特別法により制限列挙されているのに対し不特定人に対する幇助についてはそのような規定は特にないこと、③教唆者を教唆する行為は教唆犯として処罰される(刑61条2項)が従犯の幇助を従犯(幇助犯)として処罰する旨の規定はないため間接従犯を処罰するためには不特定人に対する幇助も幇助犯として処罰するという構成を取らざるを得ないことなどから、不特定人に対する幇助も刑法62条1項を適用する見解が有力である19

 正犯が犯罪行為を実行し犯罪結果を実現するにあたっては、日常的な行為によって提供されている様々な物やサービスがこれに寄与するのが通常である。このような物やサービスを提供した者は、故意・過失等の主観的要件を具備する限り、その提供する物やサービスにより促進された犯罪について幇助犯としての刑事責任を常に負うとするのは、処罰範囲が広すぎるとして、その可罰性を疑問視する見解がある20

四 幇助の意思

 幇助犯が成立するためには、幇助行為が、「幇助の意思」に基づいてなされなければならない。しかし、正犯と意思を通じ合っている必要はない2122

 通常、「幇助の意思」は「幇助の故意」と同視されるが、軽油引取税を納入する意思がない販売業者から経由を購入した客について、「軽油販売の相手方になることによって、(正犯らの)犯行を実現せしめる役割を果たしたわけであるが、それはあくまで、被告人が自己の利益を追求する目的にもとに取引活動をしたことの結果に過ぎないと見るべきである」として、正犯らの犯行を幇助する意思を認めなかった裁判例もある23

 「幇助の故意」をどう捉えるかは、「故意あり」といえるためにどのような心理状態を要求するのかという論点と、「幇助の故意」の対象をどこに置くのかという論点の組合せで決まる。前者については、歴史的には、大きく分けて、① 結果の発生を意欲している場合のほか、結果が発生しても「かまわない」という消極的認容があれば「故意」を認めてよいとする認容説と、② 結果発生のある程度高い可能性(蓋然性)を認識しているか否かで「故意」の有無を判別する蓋然性説とが対立している。後者については「故意」の対象を、ⓐ 正犯の実行行為の遂行を促進することについてまであれば足りるとする見解、ⓑ さらに構成要件的結果が発生することについてまで必要とする見解が従前より対立していたが、最近はⓒ さらに自己の行為が構成要件的結果の発生に対し幇助犯としての因果的寄与をすることについてまで要するとする見解も有力である24

 また、どこかに構成要件的結果が発生するであろうことは認識等していたが、どこにどれだけ発生するかまでは具体的に認識等していなかった場合(概括的故意)については故意責任を認めるのが通説であるが、誰かが正犯として実行行為を行うであろうことは認識等していたが、誰と誰がどの程度実行行為を行うかまでは認識等していなかった場合に、上記古典的な概括的故意論とパラレルに考えて、幇助の故意を認めてもよいのかという問題もあり得る。

 本判決は、「Winnyが不特定多数者によって著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害する情報の送受信に広く利用されている状況にあることを認識しながら、その状況を認容し」たことをもって「幇助の故意」ありとしている。後述するように、本判決は、「Winnyそれ自体は価値中立的な技術である」との前提に立って、「価値中立的な技術を実際に外部へ提供する場合、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、さらに提供する際の主観的態様如何によると解すべきである。」と判示していることから、「幇助の故意」一般について、構成要件的結果発生の蓋然性の認識まで要求しているかは明らかではないが、どの正犯者による実行行為を幇助するのかについての具体的な認識までは要求していないことは明らかである。

