早熟の天才は不要
マジコン訴訟に関していえば、真の争点は、
- 不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は「検知→制限方式」に限られるのか、自主制作ソフト等の実行を制限する「検知→可能方式」を含むのか
- いわゆる無反応機及び偶然「妨げる機能」を有している装置だけが、不正競争防止法2条1項10号の「機能のみ」の要件を満たさないと解されるのか、技術的制限手段が付されていない自主制作ソフト等の実行を可能とする機能をも有している場合にも「機能のみ」の要件を満たさないものと解されるのか
何せ、自主制作ソフトのタイトル数及びダウンロード数は決して無視できる数ではない(1ダウンロードサイトごとの1タイトルの平均ダウンロード数は、自主制作ソフトと違法複製ソフトとでほぼ拮抗していた。)ので、自主制作ソフトを使うためにマジコンを使うということはWinnyのポエム流通よりははるかに現実味のある話だったわけですし、任天堂側は、違法複製ソフトのアップロードサイトに対し何らのアクションをも起こしていない(whoisを用いれば当該ソフトの開設者の氏名・住所等が容易に知りうるというのにです。まあ、違法複製ソフトのアップロードを禁止するためにどのような対策を講じてきたのかという求釈明に対して、任天堂側は一切の回答を拒否しています。)わけです。
結局、紛争の実態は、ゲーム機器メーカーが「検知→可能方式」の技術的手段を採用することにより、当該機器メーカー及びそれと「ライセンス契約」を結んだソフトハウスにより形成される「ギルド集団」を守ることまで不正競争防止法の守備範囲に属するのかということであり、市川正巳裁判長は、平成11年改正の審議の際に規制すべきものとして「MODチップ」が含まれていたとの一点から、条文の具体的な文言との整合性を軽視して、これを肯定したのです。
「ゲームソフトなんて、専門学校かなんかを卒業してそこそこのソフトハウスに入社してから開発を勉強すれば十分だよね。学生時代から自主的にソフトを開発してしまうような天才はわが国のゲーム業界には不要だよね」ってお話なのだと思います。私の小学校の友達には、中学生時代からゲームソフトを開発しては賞金稼ぎをしていたような人もいるのですが、任天堂はそういう人材は不要ということのようです(彼は、大学卒業後任天堂に入社したはずですが。)。まあ、早熟の天才は、iPhone用のゲームを開発していろということのようです。
【追記】
「拮抗」とまでいってしまうのは言い過ぎかも知れません。ただ、ダウンロード数がカウンター表示されているサイトに関していえば、違法複製物アップロードサイトにおける1サイト1タイトルあたりの平均ダウンロード数が約8885回であったのに対し、自主製作ソフトアップロードサイトにおけるそれは約6124回でありましたので、「遜色ない」とは言いうるように思います。
Posted by 小倉秀夫 at 12:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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Voici les sites qui parlent de: 早熟の天才は不要:
» 早熟の天才のためにマジコンが欠かせない? de mohno
恣意的な発言で知られる小倉弁護士が、珍妙なことをおっしゃっています。「ゲームソフトなんて、専門学校かなんかを卒業してそこそこのソフトハウスに入社してから開発を勉強すれば十分だよね。学生時代から自主的にソフトを開発してしまうような天才はわが国のゲーム業界には不要だよね」ってお話なのだと思います。私の小学校の友達には、中学生時代からゲームソフトを開発しては賞金稼ぎをしていたような人もいるのですが、任天堂はそういう人材は不要ということのようです(彼は、大学卒業後任天堂に入社したはずですが。)。まあ、早熟の... Lire la suite
Notifié: 9 mars 2009, 23:07:12
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