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03/22/2009

汎国家的配信の義務づけ

 ITmediaに次のような記事が掲載されていました。

 米音楽売り上げのうち、デジタルダウンロード販売が占める割合が3分の1に達した。米調査会社NPD Groupが3月17日に報告した。

 「コンテンツ」が電子機器により再生されることが一般化すると,コンテンツを一旦物理媒体に固定した上でその物理媒体を物流網に載せる必然性が低下します。すると,物流コストが低いコンテンツのネット配信が主流を占めていくことは容易に想像が付きます。日本では,「コンテンツホルダー」側の不可解な抵抗によって,この動きがコンピュータプログラムと商用音楽程度にしか普及していませんが,AppleTVやKindle等が利用できる米国では,映画や書籍などもネット配信が徐々に物理媒体による頒布を凌駕していく可能性があります。

 現状では,そうはいっても電子端末の普及率がそれほどでもないので,多くの場合,「物理媒体でも頒布するコンテンツをオンラインでも配信していく」という程度にとどまっていますが,将来電子端末の普及率が高まると,コンテンツをオンラインでのみ配布するということが一般化していくと予想されます(既に,プログラムではそのような営業政策が採用されている場合が普通に存在します。)。物理媒体での頒布の場合売上げの見通しを間違えると在庫を抱えることになってしまうというリスクがありますし,(大抵の場合寡占状態にある)流通業者にその流通網に載せてもらうのが個人または弱小コンテンツホルダーとしては結構しんどいということもあるからです。

 その際に問題となるのは,そのコンテンツの配信を受けられる人的範囲がその居住する地域により限定されていると,その地域外に居住する人々は,誰かによる違法行為を経ない限り,そのコンテンツを享受することができなくなる可能性が高いということです。コンテンツが物理媒体により頒布されていた時代は,それが日本国内向けには頒布されていなかったとしても,一度日本国外で頒布された物理媒体を「輸入」することにより,日本国内に居住する人々がこれを享受することができます(いわゆる「101匹わんちゃん」事件の担当裁判官はそれを許すまじと思ったようですが,まあ,中古ゲーム訴訟最高裁判決でその考え方は覆されたと考えるのが一般的です。)。しかし,日本国外向けのオンライン配信でのみ配布されているコンテンツを日本国外で受信して物理媒体に固定して日本国内に輸入して販売することは概ね違法となってしまいます。それは,例えばある重要な論文がKindle用コンテンツとして米国国内向けに公表された場合,日本の研究者はその論文に記載されている内容を読むことすら許されないということに繋がっていきます。それは,技術と著作権法(あるいは不正競争防止法も)が,コンテンツを通じた文化の発展が日本国内にもたらされることを阻害することを意味することになります。

 そのような事態を避けるためには,コンテンツがオンラインでのみ配信されるという時代を本格的に迎える前に,政府(文化庁なのか,知的財産戦略本部なのか,所管が難しいところではあります。)が,AppleやGoogle等のコンテンツ配信事業や国外のコンテンツ企業を回ってそれらがオンラインでのみ公開するコンテンツについては日本国内に向けても公開するように働きかけ,または,他の先進諸国とも協議して少なくともオンラインのみ配信するコンテンツについては汎国家的配信を義務づける等のルール作りをするなどの対策を講ずる必要があるように思われます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Voici les sites qui parlent de 汎国家的配信の義務づけ:

» コンテンツホルダーは不可解な抵抗をしているのか de mohno
机上の空論が大好きな小倉弁護士が、またも空々しい空想を描いて悦に入っているようです。日本では,「コンテンツホルダー」側の不可解な抵抗によって,この動きがコンピュータプログラムと商用音楽程度にしか普及していませんが,AppleTVやKindle等が利用できる米国では,映画や書籍などもネット配信が徐々に物理媒体による頒布を凌駕していく可能性があります。...... [Lire la suite]

Notifié le 24 mars 09 05:25:33

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