五 価値中立性と幇助

 既に述べたとおり、情報通信技術の多くは、これを利用して送受信される情報の内容及び適法性の有無にかかわらず、所定の効果を発揮する。「Winny」というP2Pファイル共有ソフトもまた、それ自体は、電子ファイルの形式、性質、内容等を特に問題にすることなく、利用者からの指示に応じてこれをP2P間で送受信する機能を有しており、その意味では価値中立的である。また、実際になされる電子ファイルの送受信の内容次第では、有意義なものともなりうる。このような価値中立的なソフトウェアが、犯罪実行行為の手段として利用された場合に、その提供者が幇助犯としての刑事責任を負うのかということがここでは問題となる。本判決においても、「もっとも、WinnyはP2P型ファイル共有ソフトであり……それ自体はセンターサーバを必要としないP2P技術の一つとして様々な分野に応用可能で有意義なものであって、被告人がいかなる目的の下に開発したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大も妥当でないことは弁護人らの主張するとおりである」と判示されている。

 「中立的行為による幇助」の問題は、従前ドイツを中心に議論がなされ、我が国でも近時これを受けた議論がなされている25

 「法益侵害を惹起する行為であっても、行為それ自体が社会的相当性の範囲内にある場合には、構成要件該当性または違法性を欠き、不可罰である」とする社会的相当性説を幇助の処罰範囲の議論に組み入れる考え方がある。関与行為が日常的行為である場合には不可罰とすべきとする見解や、プログラムの開発・頒布行為の有用性を強調してこれを幇助行為として処罰すべきではないとする見解26も、この社会的相当性論の一バリエーションであるように思われる。これに対しては、「社会的相当性という標語の下に、厳密な理論的説明がなされずに、恣意的に結論が導かれるおそれがある」27等の批判がなされている。

 また、利益考量型の「許された危険」論を幇助の処罰範囲の議論に組み入れる考え方がある。例えば、「問題となっている犯罪行為の重大性と、潜在的共犯者の行動の自由の強度の両方を媒介変数として考慮すべき」28とする考え方等がこれにあたる。これに対してもまた、「こうした一般論は不明確であり、そこから自分の好きな結論を恣意的に導くことができてしまう」29等の批判がなされている。

 これに対し、因果的共犯論の立場から、関与行為が正犯行為の等が具体的結果発生の危険を高めていた場合に処罰範囲を限定する考え方がある。但し、この見解も、関与行為がなかった場合にその行為と同様の効果のある行為(代替的行為)を第三者又は正犯自身が行っていた可能性をどの程度斟酌するかによって恣意的に結論を導きうるようにも思われる。例えば、島田・前掲88頁は、高度の蓋然性が見込まれ、かつ正犯者又は第三者による代替的行為それ自体が犯罪でない場合に限り、その代替的行為によって、危険性の観点から見て同様の効果が生じていたかどうかを検討することを提唱する。しかし、例えばこれを本件に即して考えたときに、XがYに対して「Winny2 Web Site」からWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」のダウンロードをさせなかったとしても、Yは、① WinMX 等の他のP2Pファイル共有ソフトを用いて公衆送信権侵害行為を行ったであろう可能性30、② 「Winny」の従来バージョンを用いて31公衆送信権侵害行為を行ったであろう可能性、③ 「Winny」の従来バージョンや「WinMX」等のネットワークを利用して「Winny 2.0 β6.47」を入手した上でこれを用いて公衆送信権侵害行為を行った可能性がある32が、では、これらの代替的行為の蓋然性をどのように見積もるか、そしてそれを「高度」と評価するかどうかは、一意的に決まるものではない。

 本判決は、「WinnyはP2P型ファイル共有ソフトであり、それ自体はセンターサーバを必要としないP2P技術の一つとして様々な分野に応用可能で有意義なものであって、Xがいかなる目的のもとに開発したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大は妥当でない」として中立的行為による幇助については幇助犯の成立範囲を限定しなければならないとする弁護側の問題提起を容れた上で、「価値中立的な技術を実際に外部へ提供する場合、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、さらに提供する際の主観的態様如何によると解すべき」と判示している。その上で裁判所は、XがWinnyを提供する際の主観的態様として、Winnyによって著作権侵害がインターネット上にまん延すること自体を積極的に企図したとまでは認められないが、著作権を侵害する態様での利用が広がることで既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルが生まれることも期待していた旨を認定した33

