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03/14/2009

ユーザーはレコーディングされた音楽に対してそれを気に入ればお金を払う習慣を失っていない

 岸博幸エイベックス取締役は,

 そうした中で音楽産業は、ユーザがなかなかお金を払わないという現実に苦しんでいます。面白い数字を紹介しましょう。米国のインターネット上は日々無数の音楽ファイルが流通していますが、その中で正規(=有料)ダウンロードの割合は、平均すると20曲中1曲だけです。米国の音楽配信サイトの一つであるLalaはユーザに対して、(1)1曲99セント払えば自分のパソコンにダウンロードできる、(2)1曲10セント払えばLalaのサーバからいつでもその曲を聴ける、(3)お金を払わなくても1回は曲を試聴できる、という3つの選択肢を用意していますが、この会社のサーバに蓄積された曲へのアクセス状況をみると、1000曲中99セント払ったのは72曲、10セント払ったのは108曲、無料での試聴が820曲です。

との事実から,

 そうです。違法ダウンロードが当たり前になる中で、ユーザはレコーディングされた音楽にはお金を払わない習慣を身につけてしまったのです。

との結論を導いています

 しかし,無料で試聴された楽曲の約8.7%が正規に購入され,その他約13.2%が有料で継続的視聴オプションが選択されたということであれば,プロモーションとしては成功しているのであり,むしろ,未だユーザーはレコーディングされた音楽に対してそれを気に入ればお金を払う習慣を失っていないと分析する方が適切であるように思います。

 プロモーションをテレビやラジオなどの放送メディアに頼っていた時代,無料で視聴された楽曲の8.7%も正規商品を購入するなどと言う現象はなかった(音楽自体を聞くことを目的とした番組で視聴した楽曲に限定しても,そこで聴いた楽曲の8.7%も正規商品を購入するなどということは一般的な慣習にはなっていなかったはずです。)わけです。結局のところ,岸取締役の不満は,レコード会社に都合の良い期待をネットユーザーにかけた上で,これを達成しないユーザーに裏切られたということにすぎないように思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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