 本判決は、幇助の因果性を重視して幇助の成立範囲を制限する近時有力説に立たないことは明らかであるが、では、いかなる理論的な枠組みで上記3要件を導いたのかは全く明らかではない。但し、「現実の利用状況」や「提供する際の主観的態様」を重視している点や違法性の問題としている点からすると、価値中立的な技術の公衆への提供行為に関しては、当該技術を公衆に提供する際の意図等を含めた利益考量論をベースとした「許された危険」論を採用していると見る余地はある。

 当該技術の社会における現実の利用状況がどのようなものであった場合にその技術を提供し続ける行為が幇助としての違法性を有することになるのか34が具体的に明らかにされていれば、新規技術の開発・提供者が不意に刑事罰を科される危険を回避することは可能とはなろうが、本判決は、「提供する際の主観的態様」がいかなるものである場合に提供行為が幇助としての違法性を帯びまたはこれを欠くことになるのかという点を含めて何ら具体的に明らかにされていないため35、新規技術の開発・提供行為に対する萎縮効果を一定程度生じさせてしまっていることは否定できないように思われる36

>六 最後に

 情報通信技術において違法な情報の送受信行為を物理的に幇助してしまうことを回避するのは容易ではなく、結果的に違法な情報の送受信行為に利用されたらその技術の提供を中止しなければならないとするのは、確かに新たな情報通信技術の開発・公開に対する萎縮効果が大きい。しかし、違法な情報の送受信を防止ないし遮断する機能がない情報通信技術において、さらに発信者の匿名性を高度に保障するとなると、違法行為の蔓延を抑止する手段を国家・社会から奪うことになりかねないことから、特段の必要性が認められない限り、そのような技術の開発・公開を刑罰をもって抑止することがあながち不当とも言い難いように思われる。Winny事件についていえば、ファイルをWinnyネットワークに流した人のIPアドレスを隠蔽しようとした目的37並びに大規模BBSを目指したWinny2にファイル共有機能を残した目的等を弁護人らが説得的に主張・立証できていなかったことから、「Winny」の提供行為を刑事的に処罰すべきではないとの価値判断を裁判官になさしめるに至らなかったように思われる。

 Winny事件は、弁護側、検察側双方から控訴がなされたとのことであり、控訴審では、新技術の開発・提供者の指針となるような判決が下されることを希望する次第である。

 

  1   ソフトウェア技術者を中心に「金子勇氏を支援する会」が結成され、平成14年5月28日の段階で約1500万円の支援金が集まった。  

 

  2   京都地判平成18年12月13日判タ1229号105頁。なお、以下、「本判決」ということがある。  

 

  3 Frontcode   Technologies社が開発した、Napster互換のプロトコルを利用した中央サーバ型のファイル交換機能と、独自プロトコルを利用したサーバに頼らないピュアP2P型ネットワーク機能の両方を併せ持つP2Pファイル共有ソフトであり(Wikipedia   日本版による)、2バイト文字が使用可能であったことから、日本のネットワーカーの間で広く利用されていた。  

 

  4   http://www.2ch.net  

 

  5   Freenetとは、Ian Clarke の論文 "A Distributed Decentralised Information Storage   and Retrieval System" (分散自立型情報の保管と検索システム)に基づき、"The Free Network   Project"で開発しているソフトウェアであり、完全な分散処理と暗号化により、誰が誰に対しどんな内容の情報を送受信しているのかを外部の者(警察との捜査機関を含む。)が傍受できないようにすることを最大の目的とするものである(http://freenetproject.org/whatis.htmlを参照。)。  

 

  6   「Winny」との名称は、「WinMX」の「MX」の部分を、アルファベット一文字分ずつずらした(M→n、X→y)ものといわれている。  

 

  7    Xは、趣味で開発したソフトウェアを公開するための実名を用いたウェブサイトを開設していた(「Kaneko's Software   Page」<http://homepage1.nifty.com/ kaneko/>)が、そこには「Winny」をアップロードしなかった。  

 

  8   「Winny」の場合、ファイルの位置情報等が要約された「キー」が一定の割合で書き換えられ、書き換えられたキーをもとにダウンロードがなされると、もともと当該ファイルのあったパソコンとは別のパソコンにファイルが複製され、この複製されたファイルがさらにダウンロードされるという「中継機能」を有している。従って、「Winny」ネットワーク上で共有されている著作物等の著作権者や捜査機関等がおとり捜査的に当該著作物等の複製物である電子ファイルの送信を受けてその送信者のコンピュータに割り当てられたIPアドレスを知得したとしても、当該コンピュータは単に当該電子ファイルを「中継」しただけかも知れず、誰が当該電子ファイルを「Winny」ネットワーク上に置いたのかは定かにはわからない。このようにして情報発信主体の匿名性を確保しようとするのが「Winny」の特徴の一つである。Xはこの中継機能を「キャッシュ」機能と呼ぶが(金子勇「Winnyの技術」43頁)、本来の「キャッシュ」とは性質・用法が異なることから、これを「キャッシュ」と呼ぶことに批判的な見解もある。  

 

  9    京都地裁が引用しているACCS   社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会による「2005年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要」<http://www2.accsjp.or.jp/   news/pdf/p2psurvey2005.pdf>のほか、田中辰雄「著作権の最適保護水準を求めてⅡ:ファイル交換の全数調査 ──違法にも合法にも使える機器・サービスの是非──」<http://www.moba-ken.jp/kennkyuu/2005/final/final_tanaka.pdf>。なお、後者は、一部で誤った理解をされているが、「市販製品をそのままコピーした代替品の割合はほぼ4割であり、6割は市販製品のごく一部か出所不明の画像など代替品にはなりにくいものであった。ファイ交換で交換されるファイルの9割が著作権法的に違法であるというのは正しいが、被害の程度まで見ると実質的被害を与えうるのは4割にとどまる。」としているのであって、ファイル交換で交換されるファイルの約半数が適法なものであるといっているわけではない。  

 

  10   京都地判平成16年11月30日  

 

  11   福田平「注釈刑法(2)-Ⅱ」802頁  

 

  12   堀内=安廣「大コンメンタール刑法[第2版]第5巻」549頁  

 

  13 大阪地判平成12年6月30日判タ1098号228頁  

 

  14   日本の刑事裁判では「99%間違いない」というほどの心証は要求されておらず、「96%」の確率があるのであれば通常有罪認定される。  

 

  15   確率4%の「転送」がなされた場合には「転送」先に罪をなすりつけることができるものの、「転送」がなされなかった場合には、「WinMX」等の既存のP2Pファイル共有ソフトを利用した場合と同様に、そのIPアドレスを動的に割り当てたアクセスプロバイダが捜査事項照会や捜索差押令状等に応じてしまえば、その匿名性は破られることになる。  

 

  16   P2Pファイル共有の場合、ネットワーク参加者が多ければ多いほどファイル転送が効率的となる。  

 

  17   尤も、情報発信者の戸籍上の氏名及び住民票上の住所を登録することなくWinnyネットワークを利用できるという点をもって「匿名性が十分に保障されている」と解するのであれば、この限りではない。  

 

  18   福田・前掲781頁。但し、佐久間「Winny事件にみる著作権侵害と幇助罪」ビジネス法務2004年9月号68頁は「教唆犯においても、電子掲示板で何者かに犯罪の実行を呼びかける場合など、匿名の相手方に向けた犯罪の『そそのかし』が、単なる扇動の程度を越えたときには、教唆犯も成立しうると考える」とする。  

 

  19   民法上の不法行為に関してであるが、最判平成13年2月13日民集55巻1号87頁。なお、本判決は、「刑法62条は、特定の相手方に対して行うことが必要であり、不特定多数の者に対する技術の提供は刑法62条の幇助犯にあたら」ないという弁護人の主張について、「刑法62条に、弁護人らが主張するような制限が一般的に存するとは解されない」と判示している。  

 

  20   堀内=安廣・前掲554頁。但し、その理論構成までは明らかにされていない。  

 

  21   例えば、共同意思主体説を採った場合は、正犯と従犯とで意思を通じ合っていることが必要となろう。但し、共同意思主体説自体は広い支持を得られてはいない。  

 

  22   大審判大正14年1月22日刑集3輯21頁  

 

  23   熊本地判平成6年3月15日判タ963号281頁  

 

  24   例えば、西田典之「刑法総論」322頁  

 

  25   松本光正「中立的行為による幇助」姫路法学27巻27=28号204頁以下、同31=32号238頁以下、島田聡一郎「広義の共犯の一般的成立要件──いわゆる『中立的幇助』に関する近時の議論を手がかりとして──」立教法学57号76頁以下、山中敬一「中立的行為による幇助の可罰性」關西大學法學論集56巻1号34頁以下  

 

  26   結論を留保しているが、小川憲久「技術的中立性とP2Pソフト製作者の責任」L&T25号146頁  

 

  27   島田・前掲62頁  

 

  28   島田・前掲70頁が紹介するヘーフェンダールの見解。  

 

  29   島田・前掲71頁  

 

  30   もっとも、Winnyの匿名化機能の心理的因果性に着目する場合は、WinMX等Winny以前のP2Pファイル共有ソフトの提供に、Winnyの提供と同様の効果を認めることができるかは疑問である。  

 

  31   プログラムの通常のバージョン番号の付け方からすると、0.01の位は些末的なバグ等の修正がなされた場合にカウントを進めることとされているから、「Winny  2.0 β6.47」と「Winny 2.0 β6.4x」との間に機能的な差異は殆どなかったと予想される。  

 

  32   ピュア型P2Pファイル共有ソフトの先駆けである「Gnutella」がその開発元である「Nullsoft」のウェブサイトにアップロードされていたのはわずか一日であるが、「Gnutella」はそのときにこれをダウンロードできた人々を起点として転々流通し広く流布されるに至った。また、「Winny」にしても、Xによるウェブサイト閉鎖後もユーザー間で転々と流通している。  

 

  33   ここでいう、既存のビジネスモデルとはパッケージベースのコンテンツビジネスモデル、すなわち、大量の複製物を製造・販売することで投下資本を回収するビジネスモデルをいい、これとは異なるビジネスモデルとは、コピーフリーでも成り立つビジネスモデルをいう。  

 

  34   例えば、違法行為に利用される割合がどの程度以上となったら違法性を有するのか(いわゆるベータマックス事件の米国連邦最高裁判決のように「実質的な非侵害用途」があれば適法となるのか、過半数が非侵害用途であっても違法性を有するとされる例があり得るのか等。  

 

  35   3要件の理論的な位置づけが明らかにされていないため、実務サイドとしては予測のしようもない。  

 

  36   提供開始時の予想とは異なり実際にはそのほとんどが違法行為に活用された場合にその技術の継続的提供を中止しなければ幇助犯としての違法性を帯びるということになれば投下資本回収のめどがつかなくなるという意味で萎縮効果が残るとする見解もあり得るところではあるが、但し、新規技術を公衆に提供した後にその多くが違法行為に活用されていることを知った場合にはその技術の継続提供を中止したり違法行為に活用されにくくするような改善措置を講ずるなどの条理上の作為義務が生ずるのであって、これに違反して漫然と当該技術を継続的に提供し続けた場合には、不作為による幇助が成立すると解される余地もあるので、その意味での萎縮効果は避けがたいであろう。  

 

  37   これに対し、情報発信者の匿名性の保障を重視した「Freenet」の開発者であるIan Clarke氏は、政治的な表現の自由が十分に保障されていない国での政治的表現の自由を守るという目的を高らかに謳い上げる。  


Posted by 小倉秀夫 at 12:23 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Voici les sites qui parlent de Winny事件第1審判決についての評釈:

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